モネ、ゴッホ、ピカソも治療した絵のお医者さん の商品レビュー
絵画修復家として活躍されている岩井佐久子さんの仕事論。 絵画に関わった仕事にこだわり、女性という立場での仕事との向き合い方に葛藤しつつも歩んできた自身の道について説いている。今までなかなか知り得なかった絵画修復家としての仕事が丁寧に書かれた興味深い内容。「絵にやさしい修復」を理...
絵画修復家として活躍されている岩井佐久子さんの仕事論。 絵画に関わった仕事にこだわり、女性という立場での仕事との向き合い方に葛藤しつつも歩んできた自身の道について説いている。今までなかなか知り得なかった絵画修復家としての仕事が丁寧に書かれた興味深い内容。「絵にやさしい修復」を理念とし、修復する際に、先の将来を見据えた“予防”を心掛けるご本人の姿勢は絵画に対する敬意と誇りを感じた。 古くから現存する美術画が今も尚楽しめるのは、背景でこういった方たちの学と技術あってのものであると思うと頭が下がる。
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プロ意識と誇りと謙虚さ。〝想像しただけで気が遠くなる〟とは、まさにこの山下清のちぎり絵の修復過程。手法についてのコラムが大変興味深かったのだが、手に入れたはいいがメンテはおろそかという風潮があると知り、それは絵画以外の日常生活のあれこれにもあてはまると考えはじめて我が身を振り返る...
プロ意識と誇りと謙虚さ。〝想像しただけで気が遠くなる〟とは、まさにこの山下清のちぎり絵の修復過程。手法についてのコラムが大変興味深かったのだが、手に入れたはいいがメンテはおろそかという風潮があると知り、それは絵画以外の日常生活のあれこれにもあてはまると考えはじめて我が身を振り返ることに。
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真摯な本だなあ。 修復の重要さと責任の重さ。その絵に触れられる時間は少ないから、できることをすべてやろうとなさる意気込み。 芸術を守り大切にする人たちは無条件で尊敬します。 わたしが過去に見た展覧会の絵も修復なさっていて、あのとき見たあの絵かーと感慨深くなったりしました。 また...
真摯な本だなあ。 修復の重要さと責任の重さ。その絵に触れられる時間は少ないから、できることをすべてやろうとなさる意気込み。 芸術を守り大切にする人たちは無条件で尊敬します。 わたしが過去に見た展覧会の絵も修復なさっていて、あのとき見たあの絵かーと感慨深くなったりしました。 またどこかで岩井さんのお仕事と再会したい。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
修復の基本、それは絵を掃除すること。 色は塗り直さない。それが修復の鉄則。 唾液がいちばん汚れが落ちる。 有機溶剤でニスを除去する。 裏打ちをしてニスをかけることが昔の補修では一般的だったが、 ニスが黄変し本来の色を変えてしまう。 裏打ちは絵を暗くしてしまう。 これらを除去すると、塗りなおしたように、元の色が出てくる。 ベニア板に絵を張ると、ベニアの接着剤により絵が酸化してしまう。 基底材が紙の絵は紙が酸化し、茶褐色の斑点「フォクシング」が出る。 漂白剤などで取る。 ・・・古いレコードジャケットも修復できそうだ。 亀裂が入っている場合は、 一本一本に裏から膠水を差し、熱を加えながら伸ばしていく。 最近はつやが出ない日本の「ふのり」が使われる。
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読了:2014/1/2 「絵がきちんと管理されていない。「名品展」なのに、どれも保存状態がよいとはいえず、よく管理してあると思える絵はほとんどありません。よくこんな状態で出品できるものだと、美術館の意識を疑いたくなるほどでした。その現状にすごくショックを受けると同時に、これは重...
読了:2014/1/2 「絵がきちんと管理されていない。「名品展」なのに、どれも保存状態がよいとはいえず、よく管理してあると思える絵はほとんどありません。よくこんな状態で出品できるものだと、美術館の意識を疑いたくなるほどでした。その現状にすごくショックを受けると同時に、これは重大な問題であると感じました。 (中略) もし美術館に修復部門があって修復家がいたら、絵の管理は担当できるはずなのですが、そこが抜け落ちてしまっているのが日本の美術館。そんなことなら100館も美術館をつくらなくていいと思います。まさにうつわ行政の典型です。建物をつくって物を買って入れ、あとは人件費がかかるので人は最小限。美術館をつくるのに修復部門がなく、つくる予定もないなんて、言語道断です。そこが日本の文化レベルの低さだと思います。 (中略) 西洋美術の修復と保存科学の両方の担当がいる美術館は国立西洋美術館、ただ1館だけでした。」
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夏にロシアのエルミタージュ美術館を訪問した際、鑑賞に来た客に塩酸をかけられ、苦労して修復されたという絵画をみたということもあり、本書が目をひいた。 美術館や展覧会というと、日本ではやはり非常にその取扱いには気を遣い、たとえばロープなどを張って人が近づけないようにしたり、何かしら...
