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輸血医ドニの人体実験 の商品レビュー

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8件のお客様レビュー

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2020/08/26

以前フォロワーさんのツイートを見て興味を持った、輸血医療の歴史を綴った1冊。17世紀のイギリス対フランスという構図で宗教や政治、倫理観を背景にした輸血医療の賛否、血液型の観念がない時代、異種間動物、動物から人間への輸血医療を実験する

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2016/02/10

17世紀フランス、正確な記録が残るものとしては最古の輸血実験が行われました。 医師ドニによる「動物から人間への」輸血と、それにまつわる殺人事件の記録。 歴史上こんなことがあったのかと興味深く読みました。 国家間の研究競争や歴史的・文化的な理由による輸血への嫌悪感など、時代背景が...

17世紀フランス、正確な記録が残るものとしては最古の輸血実験が行われました。 医師ドニによる「動物から人間への」輸血と、それにまつわる殺人事件の記録。 歴史上こんなことがあったのかと興味深く読みました。 国家間の研究競争や歴史的・文化的な理由による輸血への嫌悪感など、時代背景が丁寧に描かれています。 そしてドニの裁判を機に約150年間、ヨーロッパでは輸血治療が事実上禁じられてしまうのでした。 この本はドニの実験と裁判に至る経緯をまとめた「輸血の研究史」です。 ドニ個人の伝記だと思って読み始めたのでちょっと面食らいました。

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2015/05/02

医学の進歩は、現代の常識では嫌悪感を覚えるような試行錯誤と共にある。我々は、その不愉快な実験の恩恵だけを受けており、過去の気持ち悪い出来事を忘れてしまっている。また、そこには、宗教観、倫理観の対立も含まれる。本著はその一つ、輸血を巡る論争、事件のドキュメンタリーだ。 読みながら...

医学の進歩は、現代の常識では嫌悪感を覚えるような試行錯誤と共にある。我々は、その不愉快な実験の恩恵だけを受けており、過去の気持ち悪い出来事を忘れてしまっている。また、そこには、宗教観、倫理観の対立も含まれる。本著はその一つ、輸血を巡る論争、事件のドキュメンタリーだ。 読みながら、現代の知識で違和感を感じてしまう箇所が幾つもある。読者として、登場人物の誰がしかに強い共感を持ちたい所だが、主人公とも言えるドニは、やっている事が原始的、奇抜過ぎて中々感情移入できない。しかし、著者が公平な視点を保ったお陰で、この事件が後々の医学の発展に寄与したという事を、正しく認識できる。 パイオニアは、時に嫌悪感を齎す。後世への恩恵は、犠牲の上に成り立つのだった。

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2013/10/13

輸血が近代の医学に登場したのは19世紀になってからだが、実はその150年も前に輸血が試されていた。 本書はその裏にあった人間同士のエゴのぶつかりあい、宗教的タブー、国家の対立といった事実を浮き彫りにするとともに、なぜ、輸血が150年もタブーとされなかったいけなかったかに光を当て...

輸血が近代の医学に登場したのは19世紀になってからだが、実はその150年も前に輸血が試されていた。 本書はその裏にあった人間同士のエゴのぶつかりあい、宗教的タブー、国家の対立といった事実を浮き彫りにするとともに、なぜ、輸血が150年もタブーとされなかったいけなかったかに光を当てている。 まず、動物から動物、その次に動物から人という輸血の実験の経緯は、今日から見れば、無茶苦茶なのだが、今の医療はたゆまぬ努力と試行錯誤、そして多数の犠牲の元に成立したことを再認識させる良書だ。

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2013/10/06

良作でした。 未だ錬金術が科学の範疇にあったフランスの17世紀の時代に、血液循環説が発見された。それに触発された野心のある若者ドニは、動物(仔牛)から人間への輸血を成功させる。 輸血は精神病の治療を目的として施術された。ドニは精神に異常をきたした人間に、仔牛の血を輸血すればそ...

良作でした。 未だ錬金術が科学の範疇にあったフランスの17世紀の時代に、血液循環説が発見された。それに触発された野心のある若者ドニは、動物(仔牛)から人間への輸血を成功させる。 輸血は精神病の治療を目的として施術された。ドニは精神に異常をきたした人間に、仔牛の血を輸血すればそのように従順になると考えた。輸血をした患者は従順になり、施術の成果があったようにみえた。今日の感覚ではこういった人体実験は倫理的に問題があると考えるのが一般的であろう。 しかしながら、今日においてもiPS細胞のようなあたらしい科学的な発見が、旧来の正しいとされた倫理観が見直されるきっかけとなる事例もある。フランス中世の科学革命を現代に至るコンテクストとしてみると面白いと思う。 また、個人的に不思議に思ったのが、仔牛の血を輸血すれば従順と考えた、血が精神に何らかの作用をもたらしていると考えうる発想はどこに由来しているのかという点である。 たとえば、日本において血液の型が人間の性格になんらかの作用をもたらしている説が多く信じられている。(僕はこれを信じておらずほとんどハラスメントの類であると考えているのだけど) 今日も中世と同じ様に迷信と科学が曖昧に交差する時代である点に違いはないのではないかと感じる。

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2013/08/15

このタイトルはちょっと狙いすぎでは? かなりおどろおどろしいので少々構えてしまったのだが、読んでみれば何のことはない、輸血という現代ではあたりまえになった医療行為が、人々に受け入れられ、科学的根拠の上に治療として用いられるようになるまでの歴史である。 正直、少ないとはいえ、結構...

