使者と果実 の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
大戦前の満洲国ハルピンで出会ったある男女の物語が語られる。ヨーロッパの香りのする優雅な街並みと暮らし、全編に流れるクラシック、忍び寄る軍靴の足音、ヴェネチアの貴婦人と呼ばれるチェロ、いろいろな要素の混じった非日常が美しい描写とサスペンス混じりにページを捲る手が離せませんでした。タダシが悠一に語った晩年の物語が悲しかった。ヴェネチアの貴婦人の次の時代の行方に悠久の時を感じた。このチェロはずっと昔から人々の喜び悲しみ怒り憎しみ、あらゆる感情を見ながらまた未来にいろんな人と出会うのだろうと思うと一人の人間の一生の一瞬の輝きを思ってしまいました。雅行、奈津夫妻はどうなってしまったのか気になります。面白かったです。
Posted by
哀しい話だ。タダシはブエノスアイレスで彼女の幻影と暮らしていたんだ。彼女は来なかった。いや来れなかったんだ。チェロは彼女の代わりだった。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
素晴らしい恋愛小説だった。 時代を行きつ戻りつしながら、そして満州、ベルリン、ブエノスアイレスという土地を交えながら、その時代や場所をを横断するように存在するチェロとそれに寄り添うタダシ。マゴエもまた、この歴史に埋もれてしまうような一つの小さな恋愛を記憶するものとして重要な証言者となっている。 秀逸だったのは、ただしと奈津の恋愛がもちろん主題なんだが、そこにチェロがあるということだ。300年存在していたチェロが。このチェロは様々な人々に触れられてきたんだろう。そして、タダシが死んだ後、このチェロの物語は悠一に受け継がれる。物語の終盤、ペネロペとの淡い恋物語が始まる予感を読者に感じさせるのだ。 一つの恋に生きたタダシ。輝かしい官吏としての将来も、奈津との素晴らしい未来も得ることができなかったのは、チェロを盗んだ罪か、それとも時代のせいか。奈津と雅之の顛末に全く触れていないところがさらに素晴らしい。雅之との人生を選んだのか、無理矢理雅之に連れられ、終生タダシのことを想いながら生きたのか... 音楽も様々な場面で重要な役割を果たしている。古城が一つ買えてしまうというほどのチェロを盗むというミステリーを交えながら、繊細な文章で物語は進んでいく。 非常に面白い、そしていつかまた読み返したい本であった。 映画化されないかな。ベルリンの舞踏会でタダシと奈津が踊るシーンなんかは素晴らしいクライマックスになりそうだ。
Posted by
前作「野いばら」同様 目の前に映像が浮かぶ文章 興味深い時代背景もちりばめられて 切ない恋に 心は乙女に・・・・・
Posted by
第二次世界大戦前夜のベルリンと、カラヤンのロンドンでの最後のコンサートの夜、そして2004年のブエノスアイレスを行きつ戻りつして、300年の年を重ねた一台のチェロとそれに関わる1組の男女の恋愛の物語。「二人は神に祝福されていた。自然の法則にのっとって響く和声のように、互いの響き...
第二次世界大戦前夜のベルリンと、カラヤンのロンドンでの最後のコンサートの夜、そして2004年のブエノスアイレスを行きつ戻りつして、300年の年を重ねた一台のチェロとそれに関わる1組の男女の恋愛の物語。「二人は神に祝福されていた。自然の法則にのっとって響く和声のように、互いの響きが違いを呼び寄せ合う完璧な恋人たちの姿は神の祝福の対象だった」この一文で象徴されるが、悲劇の物語だ。柔らかい文体が特徴的だったけど、個人的な趣味にどんぴしゃな題材の選び方、時代を超える伏線の張り方は心地よかった。登場人物は少ないけれど、少ない登場人物のひとりひとりの物語にじっくりと言葉を費やしている。
Posted by
ノースリバーさんのご紹介で初めて知った本と作家さんでした。 ジャンルは甘くせつない恋愛小説。作者のお得意とされる分野のようで、初対面の私は感嘆するばかりでした。 2004年のブエノスアイレスで、日本人平悠一と友人ペネロペは、一人の日本人の老人の死に出会います。悠一はタダシと名...
ノースリバーさんのご紹介で初めて知った本と作家さんでした。 ジャンルは甘くせつない恋愛小説。作者のお得意とされる分野のようで、初対面の私は感嘆するばかりでした。 2004年のブエノスアイレスで、日本人平悠一と友人ペネロペは、一人の日本人の老人の死に出会います。悠一はタダシと名乗った老人から以前聞いた話を思い出していました。 それは、世界大戦の近づく1930年代に満州を起点としておこった許されない男女の恋とドイツ政府に寄贈すべき最上のチェロ「モンタニャーナ」の横領事件でした。 タダシはドイツにチェロを献上する特別指令(CCミッション)を受けていながら、大金持ちの人妻奈津と恋におち、任務jよりもそちらを選んだのでした。路ならぬ恋ゆえに苦しむ二人・・・やがて別れがきますが・・・ 悠一目線の現代とタダシと奈津目線の過去。 途中には奈津目線の日記文もあり、時代の確認に最初とまどいました。 が、後半、面白くなってきました。 一番印象深いのは、 やっぱり、ノースリバーさんご推奨のベルリンでのダンスシーンです。 笑顔でダンスをしながら、 奈津に身の危険を知らせ、逃亡計画を語るタダシ。 笑顔で受け答えながら、思案にくれる奈津。 果たして奈津はタダシの誘いに応じてくれるのでしょうか。 ・・・このあたり、最後まで読者を引っ張っていってくれました。 恋愛小説でありながら、謎に満ちた老人の死から始まり、 スパイもどきの逃亡劇もあり、 お宝級のチェロの行方も謎のままとされていますので、 ちょっとミステリーっぽい感じも受けました。 個人的には、 甘いだけでない、スリル感ある恋愛ものは大好きです。 タダシと奈津の思い出には果実がでてきます。 気のせいか作品全体から、 気高く甘酸っぱい果実の香りがしてくるようでした。
Posted by
第二次大戦を目前としたハルビンで繰り広げられる、男女の愛の物語。結末は予想がついたけれど、整った肌理の細かい文章で心地良く読めた。
Posted by
- 1
