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昨日までの世界(上) の商品レビュー

3.8

45件のお客様レビュー

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2017/01/19

201701/ グドールが観察したのは、子供たちにバナナを与える遊びである。その遊びでは、まず、子供たちの前に、一房のバナナがおかれる。その房には、ひとり一本のバナナがいきわたるように、十分な数のバナナがついている。この遊びでは、子供たちが一番大きなバナナを取り合うということは...

201701/ グドールが観察したのは、子供たちにバナナを与える遊びである。その遊びでは、まず、子供たちの前に、一房のバナナがおかれる。その房には、ひとり一本のバナナがいきわたるように、十分な数のバナナがついている。この遊びでは、子供たちが一番大きなバナナを取り合うということはしない。それぞれの子供が自分のバナナをふたつに切って、一切れを自分で食べ、残りの一切れを別の子供に差出し、その子供から一切れをもらう、ということをするのである。そして、最初の半分の一切れを食べ終わると、残りの半分をまた二つに切って、その一切れを自分で食べ、残りの一切れを別の子供に差出し、その子供から一切れをもらう。子供たちはこのやりとりを五回繰り返すので、バナナの大きさは八分の一、十六分の一とだんだん小さくなっていき、最後の最後には、三十二分の一という小さな切れ端になる。そして、最後にそうなったとき、子供は三十二分の一切れを自分で食べ、残りの一切れを別の子供に差出し、その子供がその三十二分の一切れを受け取って食べるのである。つまり、この、儀式ごっこの遊びは全て子供の教育と訓練の一環だった。ニューギニアの子供たちは、この儀式ごっこの遊びから、自分が得することではなく、みなで分け合うことを学ぶのである。/

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2015/07/10

ニューギニアなどの伝統的社会のあり方を類例に、現代社会の価値判断を問いかけていく。 「文明崩壊」「銃・病原菌・鉄」に比べると落ちるが、それなり以上に面白い。 上巻のラストは高齢者が大切にされない米国社会への愚痴で締め。ウザい。

Posted byブクログ

2015/06/07

「銃・病原菌・鉄」で著名な生物学者が、研究のために定期的に訪れるニューギニアでの生活をもとに、伝統的社会と工業化社会との広範囲かつ詳細な比較を通して、現代社会が抱える課題と解決策を提示した大作。 著者は、我々が常識として受け容れている文化や生活様式が、実は人類の長い歴史から...

「銃・病原菌・鉄」で著名な生物学者が、研究のために定期的に訪れるニューギニアでの生活をもとに、伝統的社会と工業化社会との広範囲かつ詳細な比較を通して、現代社会が抱える課題と解決策を提示した大作。 著者は、我々が常識として受け容れている文化や生活様式が、実は人類の長い歴史からすれば「つい最近」作られたものであり、 人類が圧倒的に長い時間を過ごしてきた「昨日までの世界」における人間関係、紛争解決、リスク回避、宗教、子育て、高齢者対策の中に、「今日の世界」が物質的豊かさと引き換えに抱えた新たな社会問題を解決するためのヒントがあると主張する。 ともすれば産業化が遅れた「未開の地」として片付けられがちな伝統的社会に光を当てつつ、それらを手放しで賞賛するような単なる懐古主義に終わらない点は、著者の非常に幅広く学際的な研究領域によるところが大きいと思われる。やや冗長な表現も多いが、時空を超えて視野を広げることができるスケールの大きな作品。

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2015/04/13

銃・病原菌・鉄 の作者 ジァレド・ダイアモンド の新作 ニューギニアを調査し、文明の源流と人類の未来を考える 子育て、高齢者への対応 嬰児殺し、敬うか、遺棄するか、殺すか? 伝統的戦争と国家戦争

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2020/07/15

かなり内容の濃い本だった。筆者の基本的なスタンスとして、とことんまで事実を調べて、それと比較が出来る別の事象までも集めてきて、細かすぎるまでに徹底的に論理的に検証を進めている、ということが伝わってきて、どの話も、とても説得力が有る。 扱っているトピックも、戦争や、子殺し、賠償、な...

かなり内容の濃い本だった。筆者の基本的なスタンスとして、とことんまで事実を調べて、それと比較が出来る別の事象までも集めてきて、細かすぎるまでに徹底的に論理的に検証を進めている、ということが伝わってきて、どの話も、とても説得力が有る。 扱っているトピックも、戦争や、子殺し、賠償、などどんな小さな村や社会にもあるような普遍的で、かつ生々しい、根源的な事柄を取り扱っていて、どれも人間の本性について考えさせられる興味深い内容ばかりだった。 いかに自分が、自分の育ってきた世界の価値観に染まりきっているかということがよくわかる。 世界には様々な価値観があって、その間に優劣はないし、どれが絶対的に正しい常識ということもない。 自分がもし、日本とは違う国や、今とは違う時代に生まれ育っていたら、まったく違う常識や判断基準を持ち、したがって、今の自分とはまるっきり違う人間になっていただろう。 たとえばもし自分が「子供への体罰は良くないことだ」という価値観を持っていて、それに絶対の自信を持っていたとしても、それは自分が熟考を末によってそういう価値観にたどりついたわけではなく、前提として、自分が育った環境の価値観をストレートに受け継いでいる。 【興味深かった話し】 ピマ族やナウル島人には飛び抜けて糖尿病の人が多い。 肥満になりやすい体というのは、エネルギーである脂肪を体に蓄積出来るということで、飢餓の状況での生存に有利なので、周期的な飢餓にさらされていたピマ族では、そういう体質の人が多く生き残った。皮肉なことに、それらの人が急速に文明化して、日々の食べ物に困らなくなった途端に、一気に糖尿病によって死ぬ人が激増してしまった。

