1,800円以上の注文で送料無料

「AV女優」の社会学 の商品レビュー

3.4

26件のお客様レビュー

  1. 5つ

    1

  2. 4つ

    8

  3. 3つ

    6

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    2

レビューを投稿

2015/01/19

稼ぐ金額が多く、なかにはアイドル並みの知名度を確立する者もあるため、性産業のトップに君臨すると見なされもするAV女優たち。筆者は、「なぜAV女優になったのか」という動機をメディアで饒舌に語る彼女たちの主体性がいかに形成されるのかを、AV女優という業務の一環に位置付けてみせた。 著...

稼ぐ金額が多く、なかにはアイドル並みの知名度を確立する者もあるため、性産業のトップに君臨すると見なされもするAV女優たち。筆者は、「なぜAV女優になったのか」という動機をメディアで饒舌に語る彼女たちの主体性がいかに形成されるのかを、AV女優という業務の一環に位置付けてみせた。 著者によれば、AV女優らの「自由意志」語りを生み出すのは、主に、監督やメーカー、メディアといった関係者らとの面接を通じてであるという。多くの場合、スカウトされたことをきっかけに「ありふれた理由で」AVの世界に足を踏み入れる女性たちは、1本当たりの出演料が高い「単体もの」で稼げる時期を過ぎると、ギャランティの低下する「企画もの」に転身せざるを得ない。ここをひとつの転機として、それでもAV女優業を続けることを選択する女性たちは、内容の過激化や特異なキャラクターづけの戦略を面接を通して押し出していくとともに、そのような自身の行動を動機づける語りの主体となっていくのである。 著者はAV女優が作られていく過程をくわしく描き出しており、説明としてはなるほどな、と思う。と同時に、特殊な業界の特殊な実践について学んだという意外性はほとんどないとも感じる。 たしかに、ここで描かれているものは、自分の時間の一部を賃金と引き換えに切り売りして求められる業務をこなすという、多くの人々にとっての「労働」の感覚とはだいぶ違うだろう。しかし、特定の業界に一角を占めようとする者は、多かれ少なかれ、他の業界関係者との相互作用を通して、自身を職業人として主体化していくものではなかろうか。その意味で、本書が詳細に描き出しているAV女優の主体化プロセスは、特定の業界への参入者がプロフェッショナルとして自己規定していく普遍的プロセスと見ることができる。 「AV女優という特殊な仕事」に就く女性たちの動機を探りたいという社会のスケベ心に応えて饒舌に語る女性たちが、まさに「プロフェッショナル」としてパフォーマティビティを発揮しているのだとすれば、それはそれで興味深い説明である。AV女優を特殊視する視線は、彼女たちの語りを聞きたがる社会の方に投げ返されることになる。だが著者自身は、AV女優も他の業界における職業人と変わらない主体化のプロセスを通るのだという結論を導いてはいない。著者が探ろうとしているのは「性の商品化」、その中毒性であるというのだ。しかし、著者が詳細に描き出して見せたAV女優の主体化プロセスは、ほんとうに「性の商品化」あるいは「性労働」について語ることになっているのだろうか? たしかにAV女優は、さまざまな職種を含む性産業スペクトラムの一部に位置づけられる。とはいえ、デリヘル嬢やキャバ嬢がAV女優と同じ程度の主体の動員を要求される職業なのかといえば、その隔たりは大きいだろう。自分自身をエンターテイメント産業の担い手として確立していく意識は、どこまでが「一般の」女優と同じなのだろうか。そしてどこまでが性を商品化する産業に特有のものなのだろうか?こうした疑問に対して、本書は著者の直感に依存した記述を提出するだけで、理論的説明はあたえていないのである。 とはいえ、あくまで自分の直感に忠実な著者の姿勢自体は好感がもてる。先行研究を退ける説明はまったく不十分だが、一方で性の商品化はすでに女性にとって選択の問題ではなく、種々の実践を通じて折り合いをつけるべき所与の現実であること、そこにはキラキラした魅力と中毒性があるという直感を言語化するのは、実は易しいことではない。ただ、著者が直感的に把握していることと、AV女優の実践を通して説明していることの間には、まだ言われていないズレがあるように思われるのだ。そこを埋めるサポートをすべき小熊英二と北田暁大がいささか大げさに本書を絶賛していることにはひっかかる。が、この勇気ある著者にはさらに次の著作で著感を掘り下げてもらいたいと思う。

