悪意の手記 の商品レビュー
中3で難病に罹り、治癒したあとも虚無感にかられた主人公が、かつての親友を池に突き落として殺す。(周囲にはバレず被害者の自殺として処理) その葛藤を抱えたまま東北の大学に進学するが退学。バイト先の喫茶店の女店主が抱えている復讐の計画に加担する日々を描いた手記、という体裁の小説。人の...
中3で難病に罹り、治癒したあとも虚無感にかられた主人公が、かつての親友を池に突き落として殺す。(周囲にはバレず被害者の自殺として処理) その葛藤を抱えたまま東北の大学に進学するが退学。バイト先の喫茶店の女店主が抱えている復讐の計画に加担する日々を描いた手記、という体裁の小説。人のアタマの中はいかにして腐るのか、という観察をするには良いが共感ゼロだった。
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なぜ人を殺してはいけないのか、ということ以外にも、世の中にはなぜ、と思うようなことはたくさんある。結局のところ誰しもが納得できる理由なんてないのだけれども、自分の中の道徳的感情やまわりの人の存在によって考えはまとまるのだと思う。比較的サクッと読めた。
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至に至る病に冒されたものの、奇跡的に一命を取り留めた男。生きる意味を見出せず全ての生を憎悪し、その悪意に飲み込まれ、ついに親友を殺害してしまう。だが人殺しでありながらもそれを苦悩しない人間の屑として生きることを決意する―。人はなぜ人を殺してはいけないのか。罪を犯した人間に再生は許...
至に至る病に冒されたものの、奇跡的に一命を取り留めた男。生きる意味を見出せず全ての生を憎悪し、その悪意に飲み込まれ、ついに親友を殺害してしまう。だが人殺しでありながらもそれを苦悩しない人間の屑として生きることを決意する―。人はなぜ人を殺してはいけないのか。罪を犯した人間に再生は許されるのか。若き芥川賞・大江健三郎賞受賞作家が究極のテーマに向き合った問題作。
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人を殺した事はない。 でも過ちから逃げた事はある。 そんな過去に苛まれ、頭を掻きむしりたくなる時もある。 誰しも心にそういった傷があるのではないか。 この本は、そんな自分自身の心の傷を煽ってくる。そして主人公と同化していく。 僕も彼ら側なのだろう。
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絶版だったからメルカリで購入。 正直中村文則は純文学でもかなり名のある作家だと思っていたから絶版作品があること自体びっくりした。 こういう自分にひたすら内向的な純文学は読後感になんとも言えない心地よさがあって内容の重さ暗さ関係なくとても好き。あと個人的にはあとがきが一番心に残った...
絶版だったからメルカリで購入。 正直中村文則は純文学でもかなり名のある作家だと思っていたから絶版作品があること自体びっくりした。 こういう自分にひたすら内向的な純文学は読後感になんとも言えない心地よさがあって内容の重さ暗さ関係なくとても好き。あと個人的にはあとがきが一番心に残ったかも。 中村文則のなかでもかなり位置づけられた作品じゃないのかなってあとがき読んでて思った。 作家デビューしてまもない初期の作品らしい。 実は中村文則はこれまで3冊しか読んだことなくて掏摸と王国、あとは土の中の子供なんだよね。 掏摸と王国の世界観、圧倒的な力を持った悪とそれに立ち向かう個っていう構図がすごい好きで、とくに悪に対してどうしようもなく無力である個や底なんて決して見えないほどの悪の描かれ方がめちゃくちゃよかったんだよね。 とくに救いのあった王国はかなり好きだった。 ……ってこれは作品の感想じゃない笑 読み終わってすぐに思い浮かんだデジャブのようなイメージで太宰治の人間失格が思い浮かんだ。 純文学でもいろいろジャンルがあると思うんだけど、こういう一人の人生をひたすら追ったものはとても読みやすいし、人におすすめしやすいと思う。 内容の暗さ、というか扱っているテーマが重いから軽々しく人におすすめできるものではないけれど。 個人的に蛇を踏むはマジで何がしたいかわからないやつだし、最近だとニムロッドとかあとぶっちゃけ小川洋子も何がしたいかよくわからないんだよね。 純文学でも個の世界観がその作者にしか描けないものが好き。あー、火花もよかった。 現代の名作のひとつとしてカウントしていいと思うな。なんか教科書に載せるのは憚られるけど、人間失格みたく語り継がれてほしいな。
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少年は悪魔なのか、それとも心を殺して悪魔になりたかっただけなのか。 何度読んでも新たな気づきがある本
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罪を犯した人間はその後どう生きればいいのだろうか。個人的には償う方法などないのだと思う。なので本作の主人公のように真正面から罪に向き合う人間は生きていけないほど苦悩するし、何事もなかったかのように日常に戻る人間は根本から何かが違っているのだろう。 人はなぜ人を殺してはいけないのか...
罪を犯した人間はその後どう生きればいいのだろうか。個人的には償う方法などないのだと思う。なので本作の主人公のように真正面から罪に向き合う人間は生きていけないほど苦悩するし、何事もなかったかのように日常に戻る人間は根本から何かが違っているのだろう。 人はなぜ人を殺してはいけないのか。 このように出口の見えない苦悩に通常人間は耐えなれないから。それがこの問いに対する一つの答えだと思いました。
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手記の書き手である私は、十五の時、酷い病気をします。八〇%が死に至る、という病でした。私は死の恐怖から逃れるため、生それ自体を否定し、全てのものを憎悪するようになります。しかし、死を覚悟していた状況から、私は助かりました。 その後、私は退院しますが、憎悪が私の中の大切な何かをひ...
手記の書き手である私は、十五の時、酷い病気をします。八〇%が死に至る、という病でした。私は死の恐怖から逃れるため、生それ自体を否定し、全てのものを憎悪するようになります。しかし、死を覚悟していた状況から、私は助かりました。 その後、私は退院しますが、憎悪が私の中の大切な何かをひねり潰しており、虚無を感じます。死ぬことも考えていました。 そんな頃、私はロープで首を吊って死のうとS公園に行き、なぜか親友だったKに出会います。そして、Kを池の中へ突き落とし、殺してしまいます。 私は“人殺しであるという事実を受入れながらも、それに苦悩しない人間になること(p59)”を目指します。 でも、私は悪魔になりきれず、悩み、苦しみ続けていました。 それでも、どんな自分でも最後まで抱えていくしかないのだと、最後は力をもらえました。
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彼は悪をまっとうに生きたと思いました。これで償ったんだという意識に逃げずにいつまでも自分の悪を纏い続けていました。そんな彼をみていると、罪を償うという行為に果てはないのだと感じました。
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