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怒らない練習 の商品レビュー

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2013/06/12

スマナサーラ師の著作『怒らないこと』の実践編。 以前『怒らないこと』をテーマにした読書会に参加したことがあり、続編が気になって、本作も読んでみました。 前の本では、怒るということは、自分にとっても周りにとっても一利なしだということを学び、今回の新著では、その考えを具体的にどう日常...

スマナサーラ師の著作『怒らないこと』の実践編。 以前『怒らないこと』をテーマにした読書会に参加したことがあり、続編が気になって、本作も読んでみました。 前の本では、怒るということは、自分にとっても周りにとっても一利なしだということを学び、今回の新著では、その考えを具体的にどう日常に取り込み、生かしていくのかが書かれています。 そのどれも、一大決心のもとに新しい試みをするという必要はなく、考え方を少し変えてみることで、必然的に行動が変わっていくというもの。 タイトルに「練習」とありますが、本を何度も読んでいるうちに、自然と穏やかな考えになり、怒らなくなっていくような気がします。 師の説くことはわかりやすく具体的なので、なるほどなるほどと納得しながら読んでいくと、自分の考え方が変わったという意識も無いまま、心静かにいられるようです。 人はなぜ怒るのでしょうか。 期待が裏切られるから、自意識を傷つけられたから、迷惑がかかったから、などと理由は様々ですが、この本には、 「自分に対して自信がないから、世界は歯がたたない巨大なものに見え、自分の存在を守るために頑固になる」 と書かれていました。 怒りは自己防衛から生じるものだという指摘は、なかなか新鮮でした。 宗教家からすると、怒る人物は人間として未熟者に見えるなのではないかと思われますが、師は「我々は根本的に、怒る生命です」と言っており、怒ることを否定していないため、責められているような居心地の悪い思 いを抱くことなく読み進められます。 人間の心に慈しみはもともとないという意見には驚きました。 性悪説に根差したものだったとは。 だからこそ、怒らずに慈しみの気持ちを持つように心がけるべきだとのこと。 怒りを失くすことは、人格改良プログラムだと考えると、続けられそうです。 「怒らない」ことと「慈しむ」ことは、まさに仏教の説く道につながるとともに、一般的な道徳でもあります。 それはつまり、欲や怒りといった気持ちに心が感染しないようにする生き方で、「医療の言葉を使うならば、仏教の道徳は予防医学です」という表現が、腑に落ちました。 人々の身近な感情を上手にすくい取り、解説する師。本当に宗教の世界の人なのかと不思議に思います。 人間とは、生まれつき怒る生命体で、それを反対の慈しみの気持ちに置き換えることが正しい生き方だという教えを、素直に受け取ることができました。 挿絵はしりあがり寿氏。アクの強いアーティストというイメージが強かったのですが、この本の絵はとても柔らかく、優しいものでした。

Posted byブクログ