言語学の教室 の商品レビュー
とてもおもしろかった!認知言語学とはどんな学問か、最良の入門書だと思う。 対談形式なのが、非常に読みやすいだけでなく、2人とも非常に頭がいいので(当たり前だ!)刺激的。 対談形式にありがちな冗長さもなく、時に高度な抽象議論、時にわかりやすすぎる具体的な話、この往還もすばらしい。
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本屋さんを物色していると思わぬ類の本に遭遇することがあります。この本もその一冊。本の帯にあった「昨日、財布に落ちられました」はどうしておかしいんだろう?というペンギンの絵のセリフに目を奪われて中身をぱらぱらめくると、さらに「雨に降られた」はごく自然な日本語なのに「財布に落ちられま...
本屋さんを物色していると思わぬ類の本に遭遇することがあります。この本もその一冊。本の帯にあった「昨日、財布に落ちられました」はどうしておかしいんだろう?というペンギンの絵のセリフに目を奪われて中身をぱらぱらめくると、さらに「雨に降られた」はごく自然な日本語なのに「財布に落ちられました」は?・・の理由が、対談形式で述べられている・・というわけで、普段意識しない言葉の使い方の世界を覗きみてしまった感じで無視できず、つい買ってしまいました。 対談形式ですが、中身は言語学の格闘技のようなお二人の議論が延々と続きます。認知言語学という分野を研究している西村さんを師として、年下の哲学者の野矢さんがこの分野に非常な興味を抱き、講義を受ける生徒の立場として、いや、もう楽しくってしかたがない!とのわくわく感満載で質問をぶつけていきますから、編集されたあとの本の内容でさえかなりの臨場感がありました。(この人たちはこういうことを考えるのがよほど楽しいんだろうなあ・・) とはいえ、買った動機は知的好奇心を触発されたのは事実なのですが、中身は言語学の専門用語が飛び交い、質問するのは哲学者の野矢さんですから生徒の知的レベルが私とは違いすぎて最後まで読んだものの、やっぱり肝心なところはさっぱり分かりませんでした・・というのが正直な感想です。ただ部分的には、冒頭の文章のおかしい理由や、村上春樹の作品の文章の用法がちょくちょく引き合いに出されていたので、興味を惹かれながら読むことができました。メトミニーという日常ではありふれている比喩の表現方法(例えば自転車をこぐ、とか、洗濯機を回すなど)のことやメタファー(隠喩)や直喩の例を述べている部分は、村上作品を読む上での勘所が分かった気がして合点したのでした。
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言語の研究や、哲学を専門とする人は、コトバをかくも緻密に捉えるものであるか、と感服する。使役構文についてのやりとりで、シンプルな例文を皮切りに、これではどうか、あれはどう説明する、というのが次から次へと出てくるのが、世界がとても拡がるような感覚を覚えることができ、楽しかった。
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言語を文法だけでなく人間の認知として捉えることが認知言語学らしい。 本書は対談のテープ起こしであるが、そのライブ感だけでなく、二人の感性、本文では違和感と表記されるもの、が伝わってくるのか面白い。 工学の立場からすると、こんな曖昧なものが学問として成り立つのか、プログラムに出...
言語を文法だけでなく人間の認知として捉えることが認知言語学らしい。 本書は対談のテープ起こしであるが、そのライブ感だけでなく、二人の感性、本文では違和感と表記されるもの、が伝わってくるのか面白い。 工学の立場からすると、こんな曖昧なものが学問として成り立つのか、プログラムに出来ないものが金になるのか、とも思ったのだが、感性が殆んどであろうUX/UIの話にも似ていて参考になる。 画像の話もそうだが、結局認知とは、そもそも人間に備わっている機能、その機能に関する記憶、他の機能、特に感情に関わるものとの相互作用だと思う。 同じものを見たとして、認知はその人で異なるのはもちろんのこと、コンテキストで異なるはずである。 プロトタイプという言葉は面白い概念だと思った。コンテキスト推定などにも活用出来そうだと思った。
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認知言語学の考え方について対談形式で書かれた本です。 カテゴリー論に代わってプロトタイプ意味論で対象を把握するとする説は興味深いと思いました。 ただ、メトニミーやメタファーに関する対談は個人的にあまり興味が持てませんでした。
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野矢茂樹は、私の好きな哲学者だ。日常を眺める角度を少しだけずらせてみせて、気が付くと哲学的な思考の深みへと自然に誘ってくれる。この人が、「認知言語学」に興味を持ち、自分が生徒になって、その道の研究者である西村義樹に教えを請うという形の対談本なので、これは見逃すわけにはいかない。...
