憲法の創造力 の商品レビュー
憲法のいくつかのテーマをめぐるさまざまな問題がわかりやすく語られていて、納得できる内容ばかり。 ただ、「憲法とは?」とか、「憲法に何が書かれているか」というような内容ではないという点で、帯コピーの「入門書」というのは、ちょっとどうかと思うが。
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『憲法の創造力』というタイトルからは、どんな内容か想像がつかない。はしがき「憲法を創る」(ここにも”創る”と書かれているが)の「本書が目指すこと」の段落に、”憲法問題を考える際には、様々な角度から思考を巡らせ、苦境に置かれた人々の状況に想像力を働かせなければならない。また、その解決のためには、多くの人の納得が得られるような公平なルールを創造することが求められる。”と書かれていて、どうやら憲法の理解のもとに公平なルールを創造することらしいと思うが、まだピンと来ない。しかし、君が代起立問題など具体的な論点を読み進めていくと、「憲法の創造力」ということがより具体的にわかってくる。 今までニュースなどの報道を聞いて、どう考えたらいいのか分からないとか、どうも釈然としないと感じていたことが、よく整理されて理解でき、この本を読んでとても良かった。日本的多神教についても、よくまとめられていると感じた。 特に、興味深かったのは、「生存権保障の三つのステップ」の章で、ここで述べられている三つのステップは、職場環境についてもいえることだと感じた。職場でも「最低限」はこの三つのステップを含むと考えるべきだ。 短い解題のついた文献案内が付されている。 取り上げられている論点 1.君が代不起立問題 2.一人一票 3.裁判員制度合憲の条件 4.政教分離 5.生存権 6.公務員の政治的行為 7.生存権 8.憲法9条
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とっつきにくいはずの憲法をここまで噛み砕いて説明できる筆者の才能に敬意を表します。 合理的思考での最高裁判決への批判にはなるほどと納得させられます。最高裁はなんでそんな筋が通らないことをするんでしょうか? 判例主義も思考停止の一形態だと思うので、法律関係者には柔軟な思考を求めたい...
とっつきにくいはずの憲法をここまで噛み砕いて説明できる筆者の才能に敬意を表します。 合理的思考での最高裁判決への批判にはなるほどと納得させられます。最高裁はなんでそんな筋が通らないことをするんでしょうか? 判例主義も思考停止の一形態だと思うので、法律関係者には柔軟な思考を求めたい。 わかりやすかったので、他の法律関係の一般書も読んでみようと思います。
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残念ながら「思わず膝を打つ!」とか「目からウロコが落ちる!」という感じではありませんでしたが、所々興味深い論述はあります。 ・君が代の斉唱強要は「そうまでしないと斉唱を確保できないほど指示の弱い国歌だ」という印象を与える(P.45) ・裁判員制度は憲法16条の「苦役」にあたる...
残念ながら「思わず膝を打つ!」とか「目からウロコが落ちる!」という感じではありませんでしたが、所々興味深い論述はあります。 ・君が代の斉唱強要は「そうまでしないと斉唱を確保できないほど指示の弱い国歌だ」という印象を与える(P.45) ・裁判員制度は憲法16条の「苦役」にあたる(P.114) ・日本的多神教では数ある神を場当たり的に利用することができ、宗教利用が生じやすい(P.134)
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ピアノ伴奏拒否事件を、校長による女性教員へのパワハラと捉える。校長の君が代斉唱ピアノ伴奏拒否による女性教員への戒告処分は、思想良心の自由の侵害として捉えない。むしろ、憲法14条の、すべて国民は、法の下に平等であつて、信条(略)により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別され...
ピアノ伴奏拒否事件を、校長による女性教員へのパワハラと捉える。校長の君が代斉唱ピアノ伴奏拒否による女性教員への戒告処分は、思想良心の自由の侵害として捉えない。むしろ、憲法14条の、すべて国民は、法の下に平等であつて、信条(略)により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない、という差別されない権利の侵害と捉える。私は妥当と思う。校長はただの嫌がらせ、個人の思想強制を、権力を用いて怠惰なやり方で行っているにすぎない。治安維持法と同じだ。歴史は繰り返される。
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木村草太氏の憲法入門書。君が代の不起立問題・一票の格差問題などなどホットな話題から、日本人の宗教観・憲法9条などの根深い問題までさまざまな課題を扱っている。一見関係ない無駄話のように見える話題が導入に書かれており難しい憲法の話題にすんなりと入っていけた。 団体とは、要するに、共通の「ルール」に従う「人の集まり」である。「ルール」と「人」の二大要素のうち、「ルール」は頭の中にしかないが、「人」は目に見えるし、触ることもできる。団体の「正体」を、「ルール」だと見るのが擬制説、人間という「実在」だと考えるのが実在説だが、団体の「正体」などという怪しげなものを観念する必要はなくて、擬制説と実在説は同じものを右から見るか左から見るかの違いにすぎない、と評価するのが筆者の立場である。 経験により検証できない性質の事実認識を「宗教」と呼ぶのである。 ボーアの蹄鉄 ある人が宗教を「信じていない」といったからといって、その宗教を行動の前提としていないとは限らない。 などなど参考になる文章が多数
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憲法改正問題が取り沙汰されている中、平易で読みやすく、現実的な問題を憲法を通じて解説してくれる良著だと感じた。作者を変えて、何冊か読み、自分なりの考えを持つべきなのだろう。 著者は引用する。憲法は終わりの無い仕事であると。 自衛権の行使以外に武力を行使してはならない、というのは...
