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山口昌男コレクション の商品レビュー

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2013/12/15

驚くべき博覧強記の山口昌男さんは、それだけに却って、文章に引用・言及が多くて戸惑わされ、今までちょっと辟易気味だったのだが、このアンソロジーをゆっくり読んでみて、その思想の魅力がよく体験できた。 山口さんはもの凄くブッキッシュな印象だが、本当は書物を持たずにフィールドワークを重ね...

驚くべき博覧強記の山口昌男さんは、それだけに却って、文章に引用・言及が多くて戸惑わされ、今までちょっと辟易気味だったのだが、このアンソロジーをゆっくり読んでみて、その思想の魅力がよく体験できた。 山口さんはもの凄くブッキッシュな印象だが、本当は書物を持たずにフィールドワークを重ねてきた人類学者なので、彼の見識は決して机上の空論なのではない。その点が、どうも誤解されがちな学者なのかもしれない。 とりわけ「狂気」をテーマにした「文化と狂気」、非日常性を追求する「失われた世界の復権」、天皇制を人類学的に構造主義的に分析した「天皇制の神話=演劇的構造」が面白かった。 <異化><周縁性><スケープゴート><トリックスター>、これらのようなキーワードを、かつて私たちは、あまりにも軽薄なポストモダン時代の消費財として、浮かれて費やしてしまったのではないか。 ポストモダンの軽はずみが遠ざかった今、山口昌男の書物は改めて読み返すに足りる、知的刺激の宝庫と言えるだろう。

Posted byブクログ