Posted byブクログ

2014/11/29

アイドルみたいな女性が求められている。AV女優になった/である理由を語るのは人生に意味を求めることに似ているように思う。もっと気楽に。

Posted byブクログ

2014/11/01
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

第1章 饒舌なAV女優;第2章 性の商品化とセックスワークとAV女優と―彼女たち をめぐる言説史;第3章 AV女優の仕事;第4章 面接と語り;第5章 単体AV女優 から企画AV女優へ;第6章 動機を語る動機;第7章 おわりに―生きた経験としての性の商品化 自己を語り、自己を売ることに酔う時、人はすべて「AV女優」になる…。「AV女優」 である多くの「彼女たち」が生きている場所から、「彼女たち」そのものに肉薄しようと する画期的な試み 高校時代はブルセラ。大学時代はAV出演。31才になりばれる。日経新聞の記者だった時に文春にばれ記事にされる。 本にはAV経験についてはふれないが、AV経験を疑われていた。 性が商品となる社会とは何なのか?

Posted byブクログ

2014/10/17

AV女優のインタビュー、彼女たちが語ることは仕事をするために何度もする面接を、プロダクションに所属からメーカーとの面接だったり監督との話とか話す中で見つけていくこと、単体女優と企画女優というグラデーションにおけるものがわかりやすく書かれていた。 ただ、十人十色なので一概にまとめら...

AV女優のインタビュー、彼女たちが語ることは仕事をするために何度もする面接を、プロダクションに所属からメーカーとの面接だったり監督との話とか話す中で見つけていくこと、単体女優と企画女優というグラデーションにおけるものがわかりやすく書かれていた。 ただ、十人十色なので一概にまとめられないけども読んでいて女優さんやプロダクションやメーカーなどの感じや思いなんかよく伝わる感じがした。

Posted byブクログ

2014/06/14

よく知らなかった世界が変えてやるのは面白いが、学術論文とは思えない。単に興味本位でいろいろなAV関係の人にインタビューして思ったことを書いたエッセイみたいなものである。

Posted byブクログ

2014/04/21

最初の方は 文章がこなれていないというか 硬くて読みにくかったな。論文だからしょうがないのかな。  誤字が多いのが気になりました。

Posted byブクログ

2014/04/06

AV女優はタブー視されながらもなぜ存在するのか、について研究された本。 名誉回復はできないと思われるこの仕事でも、なぜ続けるのか。 それはAV女優たちが、プロ意識をもち、周りのスタッフなどの力も借りながらもっと仕事面でスキルアップしたいと思う気持ちも大きい。 また性の商品化意識...

AV女優はタブー視されながらもなぜ存在するのか、について研究された本。 名誉回復はできないと思われるこの仕事でも、なぜ続けるのか。 それはAV女優たちが、プロ意識をもち、周りのスタッフなどの力も借りながらもっと仕事面でスキルアップしたいと思う気持ちも大きい。 また性の商品化意識を希薄にしているという面もある。 彼女たちは、動機を大声で語っていかなければ勤労の倫理が保てない事情にあるのだ。 当時著者は30歳ごろの女性で、 その語り口は純粋な興味から時に現場のインタビューも交えながら、論理的に導きだしている。 論文の一つとしても読みやすい。

Posted byブクログ

2014/03/05

AV女優の地位向上をうたう論ではない。ただ単に、普通の日常と地続きなところに、性を売る産業があることを記録している。 AV産業の構造や、その内側の人々の記録。参与観察の本。

Posted byブクログ

2015/03/18

「自分語り」から見えるもの AV女優がなぜ自分語りを行うのか? これまでも様々な媒体で彼女らの語りは行われている。 しかし、多くは男性目線からで、彼女らは取材者や読者、視聴者により期待される答えから大きく外れない所に踏みとどまっている。 それはある意味で理想化された女性像が彼女ら...

