マルクスが日本に生まれていたら の商品レビュー
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「海賊とよばれた男」を読んでいて、西欧は「物の国」日本は「人の国」という表現が気になったので、読んでみた。私の感覚では、逆だったので。(現代では日本人の方が西欧の人より物に固執していると感じていた) 主義・思想では割り切りれない部分についての主張が一貫して分かりやすかった。過去の日本を美化しすぎていないか?と思わないでもないが、ここまで堂々と言い切ってくれると、むしろ気持ちよい。自国の文化を尊重する姿勢って大事だよな、気づかされた。こうゆう気骨のある、頑固な感じの堂々とした人って、昨今ではなかなか見当たらないよなぁ、と思う。(私の中ではやっぱり「おじいちゃん世代」というイメージ)質問者に対する回答が、「〜ではないかね。」というように、問いかける形なのも印象的だった。教育熱心だった性格が偲ばれる。 科学や理論では説明のつかないような人の心や人間社会の矛盾を「克服すべきもの」として見るか、それらの価値や存在を認め、共存共栄していくかが、西欧と日本の違いなのかな、と思った。そのような「説明のつかない、得体の知れないものや、曖昧なもの」を受け入れて共存して行くという方が、日本人の自分にはしっくりくると感じたし、確かにそのような部分は、他国ではなかなか真似できない、日本文化の良い部分でもあると思う。 出光佐三の言う「日本は人の国」というのは、明治維新前の日本ということであったが、産業革命の起こる(日本にもたらされる)前はそのような社会の形が労せずして成り立ったかもしれない。工業化が進み、資本や労働力の集約による効率化が進んだ中で、生産者としての人間の労働の価値が相対的に下がり、物やサービスが容易に手に入るようになってしまった現在は、あまりにも物や金の力が強くなりすぎている。近年の度重なる経済危機とそれに伴う混乱に見られるように、それらの力が制御できないほどに強大かつ広範囲な影響力を持つようになり、より簡単に振り回されるような、より困難な状況になりつつあると思う。時代や社会状況のせいにしてはいけない、と出光佐三に言われそうだが。出光氏はちょうど私が生まれた年に亡くなっている。今の世の中を見たら、何と言うだろうか。今の時代に、こうゆう人が生きてくれていたらなぁと思った。 本全体として、禅問答みたいで面白かった。いろんなことを考えさせられたので、★5つ。
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海賊とよばれた男を読んで、この本の存在を知る。果たして、出光佐三がマルクスを研究した目的は何だったのか。本書が示す通り、資本家の搾取(黄金の奴隷)を起点とした価値観という点で両者の思想は類似する。しかし、ユートピアを掲げる共産主義は、対立闘争を孕む故に、出光の和の思想とは異なると...
海賊とよばれた男を読んで、この本の存在を知る。果たして、出光佐三がマルクスを研究した目的は何だったのか。本書が示す通り、資本家の搾取(黄金の奴隷)を起点とした価値観という点で両者の思想は類似する。しかし、ユートピアを掲げる共産主義は、対立闘争を孕む故に、出光の和の思想とは異なるというのが、本書の整理だ。 時代もシステムも違う二つの考え方を単純に比較することは出来ない。また、出光の思想は、各論では理想型だが、強い個のカリスマを要する点において、マルクスのような普遍性は無い。出光は素晴らしいが、ややもすると、ワタミの思想と変わらない。一歩間違えば、経営者の強烈な個性は、訴訟されかねない。
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帯文:"「海賊と呼ばれた男」がここにいる―百田尚樹" "・黄金の奴隷になるな・法律組織の奴隷になるな・権力の奴隷になるな・理論と数の奴隷になるな・主義の奴隷になるな" 目次:新版刊行にあたって、序論 なぜマルクスをとり上げるのか、1 平和...
帯文:"「海賊と呼ばれた男」がここにいる―百田尚樹" "・黄金の奴隷になるな・法律組織の奴隷になるな・権力の奴隷になるな・理論と数の奴隷になるな・主義の奴隷になるな" 目次:新版刊行にあたって、序論 なぜマルクスをとり上げるのか、1 平和にしあわせに暮らす社会は具体的にはどんな社会か、2 人間解放の道、3 歴史と社会、4 経済と経営、5 労働観と貧乏論、6 ドウトクと宗教、7 マルクスと私、結び―マルクスの功罪と日本人の使命
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確かに、人間の本質が「皆仲良く暮らすこと」というのは共感。 それでは、会社というシビアな現実でどのようにそれを成立されたのか? そもそも現実にそんな経営があるのか?? ...とか思いつつ、とっても興味深く拝読しました。 人間のエゴという究極の課題と立ち向かいながら、 日本人にし...