このタイトルはちょっと狙いすぎでは? かなりおどろおどろしいので少々構えてしまったのだが、読んでみれば何のことはない、輸血という現代ではあたりまえになった医療行為が、人々に受け入れられ、科学的根拠の上に治療として用いられるようになるまでの歴史である。 正直、少ないとはいえ、結構グロテスクというか露骨な描写も確かにあり、そういうのが苦手な人はちょっとつらいかもしれない。 だが大半は、中世の人々が考える人体の働きや医療行為、宗教との関連についてなどを、当時かかわりのあった人々を通した物語として語られており、時代背景や宗教観などとも相まって、非常にわかりやすい。翻訳は今ひとつだったけれども…。 まだ医学が進歩していなかった当時、誰かが実際にやってみなければ何が起きてどうなるかは知る由もないわけで、『世にも奇妙な人体実験の歴史』でも何人も取り上げられていたが、そういう恐れを知らない(?)科学者たちの恩恵を、現代の私たちは受けているわけだ。 そして正直な思いとして、現代に生まれてよかったなあ~と、しみじみ感じたのであった…。 だって当時の治療といったらまず瀉血だよ~、くわばらくわばら。 知らないって怖い。

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2013/07/25

著者がいいのか訳者がいいのか、非常に面白かった。 瀉血という言葉を初めて見たのは何年前か。 看護師に聞くと今はやらない処置、とか。 NICUでは瀉血が行われることもあった。 医学校や看護学校では歴史の中で瀉血の話が出るのだろう。 だが、一般人からすると理解に苦しむこの処置が何故今...

著者がいいのか訳者がいいのか、非常に面白かった。 瀉血という言葉を初めて見たのは何年前か。 看護師に聞くと今はやらない処置、とか。 NICUでは瀉血が行われることもあった。 医学校や看護学校では歴史の中で瀉血の話が出るのだろう。 だが、一般人からすると理解に苦しむこの処置が何故今も点数本に残っているのか。 そんなところから大統領が医者によって失血死させられていたとか、キリストの子羊とか気味の悪い話とか、一気に読み終わった。 あとがきで著者がES細胞関連で法規制がなされることと、同時代に輸血を禁じされた政治的・宗教的背景を比較してあるのも印象的。 面白い物語として読んだが、医学と狂気を見ているようで色々な意味で不気味だった。 この出版社、宣伝で書かれている本も非常に魅力的なタイトルと文句で興味をそそられた。

Posted byブクログ

2013/06/08
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

タイトルだけみると何だか怪奇小説のようだが、まじめな科学史読み物である。話の軸は、ハーヴェイの血液循環論のあと、イギリスでロウアーが行った動物(犬)の輸血実験のようす、それをマネしてヒトの輸血につき進んだ、ジャン・パティスト・ドニの話である。1667年に16歳の少年に子羊の血液を輸血、同年、精神病者モーロワに子牛の血液を輸血するが、二度目の輸血のあと患者が死亡し、裁判の結果パリ高等法院が輸血の許可をパリ大学医学部の許可制として事実上禁止し、以後、ドニは止血剤を開発して死んだ。重要なことは輸血が錬金術の「変成」や、精神病の治療として試されたことである。血液型をラントシュタイナーが発見するのは1900年であるから、結果的に輸血が禁止されたことで不適合輸血の被害を少なくしたともいえるが、ドニの研究が科学的に追求されていれば、もっと速く輸血の可能性を追求できていたかもしれない。この本はいわゆる「科学革命」の時代のいろいろな側面も書いており、イギリスの王立協会とその機関誌「フィロゾフィカル・トランザクションズ」や、それを支えた外国語に堪能なオルデンバーグの生活や収監事件にもくわしい。フランス科学のパトロンだったモーロワ(ハーシェルが土星に輪があることを発見したのはモーロワのアカデミーにおいてである。ガリレオは土星の「耳」について正体を分からなかった)にもくわしく、フランスにおける医学の学閥、ガレノス主義のパリ大学医学部がハーヴェイを批判し、輸血にも反対したこと、パラケルススのアンチモンを治療にもちい、新教徒もうけいれていたモンペリエの医学校との対立なども興味深い。ほかには、ペスト、錬金術、精神病院、都市計画と血液循環論の関係、生体実験に根拠をあたえたデカルトの機械論の役割、瀉血や抜歯などを行った理髪外科医の仕事などについて触れている。医学史を読むと下手なスプラッター小説より壮絶である。陰茎を切除し、膀胱に手が入るくらいの穴をうがって、結石を取り出す手術など麻酔なしでやっていたのであるから壮絶である。血液循環論は中国医学では前提であるが、中国医学の鍼でも瀉血はある。しかし、瀉法と補法は一体で、血液(栄気)のほかに気体(衛気)も循環しているとしていた。もし17世紀に生まれていたら、西洋医より中国の医師にかかりたいとも思う。

Posted byブクログ