野矢茂樹は、私の好きな哲学者だ。日常を眺める角度を少しだけずらせてみせて、気が付くと哲学的な思考の深みへと自然に誘ってくれる。この人が、「認知言語学」に興味を持ち、自分が生徒になって、その道の研究者である西村義樹に教えを請うという形の対談本なので、これは見逃すわけにはいかない。面白い例文が次々と飛び出してきて、退屈する暇はない。 「雨に降られる」とは言うが、「財布に落ちられた」とは言わない(これは、「間接受身」とか「迷惑受身」と呼ばれる)。 「嘘」は、広辞苑では「真実でないこと」とあるが、「嘘をつく」というのは「①事実でないことを言う、②発話者自身が事実ではないと思っていることを言う、③聞き手を騙す意図がある」という3つが満たされている場合が典型と考えられるという指摘には納得。(これは、プロトタイプ意味論から導かれる) 「花子は交通事故で息子を死なせてしまった」と「花子は交通事故で息子に死なれてしまった」の微妙な違いをめぐるやりとりも興味深い(前者は「許容使役構文」と呼ばれる)。 「近接の関係に基づく比喩」と定義される「メトニミー」に関して、「洗濯機を回す」(別に、洗濯機を振り回しているわけではないのに・・・)や、「トイレを流す」(そのまま受け取ったら、とんでもないイメージが思い浮かんでしまう)など思わず笑えてくる。 「メタファー」についても、詩に代表されるように創造的な使用法なのだが、「考えが甘い」とか「目が釘付けになる」のように人口に膾炙するにつれて、陳腐な言い回しとなってしまうのも確かで、言葉が生き物のように思えてくる。 読後、言語表現と認識方法(見方・考え方)が深いところで繋がっていることに思い至り、普段は何気なく遣っている言葉が、奇妙な形を持った言語として立ち上がってくるという不思議な感覚に襲われた。
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言語学に興味のある人は, それなりに楽しめるかもしれない。 読了に時間がかかってしまった。 残念ながら,私は言語学に 興味を持つことができなかったみたいです。
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言語哲学者と認知言語学者が対談形式で認知言語学の世界を見ていく。生徒役も言語に造詣が深いので鋭い質問,うまいまとめがポンポン出てきて小気味良い。構造主義言語学→生成文法→認知言語学という流れ,プロトタイプ意味論,使役構文,メトニミー,メタファーなど,刺激に満ちた講義が進んでいく。...
言語哲学者と認知言語学者が対談形式で認知言語学の世界を見ていく。生徒役も言語に造詣が深いので鋭い質問,うまいまとめがポンポン出てきて小気味良い。構造主義言語学→生成文法→認知言語学という流れ,プロトタイプ意味論,使役構文,メトニミー,メタファーなど,刺激に満ちた講義が進んでいく。巻末に対談の生の書き起こしが載っているのも面白い。本文と対比することで,本を作るにあたっての編集作業の重要性がよくわかる。議論の内容をしっかり追える人が,冗長な部分を的確に刈り込んで初めて読むに耐える対談本が完成するのだなあ。
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実に楽しく、明快で、かつ高揚感に溢れる一冊。異なる言語間の形式的差異を文化の違いに帰するだけの本ならいくらでもあるが、この本が読み手を連れて行く(←語彙的使役)場所はそれより遥かに深く鮮やかな色彩に満ちている。言語学者と哲学者の、どちらが主とも従とも、教師とも生徒ともつかないまま...
実に楽しく、明快で、かつ高揚感に溢れる一冊。異なる言語間の形式的差異を文化の違いに帰するだけの本ならいくらでもあるが、この本が読み手を連れて行く(←語彙的使役)場所はそれより遥かに深く鮮やかな色彩に満ちている。言語学者と哲学者の、どちらが主とも従とも、教師とも生徒ともつかないままの対談形式は澱みもなく、豊富な例とも相まって読み手の理解を大いに助けてくれる。「言語学」「哲学」などというと堅苦しいが、難解な所は全くなく、肩肘張らずリラックスして読める良書。巻末のブックガイドと索引も有難い。 ところで何年か前、大学の農学部を舞台としたマンガが人気を博したことがあったが、その中で「かもす」という動詞が頻繁に使われていたことを思い出した。キャラクター化された細菌が出てきて「かもすぞー」などというのだが、そのマンガを読んだとき、その「かもす(漢字では「醸す」)」という動詞を新鮮で面白く感じつつも、なぜそう思えるのかその理由がよく分からなかった。この本によれば、そのような「動詞+助詞(せる・させる)、例:腐らせる」の形ではない単一の使役動詞を「語彙的使役動詞」というのだが、そのような動詞が使われる場合は行為と結果の因果関係が直接的かつ強固で、客体が主体の完全なコントロール化にある場合が多いのだそうだ。…つまり、微小で頼りない(マンガ内でもラクガキ的に描写されている)細菌が、こと発酵というプロセスにおいては有無を言わせない程強力な役割を果たす支配者なのだという、そのギャップが面白かったのだなあ…とこのように、様々な気づきを与えてくれること間違いなしの一冊。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
失語症の勉強のために、言語学について勉強しようと読んでみました。歴史的背景の部分や、概念的な説明などは、イメージしにくく、分かりにくいですが、例をあげながら、対談形式で書かれており、分かりやすくしようとする努力が見えます。認知言語学では、文法と意味が切り離せないと考えられていること、例えば、「知らない人が私に話しかけました」より「知らない人が私に話しかけてきました」の方が自然であるなど、文法事態に意味を含むことがあること、メタファーには、「目が釘付けになる」のような、慣用句のようになった死んだメタファーと、その場その場で生まれる、創造性にかかわる、「夜の底が白くなった」のようなメタファーがあることなど、参考に、勉強になりました。
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