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脊梁山脈 の商品レビュー

3.5

26件のお客様レビュー

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2013/09/09

戦後の主人公は,お金に困っていないせいか,登場人物の女性たちと比較して,生きていく必死さというのが感じられず,木地師についての調査もそこはかとなく金持ちの道楽感がつきまといました。 私には,木地師に魅せられた熱さというのがあまり感じられず,二人の女性に対するどっちつかずの態度のそ...

戦後の主人公は,お金に困っていないせいか,登場人物の女性たちと比較して,生きていく必死さというのが感じられず,木地師についての調査もそこはかとなく金持ちの道楽感がつきまといました。 私には,木地師に魅せられた熱さというのがあまり感じられず,二人の女性に対するどっちつかずの態度のそうですが,淡泊な印象だけが残りました。 飛鳥時代の考証については,歴史好きとしては斬新でなかなか興味深かったです。 全体的にしっとしとしたお話なので,このような雰囲気が好きな人には合うと思います。

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2013/07/19

乙川さんの初の現代小説ときいて期待して臨んだ。 その期待どおりの乙川さんの世界であった。 私は時代ものが得意でないので現代ものは大歓迎。 しかも昭和の戦争直後からの時代設定で。 乙川さんの美しく清澄な文章と醸し出される静かな佇まい は現代小説でも変わりなかった。

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2013/06/27

この小説の主人公は、若い大陸からの復員軍人で、復員列車で知り合った人との縁がもとで、また付き合いの薄かった親族の遺産を手にすることで、戦後の人生を木地師の研究に没頭するのだが、彼と彼を取り巻く人々の描写に戦後の人々の生活や心の葛藤が重く見せ付けられる。戦後の復興で発展する社会の一...

この小説の主人公は、若い大陸からの復員軍人で、復員列車で知り合った人との縁がもとで、また付き合いの薄かった親族の遺産を手にすることで、戦後の人生を木地師の研究に没頭するのだが、彼と彼を取り巻く人々の描写に戦後の人々の生活や心の葛藤が重く見せ付けられる。戦後の復興で発展する社会の一方で、伝統を守ろうとする人たちや、そのしがらみから抜けられない人、或いは伝統を新たに見つめなおそうとする人、など様々にいて、それぞれが四苦八苦して必至に生きて行こうとする姿は、当時の大変な生活がよく分かるが、一方で登場人物がそれぞれに個性が立ちすぎている感もある。副題にもある、「結局、人生はひとつの窓から眺めた方が良く見える」というニック・キャラウェイの言葉がキーワードである。これを作品にしたのが本書なのかもしれない。

Posted byブクログ

2013/06/25

久しぶりの乙川作品、しかも現代小説。 面白かったかなぁ、興味深かったけど…、と、星三つにしようか悩んだあげく、やっぱり木地師の歴史や古代日本史の解釈に心引かれたので星四つに。 物語は太平洋戦争に出征していた男が帰国し、伯父の遺産のおかげで経済的には恵まれるものの、戦争前の夢や希望...

久しぶりの乙川作品、しかも現代小説。 面白かったかなぁ、興味深かったけど…、と、星三つにしようか悩んだあげく、やっぱり木地師の歴史や古代日本史の解釈に心引かれたので星四つに。 物語は太平洋戦争に出征していた男が帰国し、伯父の遺産のおかげで経済的には恵まれるものの、戦争前の夢や希望を取り戻せず、偶然出会った木地師がきっかけで、木地師や日本の伝統工芸の研究に打ち込むというもの。 残念なことに、私はこの主人公にサッパリ魅力を感じず、彼の回りの佳江や多喜子が可哀想で仕方がない(笑)。 もっとしゃんとした男に巡り会えたら良かったのに!! ま、それでも佳江は自分の道を己で切り開き、多喜子は彼女の愛が報われることになりそうで良かったかな。 これまで読んだ乙川作品の時代小説では、心洗われるような主人公に出会った(ような気がする)ので、その点では本作はちょっと残念。

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2014/02/25

著者名で読み始めたら現代ものでびっくり。時代小説の人だと思ってた。 と思ったら戦後の話で二度びっくり。終戦直後から60年代まで。 「カストリの時代」http://booklog.jp/item/1/4894445972のおかげで情景が想像しやすい。 主人公は遺産をついで有閑にな...

