星に降る雪 の商品レビュー
親友を喪った二人の男をそれぞれ描く中篇集。 表題作と「修道院」では喪い方の違いか、辿ってきた道も行く先も異なってて「修道院」の方が好みでした。 啓示を受けるために人界から離れていく表題作の田村はよくわからなかったけれど、贖罪のために礼拝堂を再建し、でも新たに重ねた罪を償うために再...
親友を喪った二人の男をそれぞれ描く中篇集。 表題作と「修道院」では喪い方の違いか、辿ってきた道も行く先も異なってて「修道院」の方が好みでした。 啓示を受けるために人界から離れていく表題作の田村はよくわからなかったけれど、贖罪のために礼拝堂を再建し、でも新たに重ねた罪を償うために再び彷徨うミノスの生のほうが苦しく静謐としています。 2篇とも女性陣は立ち入れないけれど、それでもエレニには救済があったし。クレタ島の穏やかな風景も好きでした。
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【いちぶん】 忘れるな、思い出せと言ってらっしゃるのかもしれない。そのお伝えをあんたがくじいた足で運んだんだ。苦労して歩くことにはいつだって意味があるんだ。
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・かつて人は夢を見ることができたし、夢を交換することもできた。星からのメッセージを間違いなく聞き取ることができた。だからそのメッセージを土台にして作られた昔の宗教は本当に人を救う力を持っていたし、人はどんな暴力の中にあっても救いを信じることができた。今はそうじゃない。今はなにもかも駄目だ。 ・これでいいんだ。 ずっと気づかないまま、おまえはこれを待っていた。そういうことだった。 この啓示の準備のためにあの雪崩はあった。メッセージはこういう形で届けられる。それを待て、とあの雪崩はまず予告として伝えた。だから今夜、誰かに誘われるようにここまで出てきた。この星空に会いに来た。 やがてもっと明快なメッセージが来る。 それを待てばいいんだ。
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内容(「BOOK」データベースより) 電波天文台カミオカンデ。チェレンコフ光が燦めく様を夢想する男、田村のもとに、かつて雪山事故を共にした亜矢子が訪ねてくる。恋人を失った女と親友を失った男。あの時、何が起こったのか―(「星に降る雪」)。クレタに住みつき、礼拝堂の修復をしながら寡...
内容(「BOOK」データベースより) 電波天文台カミオカンデ。チェレンコフ光が燦めく様を夢想する男、田村のもとに、かつて雪山事故を共にした亜矢子が訪ねてくる。恋人を失った女と親友を失った男。あの時、何が起こったのか―(「星に降る雪」)。クレタに住みつき、礼拝堂の修復をしながら寡黙で質素な生活を送る石工。重い過去を背負った男の選んだ償いとは(「修道院」)。激しい懊悩に取り憑かれた男が生の中に見出した、奇妙な熱情を描く、精緻な中篇集。
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「スティルライフ」と同じムードと聞いたので読んだ。確かに!と色めき立ちつつ読んだが、結局後味は全く違った。「スティルライフ」に女性が登場すると本作になるという感じ。女性というか、「わからない」第三者というか。 通じ合う者同士で完結していた「スティルライフ」の方がやはり静謐で美的に...
「スティルライフ」と同じムードと聞いたので読んだ。確かに!と色めき立ちつつ読んだが、結局後味は全く違った。「スティルライフ」に女性が登場すると本作になるという感じ。女性というか、「わからない」第三者というか。 通じ合う者同士で完結していた「スティルライフ」の方がやはり静謐で美的に映った。
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ちょっと辛い評価になってしまったが、「星に降る雪」という標題作に対するもの。敢えて★とした。 というのは、私には、この中篇小説のよさが理解できなかったから。中途半端に★★★や★★とする理由が見つからなかった。 意図したところは理解できた。文体には三人称が採用され、主人公ら3人を客観的に描こうということはわかった。 そうして、雪崩れで死んだ親友・恋人が、星になったという童話めいた話が登場する。そのことを確かめるために、2人は性交する。そういった話。 この中篇は、本当にそこで終わっている。でも、主人公の男性は彼女に対して欲情することができなくて、別れる。そうして、野辺山、神岡を経て、アタカマへと向かうという結末。 一体、どこに視点を置いて読めばよいのかが、私には理解できなかった。恐らく意図して描写は最小限に削られている。具体的な地名は登場するが、描写は素っ気ないもの。 いわゆる濡れ場にしても、リアリティを伴っていないし、女性が語る遍歴?にしても陳腐さを感じる。イタリアの手品師と、そんなに情熱的な恋をした、というなら、もっと違った描き方もあろうと。それほどに、激変したというのか。 と、読めば読むほど、私には理解できない世界が開けて行く作品だったとしか言いようがない。
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そういう世界もあるんだなということを本を読むだけでも知ることができる(現実にあるかはともかくとして) 池澤さんの作品は「キップをなくして」しか読んだことがないので「スティル・ライフ」とかも読んでみようと思う。
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表題作と「修道院」という二つの中編を収録。どちらも、親友の死に対峙する心を描いたものだが、非常にストイックな内容で読んでいて心が苦しくなる。
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もっと大自然の中での雄大なおはなしを想像していたら、中編二篇とも一貫してけっこう男女の微妙で繊細、時には大胆な揺れ動きをえがいたものでびっくりした。星に降る雪、も良かったけれど、二篇目の修道院が最高。日本人以外を主人公に置くというのはそれなりに難しいだとはおもうけれども、そういっ...
もっと大自然の中での雄大なおはなしを想像していたら、中編二篇とも一貫してけっこう男女の微妙で繊細、時には大胆な揺れ動きをえがいたものでびっくりした。星に降る雪、も良かったけれど、二篇目の修道院が最高。日本人以外を主人公に置くというのはそれなりに難しいだとはおもうけれども、そういった国籍とかを全く超越した神話性と現実味を合わせた異色なおはなし。こういう側面もあるのか、と改めて池澤夏樹の底しれなさというか、根のなさみたいなものに触れて、本って面白いなあと感じた。
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親友の死を経験したことで、いつでも死が間近にあることに改めて気づく。 あの世とこの世の境が曖昧になったような感覚を体験する。 そんな主人公のお話。
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