確かに、人間の本質が「皆仲良く暮らすこと」というのは共感。 それでは、会社というシビアな現実でどのようにそれを成立されたのか? そもそも現実にそんな経営があるのか?? ...とか思いつつ、とっても興味深く拝読しました。 人間のエゴという究極の課題と立ち向かいながら、 日本人にしか生み出せない美学をここまで1つの会社で徹底し、そして実現化された姿は素晴らしく、尊敬します。
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本書は問答形式で展開される。マルクスと出光はその思想の出発点と到達点が同じであるにもかかわらず、そのために描いた道筋は大きく異なる。マルクスは理想の実現のためには階級的対立闘争が不可避であると考えたのに対し、出光は人類愛の上に立った互譲互助、和の精神を提唱したのであった。この和の精神への回帰が出光の中心的な思想になる。和の精神は「人の国」でしか生まれず、「物の国」である西欧では生まれないという。和の精神は、自由競争と対立闘争という考え方の違いにはっきりと表れる。外国では対立闘争即自由競争とされる。しかし日本人から見れば両者は大きく異なる。『対立闘争は相手を滅ぼす破壊であり、自由競争のみが互いに助け合って繁栄する進歩の母(P34)』と、両者は大きく区別されるのである。日本の和の精神の小さい現れは家族主義、大きい現れが日本国、無防備の皇室、無防備の国民である。日本の家族においては絶対に個人主義などあり得ないのである。それは愛情や人情によって結ばれている。西欧が「物の国」であるのは、その歴史的背景による。西欧の歴史は革命と征服の歴史であった。国民は搾取され、何にも頼ることができなかった。そこで、自分のことは自分でしなければならないという考えにいたり、個人主義となるという。そして、次に頼ることにしたのが金であり、物であった。そうして、人生は物だという考えが出て、物を解決すればすべて解決がついたように錯覚してしまうのである。ところが日本は、『徳をすすめ、悪をこらしめ、全体のためにいいように導かれて、国民もそれを見習って、お互いに仲良くして平和に暮らしてきた(P55)』というのが歴史だ。日本の皇室はぜいたく・わがままはされず、つねに国民のことを考えてきたのである。 今、「物の国」は行き詰っている。このまま対立闘争を続けていけば、資本主義社会の後には人類全滅だけが待っているのである。そして、この行き詰まりを解決する道が「人の国」日本にあるという。しかし、現在のわが国は明治維新以後、外国の物質文明を輸入し、「物の国」の姿が入り、徐々に染まりだし、さらに敗戦後、完全に染められてしまっている。今後、和の精神をもって世界を良くするためには、まず、現在の外国色に塗りつぶされている日本人が本来の日本人に帰る必要がある。その上で世界の人々を日本人の和の道に引き入れるのである。数十年という年月が必要とされるかもしれないが、人類全滅の危機に追い込まれている今、日本人が必ず成し遂げなければならないという。
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「二人以上で暮らすということが、人間の福祉の基礎」このシンプルな確信が「海賊とよばれた男」の背骨だと思いました。マイケル・ポーターがCSVを提唱する遥か昔からの実践が出光興産という会社だったのかもしれませんね。
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出光興産の創立者である出光佐三がマルクス主義に関する考え方、出光興産の在り方を述べた本。 著者の誠実さ、真の太さ、そういったものが語る言葉の随所にみられ、「海賊と呼ばれた男」のモデルであったことを改めて実感させてくれる。 ただ、日本に対する強烈な想い入れがあるせいか、行き過ぎ...
出光興産の創立者である出光佐三がマルクス主義に関する考え方、出光興産の在り方を述べた本。 著者の誠実さ、真の太さ、そういったものが語る言葉の随所にみられ、「海賊と呼ばれた男」のモデルであったことを改めて実感させてくれる。 ただ、日本に対する強烈な想い入れがあるせいか、行き過ぎな考えも多々ある。著者の語る言葉は一旦容れて自分で択ぶ、迷わないよう注意する必要がある。 p40 マルクスのように、人間を完全なものとみるという、そういう無理なことをやると、また革命が起こるよ。 人間を否定するようなことをやれば、必ず革命が起こるよ。人間社会は人間が矛盾をもったものである以上、やはり或る程度混乱はあるものと思っておかなければいけない。 楽土みたいなものが人間な間に出来ると思うのが間違いだ。 p43 それだから人間らしい過ちは咎めない。ただ、そこで忘れてはならないのは、あとで自己を反省する心のあり方だ。 反省する心の積み重ねがあってはじめて、失敗は尊い経験となって生きてくる。
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海賊と呼ばれた男を読んだ直後に本屋で見つけて購入。 主張は一貫しており、マルクスと出光のそれぞれの考え方の対比が明朗で面白かったです。日本人に生まれて良かったと思うべきなのか。
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