憲法改正問題が取り沙汰されている中、平易で読みやすく、現実的な問題を憲法を通じて解説してくれる良著だと感じた。作者を変えて、何冊か読み、自分なりの考えを持つべきなのだろう。 著者は引用する。憲法は終わりの無い仕事であると。 自衛権の行使以外に武力を行使してはならない、というのは、憲法第9条以前に、現在国際法の大原則である。9条の内容というのは、それが守られるような、国内外の状況を作っていかなければならない、という意義そのものなのだと。 現在の憲法があるのが当たり前のように感じているが、その存在意義を改めて考えることは、現在の国の成り立ちを考えることでもある。
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最近、注目を浴びている若き憲法学者の著書。 『キヨミズ准教授の法学入門』(星海社新書)がとても読みやすく、取っつきやすい作品だった事から興味を持ち、本作も読んでみました。 各章ごとに事例を挙げながら、憲法に照らし合わせた際にこれはどう解釈されるのかを丁寧に説明してくれます。解釈に...
最近、注目を浴びている若き憲法学者の著書。 『キヨミズ准教授の法学入門』(星海社新書)がとても読みやすく、取っつきやすい作品だった事から興味を持ち、本作も読んでみました。 各章ごとに事例を挙げながら、憲法に照らし合わせた際にこれはどう解釈されるのかを丁寧に説明してくれます。解釈については実際の判例・判決に沿っている為、実用性も抜群です。 また導入部に当たる話がとても面白く、著者の実体験を元にしているのか映像が目に浮かぶ様なものが多く、小難しい話を敬遠しがちな方にもお勧めです。
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最近何かと喧しい「憲法」周辺。この本は特に改憲の是非に議論を絞ったものではないが、憲法をめぐる諸問題に触れながら、国家のあり方を議論するうえでのベースとなる考え方のいくつかを示してくれている。 この本の特徴としては、君が代不起立問題や公務員の政治活動等の憲法上の問題について重要...
最近何かと喧しい「憲法」周辺。この本は特に改憲の是非に議論を絞ったものではないが、憲法をめぐる諸問題に触れながら、国家のあり方を議論するうえでのベースとなる考え方のいくつかを示してくれている。 この本の特徴としては、君が代不起立問題や公務員の政治活動等の憲法上の問題について重要なファクターを抽出し、これをより卑近な例に置き換え、その場合に生ずる不都合からより根源的な論点を照射する方法が多く取られていること。例えば、 ・君が代を否定する思想をもつ公務員にその斉唱を強要する行為と、ベジタリアンに肉を強制的に食べさせる行為との違いは何か? ・公務員が職務時間外に政治活動をするのを禁止すべきというなら、より政治色の強い行為である「選挙権の行使」も禁止すべきなのか? といった具合。全て納得できるわけではないが、なかなか分かり易い。 私も「そんなの国や自治体から給料もらってんだから当たり前だろう」と安易に考えていたが、そのように短絡的な思考では見落とす部分が沢山あることを思い知らされた。 なお、終章で少しだけ9条に触れているが、安倍の改憲論を精神論呼ばわりしている。ある程度肯けるのだけど、それをいうなら本書の「9条が日本の非武装を選択できるための世界の創造を要求する」という主張もかなりナイーヴな精神論なのではないかと思ったりもした。
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憲法の入門書。 なぜか、章の冒頭に時々同級生の「トミナガ」が登場し、ユニークなエピソードが披露される。これに引き込まれ本論は法律解釈の専門的な議論から離れ、一般常識を使った想像力により、法律の解釈を創造するというアプローチ。 もちろん、判例や通説も紹介されており、独善的な内容ではない。憲法にこんな考え方もできるのか、と新鮮な気持ちになった一冊。
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