「自分語り」から見えるもの AV女優がなぜ自分語りを行うのか? これまでも様々な媒体で彼女らの語りは行われている。 しかし、多くは男性目線からで、彼女らは取材者や読者、視聴者により期待される答えから大きく外れない所に踏みとどまっている。 それはある意味で理想化された女性像が彼女らであり、彼女らが語ることそれ自体が商品であるからだろう。 本書がそういった「オヤジ目線」の著作と異なるのは著者が女性、しかも彼女らと歳がさほど離れていない点と、参与観察を行っている点にある。 本当に彼女らが考えていることは彼女ら自身しかわからない。 しかし、搾取される側だ、あるいは尻軽女だからだ、そんな単調な決めつけにいかずに、自由意志の存在やその中毒性を指摘している所は興味深い。 本文で指摘されている中に「頑張ったら頑張っただけ」や「上にいきたい」という彼女らの動機がある。 それは仕事にプライドを持つ多くの社会人と同じである。 そこに私はワーカホリックの芽を見出した。 しかしながら彼女らの仕事は激務であり、将来の不安や「親バレ」(近しい人間に知られることを含む)を恐れている。 そこに、自身の仕事に対して卑下する気持ちや社会に対する羞恥心が感じられる。 だったらやらなければいいだろうという反論はもちろんだ。 だが、それだけで割り切れる程度の簡単なものなのだろうか。 本書は自分語りに焦点を当てることでユニークな考察となっている。 欲を言うならば、社会とAV女優の共通点について今一歩踏み込んだ考察が欲しい。

Posted byブクログ

2013/12/07

アホなおっさんが才女の「AV女優」論を読む。また、楽しからずや。 「AV女優」がその「仕事」の最中に獲得するアドレナリンも、ワーカホリックな諸君の獲得するアドレナリンも同じ構造の中で獲得されるもの。「動機語り」が「おしごと」の中毒性を齎すのはその辺の「自己啓発」世界の住人どもと何...

アホなおっさんが才女の「AV女優」論を読む。また、楽しからずや。 「AV女優」がその「仕事」の最中に獲得するアドレナリンも、ワーカホリックな諸君の獲得するアドレナリンも同じ構造の中で獲得されるもの。「動機語り」が「おしごと」の中毒性を齎すのはその辺の「自己啓発」世界の住人どもと何ら違いはない。嗚呼、今日もオンナ達はキラキラ輝きながらその光彩のまにまに、蜃気楼のようにゆらゆら、溶け出すのだろう。鈴木の筆致は冷静で突き放したような物言いとは裏腹に熱を帯び男を引きつける。一読をお勧めしたい。 若干の疑問点。 1)「売春」と「AV」がしばしば同列に論じられるのだが女性的にはそういうものなんですか? 2)「搾取」という言葉がしばしば「収奪」の意味で使用されているがいかがなものか。「搾取」は我が資本主義社会においては資本の拡大再生産の過程で必然的に生まれるもの。労働者が「自由」であろうと、「強制」であろうと「自立」していようと「隷属」していようと「痛み」を感じようと「悦び」を獲得しようと賃労働に従事している限りは「搾取」のシステムからはのがれられない。「収奪」は直接的な暴力を背景に「奴隷的関係」を強要する中で行われる「搾取」の一形態に過ぎないのではないかな。 とはいえ、読書中、しばしば立花里子ぴんの絵が脳裏に浮かんでは消えましたな。

Posted byブクログ