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2015/02/01
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※このレビューにはネタバレを含みます

さすがジャレド・ダイアモンド…と、唸らせる内容。 伝統文化と近代文化の対比による、現代社会の問題点への指摘と対策、決してユートピアではない伝統文化の在り方を、滑らかな筆致で読ませる。下巻を読むのが楽しみ。

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2014/07/19

子どもと高齢者だけじっくり読み。今の生活に生かす気づきを得られたかっていうと微妙だけども、子育てについて、直感も大事にしよう、と感じた。情報に振り回されやすいけど、親子ともに、心穏やかに安らかに過ごしたいし、そのためには常識と思われることでも息苦しそうだったらとっぱらっていいんだ...

子どもと高齢者だけじっくり読み。今の生活に生かす気づきを得られたかっていうと微妙だけども、子育てについて、直感も大事にしよう、と感じた。情報に振り回されやすいけど、親子ともに、心穏やかに安らかに過ごしたいし、そのためには常識と思われることでも息苦しそうだったらとっぱらっていいんだな、と。本の感想なのか、って感じだが。

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2014/02/22

 興味深かったのは、ニューギニアで交通事故を起こした場合の調停の部分。  使用人として事故を起こした場合は会社が責を負い、すべて対応するのは当たり前ですが、報復殺人を避けるために代理人を置いてわずか5日程度で調停が終了する。代理人は被害者・加害者とは別の部族のものが行い、ほぼ1...

 興味深かったのは、ニューギニアで交通事故を起こした場合の調停の部分。  使用人として事故を起こした場合は会社が責を負い、すべて対応するのは当たり前ですが、報復殺人を避けるために代理人を置いてわずか5日程度で調停が終了する。代理人は被害者・加害者とは別の部族のものが行い、ほぼ1回の調停で賠償額(Sorry Money)を決め、報復殺人が行われないと確信した時点で被害者・加害者ともに葬式が行われた。もし個人で起こしてしまった場合には、加害者の村・親類縁者が賠償することになる。  このような状態になっているのは、現代社会において事故など発生しても当事者同士がかかわることはまずないが、ニューギニアでは反対に一生関係を持ち続ける可能性があるからだ。  マオリ族の遠隔地戦争を支えたのが、従来栽培されてきたサツマイモではなくて、ヨーロッパからもたらされたジャガイモで、それは生産性が高かったから。  マオリ族の一部の部族がマスケット銃を得て、ほかの部族を滅ぼしていったが、ほかの部族にもマスケット中が行き渡った結果、武力紛争は終結した。現代もあまり変わらない。

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2014/01/30

高知大学OPAC⇒ http://opac.iic.kochi-u.ac.jp/webopac/ctlsrh.do?isbn_issn=9784532168605

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2014/01/27
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

著者のフィールドであるニューギニアの暮らしはいわゆる「未開」の社会(伝統的社会)ではあるが、我々が暮らす現代社会は10万年近い人類史から見るとほんの一瞬に過ぎない。農耕が始まる1万1000年前までは狩猟採取の生活であったし、国家の成立もたかだか5400年前。必ずしも伝統的社会はよいことばかりではないが、と断りつつも全体に伝統的社会に対するノスタルジアを感じさせる内容。 ・西洋社会は個人主義であり、他人との競争が中心になっている。伝統的社会は個よりも集団としての振る舞いが重要になる。個人がおこした不祥事の後始末もコミュニティ全体でけりをつけるし、その際はこれまでのコミュニティ同士の貸し借りの精算も行なわれる。 ・食料などが十分にはない社会では高齢者の口減らしが行なわれることも多い。口伝に頼らなくとも知識が伝えられるようになった現代社会でも「老人の知恵」はさほど必要とされてはいないが孫を育てる手伝いなどをする。 ・子育てなどは親以外の人々(アロペアレント)が介入し、子育ての責任は社会全般で共有される。 体罰はしない社会とする社会とがある。一般的に、狩猟民族は子供に対する体罰を行わないが、牧畜民族などでは行なわれる。これは家畜のように希少な共有在を持つ社会では子供の間違った行動によって大きな損失を招く可能性があるからなのだろう。 授乳期は長く、両親と行動を共にすることも多く、アロペアレントによって多くの社会モデルを目にし、スキンシップも多い。こうしたことがよりよい人間に育つ原因である、とややノスタルジックな見方がされる 復讐心や戦争は人類のDNAに刻み込まれているのだろう

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