聖痕 の商品レビュー
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あまりの美貌ゆえに、変質者に幼少期に性器を切り取られるという猟奇的事件に巻き込まれた主人公の生涯が描かれた作品です。 切り取られたおかげで肉欲どころか、一切の世俗的な欲望とも無縁で生き、唯一執着するのは美食のみという主人公に老若男女惹きつけられていくのですが、私自身は高貴で聖人のような彼に魅力は感じなかったかな。犯人のことも赦しちゃうのだからオドロキですよ。 それに、私の読解力がないせいなんですけど、いつまで経っても主題が見えない・・・(最後まで読むと言いたいことは分かるのですが)どこに向かって著者が何を書きたいのかがずっとわからず、消化不良でイマイチのめり込めませんでした。 大御所の新刊ということで、それだけでありがたがられてる印象アリ、個人的にはあの古語表現や枕詞の多用はうっとおしかったです。
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あまりの美貌に、幼年期に局部を変質者に切り取られてしまった主人公の物語。 リビドーを持たず生きるということ。 古語をたくさんちりばめていて(左のページに注釈をつけている) 一見、古文のようなんだけど、 意外と注釈を追わなくてもなんとなく通じる、日本語のすごさ。 筒井文章の快感。 中庸の作家が描くと、陳腐になってしまう美の描写も、 さすが筒井康隆。 映像化不可能と思われるほどの神々しい美。 なにかおそろしいことが起こるのではないかと、 若干期待もあったかもしれないが、 主人公の悟りきったラストに、 これはある意味、感情障害なのかも?と思ったり。
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禍々しい事件の被害者でありながら、ここまで真っ当に、というより、真っ当以上の聖なる人格として育っていくことの驚きたるや。 美しさゆえの悲劇を、悲劇ゆえの幸福たらしめるこの一族の「底力」はいったいどこからくるのだろうか。 いっそ死んだ方が…と思わずに生きてこられた主人公の幸せを思う
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幼児期に大事なところを切り取られた美少年の半生記。 大御所は衰えも知らず実験的な小説を送り出してくれてうれしいです。 物語的な仕掛けはないと思いますが、言葉遊びをしまくっています。 古語(廃語や死語)を駆使して、古典調な文章だったり、現代文だったり、セリフも視点も一段落でごちゃまぜですが、なぜか物語として読めてしまいます。 だんだん、見開き左側の単語説明がだんだん多くなるのですが、辞書を引きながら書いたんでは、と思えるような同じ頭文字の出だしの単語が続くときがあります。 枕詞も使い方はともかく掛言葉は正しい感じだったと思います。 ともかく、面白かったけど、疲れました。
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たまきんをちょん切られた主人公の筒井文学ってことでかなりハチャメチャなものを想像して読み始めたけど、予想に反してなんとも静謐で美しい小説でした。そして静かに読み終えて一息つくと、いやこれすごかったな、と。
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物凄い設定で、衝撃的で悲惨なオープニングから始まる主人公の人生が、最後にハッピーエンドになるとは予想外だった。 印象深い…
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冒頭のショッキングな出来事から学生時代くらいまでは登場人物それぞれに成る程なぁとかそういうもんかなぁと納得いく部分も多少はあったから難しい言葉の言い回しや難しい漢字にも耐えて読み進められたけど…。結婚、就職辺りから怪しい雰囲気になってきて結局この終わり方なに? 途中まで気付かなか...
冒頭のショッキングな出来事から学生時代くらいまでは登場人物それぞれに成る程なぁとかそういうもんかなぁと納得いく部分も多少はあったから難しい言葉の言い回しや難しい漢字にも耐えて読み進められたけど…。結婚、就職辺りから怪しい雰囲気になってきて結局この終わり方なに? 途中まで気付かなかった時代背景も現代やん!現代!最初は戦後間も無くぐらいかと思ってたよ。 登場人物にしろ時代背景にしろ無理矢理すぎて白けてしまった。
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冒頭の生々しい描写を電車の中で読んでいたら気分が悪くなって大変でした。 そして料理の描写を読んでいたらお腹が減って大変でした(笑) 色々と読み手が大変になる、忙しい小説です。 筒井さんの、あくまで美を基本に据えて英雄的人物を描き出そうとする姿勢は『美藝公』の頃から変わりませんね...
冒頭の生々しい描写を電車の中で読んでいたら気分が悪くなって大変でした。 そして料理の描写を読んでいたらお腹が減って大変でした(笑) 色々と読み手が大変になる、忙しい小説です。 筒井さんの、あくまで美を基本に据えて英雄的人物を描き出そうとする姿勢は『美藝公』の頃から変わりませんね。あっちは社会でこっちはもっと精神的なものかもしれないですけど。 に、しても「悦痴」という当て字は素晴らしい(笑)。
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読み終えても何度も何度も読み返してしまいます。帯を見て敬遠している人もいるかもしれませんが、読まないのはもったいない。話の筋、登場人物の名前、地名、文体まで、この本の全頁一字一句全てが絢爛豪華に織り上げられた暗号です。読んだ後、語り合いたくなるのですが、議論沸騰すること間違いなし...
読み終えても何度も何度も読み返してしまいます。帯を見て敬遠している人もいるかもしれませんが、読まないのはもったいない。話の筋、登場人物の名前、地名、文体まで、この本の全頁一字一句全てが絢爛豪華に織り上げられた暗号です。読んだ後、語り合いたくなるのですが、議論沸騰すること間違いなし。作者がニヤリとしているのが目に浮かびます。
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幼くして男根、陰嚢を切り取られた男の一代記。悲劇的な話になるのかと思いきや、幸福といえる人生を掴み取っていく。うまく行き過ぎの感は否めないが、三大欲の一つを完全に失うことでもう一つに秀でるということはあるかもしれない。言葉遊びと食の造詣、次を楽しみにして読み進めてしまう。御大筒井康隆の力量発揮。
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