夏にロシアのエルミタージュ美術館を訪問した際、鑑賞に来た客に塩酸をかけられ、苦労して修復されたという絵画をみたということもあり、本書が目をひいた。 美術館や展覧会というと、日本ではやはり非常にその取扱いには気を遣い、たとえばロープなどを張って人が近づけないようにしたり、何かしらのケースの中に作品が収められていたり、当然温度湿度、光線などにも留意されていて、知らず知らずのうちに厳かな心持にさせられることが多い。 本書でも、著者は絵画の修復家(日本ではごく少ないらしい)の第一人者ということもあり、非常に心を砕き、作者の描きたかったもの、作風、タッチ、表現を可能な限り忠実に甦らせられるよう苦心しているのがよくわかる。 そして著者は、専門家の目から見て、日本ではこと絵画の管理、修復、保全ということに関心が薄く、体制がなっていないことをたびたび嘆いてもいる。 ところが…世界有数の美術館といわれるエルミタージュ、びっくりするくらいぞんざいな展示方法でいろいろな作品が展示されていたのだけれど…これっていいんだろうか。 素人目にも不安に思うくらい、全く裸の状態の作品がひょいと展示され、それこそ作品に触れるのもなんら造作ないほどすぐ近くまで寄ることができる、外に面した窓は全開、日光も差し込み作品にも当たっている、ネヴァ川という大きな川に面した窓から外の風もがんがん吹き込み、温度湿度の管理どころか、外の道路からの排気ガスやらホコリやらなんやらかんやら、入り込みまくりでは?? ごく一部の作品を除いて、写真を撮ることも止められていないし、本当にこれで作品は大丈夫なのだろうか、これで世界有数の美術館といっていいのだろうかと、本当に心配になった。 著者は「西欧の美術館は、美術品の管理が進んでいる」というが、ここエルミタージュは(ロシアだし、もともとエカテリーナの住居として使われていた建物だから仕方ない部分もあるのかもしれないけれど)正直本当に酷い。近々改装の予定ではあるらしいが…。 修復の過程、やり方などを簡単に説明したページもあり、興味深く読んだ。もっと、いろいろな作品の修復前やその後、修復中の様子など、カラーでたくさん見たかったな。 著者は、修復センターを作って修復の様子などを一般公開するなんていう夢ももっているらしい。それは面白そう!できたら行って見てみたい。 去年だったか、スペインで、修復すると言ってフレスコ画のキリスト像をめちゃくちゃにしちゃったおばあさんが話題になったが、そのおばあさんに本書を読ませたらどう思うのかな~なんて思いながら読んでいたら、そのことにもちょっと触れられていた。「おばあさんを笑わないであげて、でもやってしまったことはたいへんなことだけど」だって。 最初さんざんこき下ろされて、そのうちその絵目当ての観光客が増えて、これはこれでいいんだ、なんて擁護する声もあがったりしたけど、やっぱり、たいへんなこと、なんだよね…。
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小説家やライターが書いた訳ではないので、淡々としていて最初は少し物足りない感じがしたが、読み進めるうちに修復という仕事について語るのには、その方が良いと思った。 修復の仕事をもっと世の中に広める為にも、自身が本を書くのでなくても良いので、続編や違う語り口の本を出して欲しいと思う。...
小説家やライターが書いた訳ではないので、淡々としていて最初は少し物足りない感じがしたが、読み進めるうちに修復という仕事について語るのには、その方が良いと思った。 修復の仕事をもっと世の中に広める為にも、自身が本を書くのでなくても良いので、続編や違う語り口の本を出して欲しいと思う。 装丁と中身のデザインも綺麗で好き。帯とカバーが一体となっていて、帯部分を裏面に刷って、折り返す事で帯のように見せている。帯を内側に折りこむとタイトルが隠れてブックカバーのようになる。裏側の帯部分の写真はラトゥールの絵のよう。
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良い本でとっても好きだけど、一冊の本として見ると個性的な雰囲気というのが足りない気がするなぁ・・・。もっと専門的な話に入っていっても良かったのかも。
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絵の修復という仕事について、丁寧にじっくりと教えていただいた。どんな仕事もそうなのだと思うけれど、現状に満足せず、たゆまずより良い道を考え、そして相対するものの思いを想像することが、いかに大切なことか。技術と芸術、ひいては人生ということまでも、考えさせてもらえた。
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名画の修復家の岩井希久子さんの本。 名画の修復は、ものすごい精細な作業をていねいに1つずつ積み上げていく仕事。 それでも、やり直しが必要と判断したときの文章に、 「どんな絵でも、その絵に触れられるのは1度しかないかもしれない。だったら自分が納得いくまで、「これだ」と思えるまで何度...
名画の修復家の岩井希久子さんの本。 名画の修復は、ものすごい精細な作業をていねいに1つずつ積み上げていく仕事。 それでも、やり直しが必要と判断したときの文章に、 「どんな絵でも、その絵に触れられるのは1度しかないかもしれない。だったら自分が納得いくまで、「これだ」と思えるまで何度でもやる。もちろん、やり直しがきかないところはやる前に十分検討しますが、やり直しがきくことであれば、とことん納得がいくまで作業します。 そして、手間をかければかけるほぢ、絵はきれいになって、きちんと応えてくれるのです。」 とありました。 すごい!「岩井品質」! こんなグレードは出せないけど、やっぱり仕事は品質だよねぇ。 ここのところ、「ナカムラ品質」のことをあまり意識しないで仕事をしていたけど、初心に戻らなくては!
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