戦前日本の安全保障 の商品レビュー
戦前、特に両大戦間期の日本の安全保障構想はどうだったかってのを山県有朋、原敬、浜口雄幸、永田鉄山の四人をあげて検討する。 全体の説明がくどいぐらいのところがあって、そこはおつむのそんなよくないおれには理解するのにありがたい。 明治末の山県有朋は欧米列強による中国分割を避けて保全し...
戦前、特に両大戦間期の日本の安全保障構想はどうだったかってのを山県有朋、原敬、浜口雄幸、永田鉄山の四人をあげて検討する。 全体の説明がくどいぐらいのところがあって、そこはおつむのそんなよくないおれには理解するのにありがたい。 明治末の山県有朋は欧米列強による中国分割を避けて保全しつつ、日本の影響化におこうと目論んでいた。また、日英同盟が空洞化し日米関係が悪化するにつれて日露同盟の道を模索する。1916年の第四次日露協約では開戦した場合の軍事援助の密約があった。しかしロシア革命で帝政ロシアが崩壊し、日露協約は破棄され密約が公表されると日本は国際的に孤立した。 第一次大戦期、山県有朋ら藩閥官僚勢力と対抗した原敬は、米国の国力や中国への影響力を考慮して、多少の犠牲を払っても米国と協調すべきと考えていた。また、大隈内閣の二十一カ条要求やら何やらで中国のみならず列強からも野心を疑われ孤立していたところ、援段政策をやめ、新四国借款団へ加入するなど対米英協調に切り替えた。また、米のなすがままにならないようアジアにおいて米英のキャスティングボートになろうとの構想を持っていた。米のなすがままにならないようにという点では集団安全保障機関としての国際連盟にも期待をしていて、強制手段としての武力行使ができるよう兵力分担に応える義務があると考えていた。 昭和初期の浜口雄幸は、原内閣以来の国際協調を重視しつつ、満蒙政策については国民政府による統一を容認する姿勢だった。九カ国条約などに示すような多国間協調のもと統一された中国が発展すれば日本の発展にもつながるとの考えからだった。また、戦争を違法とした国際連盟の次期大戦防止、東アジアの平和のために重視し、軍縮にも積極的に対応しようとしていた。自国の軍事力による抑止よりも国際連盟、ワシントン軍縮条約、九カ国条約、不戦条約などの多層的多重的な条約網による戦争抑止システムを重視した。 これも昭和初期の永田鉄山は一夕会のメンバーで、統制派の指導者となる。彼はヨーロッパ滞在中の第一次大戦の経験から戦争が総力戦になり、政治経済関係の複雑化から世界大戦が誘発されると考えていた。そこから総動員態勢の構築、資源の自給、工業の発展、軍備の近代化を目指した。それが満州事変、華北分離工作へと繋がった。 戦前日本の指導者たちの世界戦略から現代日本が学べることは多いと思う。
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山県有朋、原敬、浜口雄幸、永田鉄山の安全保障構想についてそれぞれ述べられ、比較している。 比較が適切かと言われれば、なかなか難しいが、この手の切り口で、わが国の戦前の安全保障について、歴史を元に述べられているのは珍しい。個人的には、面白かった。
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川田稔『戦前日本の安全保障』講談社現代新書、読了。戦前日本の歩みとは、日露戦争での辛勝を例証するまでもなく、国際社会における安全保障と切っても切り離せない。本書は、山県有朋、原敬、浜口雄幸、永田鉄山を取り上げ、主として戦間期における安全保障構想と国際秩序認識を考察する。 当時国是は、大陸権益を維持しつつその拡大が一貫。しかしそのアプローチは多様で驚く。山形はロシア協調、原は軍事協同から経済へシフトすることで協調外交を模索するが、国力の差が濱口の課題として重く立ちはだかる。多国間軍縮もその一つ。 著者は本書で取りあげるキーパーソンについて個別に論じており、本書はその入門的概観といってよい。外交・安全保障について戦前・戦後と「分断」の認識と捉えがちだが、今日に通底する側面も存在する。現在を考える上で押さえてべき一冊か。
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永田鉄山の現状認識は恐いくらい正確。でも、不可避な戦争に国家総動員で立ち向かうべく中国の資源を確保する(そのためには領有も辞さない)しかなかったのだろうか。。
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山県有朋,原敬,浜口雄幸,永田鉄山の四人を軸に,WWIからWWII前夜にかけての日本の安全保障構想を見ていく。特に山県と原,浜口と永田の間で国際関係をどう眺めるかという視点の違いが際立つ。著者はこれまでにもこの四人についての著書を何冊もものしているようで,各人の思想についての深...
山県有朋,原敬,浜口雄幸,永田鉄山の四人を軸に,WWIからWWII前夜にかけての日本の安全保障構想を見ていく。特に山県と原,浜口と永田の間で国際関係をどう眺めるかという視点の違いが際立つ。著者はこれまでにもこの四人についての著書を何冊もものしているようで,各人の思想についての深い洞察が感じられる。 パワーポリティクスの視点と国際連盟に期待する平和協調の視点のせめぎ合いは,少し前に読んだ『国際秩序』でも強調されていたが,本書でもそれを確認することができた。ただ満蒙地域の重要性は原,浜口といえども否定できなかったことに当時の日本を考える上で簡単でないものを感じた。 しかしまあ山県を除く三人は非業の最期を遂げてるんだよね。いやな時代だよほんと。
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さすが、川田さんという感じ。 欲を言えば、もっと史料引用を原文でしてほしかった(新書という性格上、仕方ないかもしれませんが)
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