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モネ、ゴッホ、ピカソも治療した絵のお医者さん の商品レビュー

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26件のお客様レビュー

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2013/08/28

絵画の修復を手がける著者が、修復の仕事をするようになるまでの道のり、仕事の周辺、今後の抱負を語る。 3年ほど前のNHK『プロフェッショナル』で紹介されてこの著者を知る。 本書は新聞広告で見かけて、図書館で借りてみた。 絵画修復家とは、文字通り、年数を経て、損傷したり劣化したり...

絵画の修復を手がける著者が、修復の仕事をするようになるまでの道のり、仕事の周辺、今後の抱負を語る。 3年ほど前のNHK『プロフェッショナル』で紹介されてこの著者を知る。 本書は新聞広告で見かけて、図書館で借りてみた。 絵画修復家とは、文字通り、年数を経て、損傷したり劣化したりした絵画を修復する仕事である。 近年ではフェルメールの「手紙を読む青衣の女」が修復されて鮮やかなラピスラズリの色が甦ったこと(これはアムステルダム美術館のフェルスライプという修復家による)、あるいは逆に、修復と称して手を入れすぎ、絵がまったく別物になってしまったフレスコ画の話あたりが話題になった。 著者は画家を志していたが、父親からの示唆で修復家という仕事を知り、夫(画家の岩井壽照氏)とともに渡ったイギリスで、働きながら本格的に修復の基礎を学んだ。以後、日本における数少ない修復家として、数々の名画と向き合っている。 著者が行う修復は、基本的にやり直しの利く形で行われ、絵にやさしい、オリジナルの風合いを損なわないことを目標とするものである。 突き詰めていくと、損傷を治すよりも損傷が生じないように予防する方が大切だと説いている。 欧米ではどこの美術館にも修復部門があるというが、日本ではまだそれほど普及していない。美術館として「箱」はできるが、修復に掛ける予算がつかないのだ。そのため、保管状態が驚くほどよくないものが多いという。 総体に控えめで穏やかな印象を与える著者だが、こうした現状に関してはかなり強い言葉で批判している。 「職人」が、文化を維持する上で大切にすべき存在なのに、正当な評価を受けていないという指摘はその通りだろうと思う。 本書は、修復の技術的な点、子育てをしながら働く困難、日本の修復業界の層が薄いがゆえの苦労などに触れ、修復の実例や、修復をきっかけに知己を得た人との対談なども盛り込む。あれこれ詰め込んだがために、いささか焦点がぼけたきらいがないではないが、「修復家」という仕事がどのようなものかを知る入門書としては手頃な1冊と言えるだろう。 著者は、将来的には、修復技術をガラス張りで客に見せ、その収益を絵画の修復に充てる「修復センター」の設立を構想しているという。 実現すれば見に行ってみたい。 **職人・アルチザンの本を集めてみました。 ・ルリユール(製本・装幀)  『手製本を楽しむ』(栃折久美子)  『ルリユールおじさん』(いせひでこ(絵本)) ・宮大工  『棟梁』(小川三夫) ・染織家  『日本の色辞典』(吉岡幸雄) ・仏像修復家  『壊れても仏像』(飯泉太子宗)

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2013/08/22

何て、気の遠くなるほど緻密で繊細な作業…!絵の修復は、作品への敬意とプロ意識に裏打ちされてるんだなぁと思った。 かつて美術館で、作品の貸し借りチェックに立ち会ったり、絵のカルテを作ったりしたが、修復を継続的にしていくという発想は当時なく、学芸員へのチクリと諫言が耳に痛いです。

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2013/08/17

日本人修復家の第1人者。 西洋と比べて日本の修復に対する意識や認識の低さを少しでも改善するために多くの人に読んで欲しい一冊。 そして、いつか日本にも彼女の望む修復を”学べる”場所ができることを切に願う。

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2013/08/09
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

幸せな読書時間でございました。息が詰まるような修復作業の様子と、筆者の絵に対する真摯な思いが伝わってきて、読んでいてワクワクする。どうして私はこうも、印刷とか、製本とか、修復とか、職人が緻密にこつこつ仕事をする様子を読むのが好きなんだろう。やっぱり私はアルチストではなくアルチザンが好きだ!という思いを噛みしめつつ…あぁ楽しかった。 ずらりとならんだ修復の道具の一覧がすごく面白かった。いろんな道具を修復の道具として代用しているんですね。趣味で製本の真似事みたいなことをやっていたので、参考になりそうな道具があったりして面白かった。 【どのカテゴリーに分類するか迷いましたが、本の修復に興味を持った繋がりで本書を読んだので、こちらに分類します。】

Posted byブクログ

2013/06/29

NHKのプロフェッショナルで見て気になっていたが、その仕事が本になった。どのようにして名画を修復するか、その方法もさることながら、世界で1枚しかない名画を壊すかもしれない仕事に向かう態度、美術に対する姿勢、など感服。

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2013/06/03

絵画修復を職業とされる方のエッセイだが、それだけでは終わらない。誰もが知っている「あの」名画を一体どうやって修復しているのか、作品それぞれについて経緯と経過が紹介されているので、美術ファンにはたまらない内容だ。道具の一つひとつにいまでいたる筆者のこだわりから感じ取れる職人魂に関心...

絵画修復を職業とされる方のエッセイだが、それだけでは終わらない。誰もが知っている「あの」名画を一体どうやって修復しているのか、作品それぞれについて経緯と経過が紹介されているので、美術ファンにはたまらない内容だ。道具の一つひとつにいまでいたる筆者のこだわりから感じ取れる職人魂に関心するのもいい。けれど、有名作品に手を加えるという特権を持ったこの作者は、世界中、特に国内で放置されている美術作品たちの代弁者として、悲鳴をあげている。訴えるのは作業環境の劣悪さでも、職種の不安定さでもない。文化とは、この修復家のお仕事のように、文化財を長い期間守りぬくことだと、思われている方も多いのではないだろうか。この本を手にとられる方には、身近な感覚を通して語られる筆者の言葉から、文化とは何か、本当に守るべきものは何なのか、汲み取っていただきたい。

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