著者名で読み始めたら現代ものでびっくり。時代小説の人だと思ってた。 と思ったら戦後の話で二度びっくり。終戦直後から60年代まで。 「カストリの時代」http://booklog.jp/item/1/4894445972のおかげで情景が想像しやすい。 主人公は遺産をついで有閑になって何でもできるゆえに人生に迷ってちょっとしたきっかけから木地師(木を加工して器などをつくる職人)の手仕事に興味を持って消えゆく世界を本に残そうと思い東京で生きる奔放な「新しい女」である画家と木地師の娘であり芸事の世界で生きている純朴な娘との間でやっぱり美に生きる人っていいよねとか思いながらふらふらしたりしつつ復員列車でわずかに関わった人を探すポーズで自分探し。 みたいな話。 主人公の出身が福島県浜通りということもあって、戦後の情景に3.11を重ね合わせるのかなと最初は思った。 「生き残った罪悪感」や「その後を生きて行く」人たちを文学の視点で描いていくのかと。 そうでもなかった。 日本人だとか血とか仕事とか道とかのパーツをみると、アイデンティティの話のような気もするけれど、主人公をはじめみんなこれというものを持っていない。 一応持っている設定にはなっているけれど、なんだか上滑りする。 感情の起伏が激しい設定の人も皮肉を少しいうだけで、激情に駆られて無計画に破滅するわけじゃない。 そういう激しい人を書くには向いていなさそう。 思い切った決断をするときにも、みんな安全線を確保している。 なにもしない(本を書くために旅をしたり、遺産も一応自分の力で取得したりはしているけれど暇つぶしや現実逃避に見える)主人公にイライラする。 女が「母」と「娼婦」と「淑女」(両方夜の女だけど)なのもがっかり。 そういう枠組みでも上手に「その人」を描く作家、というイメージを著者に持っていたから過度に期待してしまったかも。 「自由ゆえの不自由」とか「男(主人公)が抱くイメージと女(他者)の現実にはズレがある」という雰囲気もうかがえるから、わざとそう書いているとも読める。 けれど、主人公の一人称だからやっぱり「金と暇を持て余した面倒くさい男」に見えてしまう。 飛鳥時代の蘊蓄が延々と続くのが、興味のない身にはきつい。 戦後だし蘊蓄長いしで京極堂を連想してしまったのが敗因か。 あちらが人気講師の一般向け講演会だとしたら、こちらはオタク同士の会話。 有意義に感じられない上に、ついていけなくて所在ない。 のれれば面白いんだろうけど。 日本人とは文化とは日本固有の美がどうのみたいな右を警戒したくなる発想と、戦争や侵略や渡来人の血の話と天皇神話のうさんくささなど左を警戒されそうな話題とが混じり合っている。 というか混ぜたけど分離しているというか。 どうも「お前チョーセンジンだろ!」とか「ネトウヨうぜえ」とか言われたくなくてバランスをとってるつもりなのかなと思ってしまった。 最後まで読んだんだけど、結局なにを読んだのかよくわからない。

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2013/06/06

大東亜戦争の始まりで青春を失い、中国から復員船で日本に引き揚げてきた青年が、思わぬ出会いに導かれるように、日本の木地師文化の源流と日本古代史のタブーとなっている渡来人文化の接点を探っていく、、、 そうした縦糸に絡む横糸が、魅惑的な女性たちとの出会い。叔父の残した遺産のお陰で思わ...

大東亜戦争の始まりで青春を失い、中国から復員船で日本に引き揚げてきた青年が、思わぬ出会いに導かれるように、日本の木地師文化の源流と日本古代史のタブーとなっている渡来人文化の接点を探っていく、、、 そうした縦糸に絡む横糸が、魅惑的な女性たちとの出会い。叔父の残した遺産のお陰で思わぬ財産を手にした主人公が挑むのは、、、

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