百年の手紙 の商品レビュー
「手紙は個人の心情を綴るものでありながら、書かれた時代を鏡のように映し出す。もっともプライベートな文章が、激動の時代にあっては、貴重な歴史の証言となるのである。」(あとがきより) 「時代の証言者」「戦争と日本人」「愛する者へ」「死者からのメッセージ」の4章からなる本書。 ふたりと...
「手紙は個人の心情を綴るものでありながら、書かれた時代を鏡のように映し出す。もっともプライベートな文章が、激動の時代にあっては、貴重な歴史の証言となるのである。」(あとがきより) 「時代の証言者」「戦争と日本人」「愛する者へ」「死者からのメッセージ」の4章からなる本書。 ふたりとも大正生まれだった亡き父母が話してくれた事に重ね合わせながらひとりひとりの手紙を読了。 「どんな状況にあっても、死ぬほど辛いと思っても、人間死ぬまでは生きなきゃいかん」 世界中が混沌としてる今だからこそ、先人たちの姿勢に学ぶ事や気付くことも多く、私にも「必要なことばたち」でした。
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有名人から一市井の人までいろんな人がいろんな人に宛てた手紙が紹介されています。 一つの手紙がだいたい2ページほどで紹介されているのですがそれぞれの重みがずっしり。 恋文から遺書まで、シチュエーションはいろいろですが、人間の想いがこんなに凝縮されているのは手紙ならではでしょうか。ほ...
有名人から一市井の人までいろんな人がいろんな人に宛てた手紙が紹介されています。 一つの手紙がだいたい2ページほどで紹介されているのですがそれぞれの重みがずっしり。 恋文から遺書まで、シチュエーションはいろいろですが、人間の想いがこんなに凝縮されているのは手紙ならではでしょうか。ほっこりしたり胸が締め付けられたり…。 いろんな方にお勧めしたい本です。
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手紙の一部、著者の大事だと思ったところのみ引用。できれば何らかの形で全文がわかるとよいのだが、著作権とか新書媒体の形式などで無理なのだろう。それでも十分日本近代の人々がどう考え行動してきたかがすべてではないにせよ読み取れる。そしてやはり戦争関係が一番考えさせられる。「生きのびるた...
手紙の一部、著者の大事だと思ったところのみ引用。できれば何らかの形で全文がわかるとよいのだが、著作権とか新書媒体の形式などで無理なのだろう。それでも十分日本近代の人々がどう考え行動してきたかがすべてではないにせよ読み取れる。そしてやはり戦争関係が一番考えさせられる。「生きのびるための岩波新書」の一冊に選ばれており、その中では読みやすい本だとは思うが、かなり重い内容を含む本。
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岩波「図書」6月号に、梯さんは若松英輔との対談の中でこう言っている。「手紙でも日記でも原稿でも、手書きの資料や遺品には時間が蓄積している。たくさんの人の人生の時間です」。ましてや、手紙は相手に届けられるまでが大仕事であり、しかもそれが他の人が目にすることができるまで多くの想いが蓄...
岩波「図書」6月号に、梯さんは若松英輔との対談の中でこう言っている。「手紙でも日記でも原稿でも、手書きの資料や遺品には時間が蓄積している。たくさんの人の人生の時間です」。ましてや、手紙は相手に届けられるまでが大仕事であり、しかもそれが他の人が目にすることができるまで多くの想いが蓄積されるのである。 この新書は、2011年の7-8月、そして翌年の同月に地方新聞に連載された。作家、政治家、無名の兵士、女性の20世紀の百年間の手紙が百通選ばれている。 2011年、書かれた年のこともあり、原発事故を告発しているようだとも言われた田中正造の天皇への直訴状から始まり、大逆事件で死刑執行を覚悟している菅野すがの幸徳秋水の冤罪を訴える手紙、逮捕虐殺される前日の伊藤野枝が関東大震災で夫の妹の子供が行方不明になっているのを心配した手紙。これらは著者が現代との相似性を訴えているのは明白だが、抑えた筆致で簡潔に書れていて、読者の胸を打つ。また、宮沢賢治は昭和三陸地震の後、近況を心配してきた友人宛に返事をしたためる。つい最近見つかった書簡だ。「被害は津波によるもの最も多く海岸は実に悲惨です。私どもの方、野原は何事もありません。何かみんなで折角、春を待っている次第です」岩手県内陸部の花巻市は、2011年もそんな状況だった。 7-8月、書かれた月のこともあり、戦場から、又は戦場へと書かれた手紙も多く採用された。映画監督山中貞雄の遺書の一節「『人情紙風船』が山中貞雄の遺作ではチトサビシイ。負け惜しみに非ず」『人情ー』は戦前が産んだ大傑作だと私は思っている。戦争は残酷だ。『硫黄島 栗林中将の最期』は梯の代表作だが、それとは別に市丸利之助少将が部下の腹巻きに持たせ死んだ時にルーズベルト大統領に届くようにした書簡がある。冷静に戦況と米国の戦術を批判した、同等の立場からの手紙である。それが米国では直ぐに報道されて、今は彼の国の博物館にある。岸壁の母のモデルになった母親に宛て息子の手紙がある。「我慢できずに川に向かって、母さん、母さん、母さんと三回も大きな声で呼びました」。ところが2人は養子縁組みの関係だったとは、初めて知った。昭和天皇から11歳の皇太子への昭和20年9月の手紙がある。「敗因について一言いはしてくれ」と書き、かなり冷静な分析をした後、「(終結を決断したのは)戦争をつづければ、三種の神器をまもることも出来ず、国民をも殺さなければならなくなったので、涙をのんで、国民の種をのこすべくつとめたのである」。著者は「歴史的な書簡」と評価している。 もちろん、ラブレターも友愛の手紙も数多く紹介される。手紙がおおやけになるまで、多くの時間と人の手が費やされている。それを私たちに見事に手渡してくれた著者の名は梯(かけはし)久美子という。
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「あとがき」から引用 本書は、2011年の7月から9月、および翌年2012年の同時期に、東京新聞と中日新聞に連載した「百年の手紙」がもとになっている。 連載が始まったのは東日本大震災から4カ月しか経っていなし時期であり、震災後の状況が、特に第1章の内容には色濃く反映されている...
「あとがき」から引用 本書は、2011年の7月から9月、および翌年2012年の同時期に、東京新聞と中日新聞に連載した「百年の手紙」がもとになっている。 連載が始まったのは東日本大震災から4カ月しか経っていなし時期であり、震災後の状況が、特に第1章の内容には色濃く反映されている。 ひとりの市民として、また文章を書いて発表する立場の人間として、どにょうに考え行動すればいいのか。そんな迷いの中で、近い過去を生きた日本人のことばに手がかりを求めようとする自分がいた。いま起こっていることを正しく見つめるために、時をへてなお色あせることのない、血の通った先達のことばを切実に求めていたのだと思う。 となっていて、内容ですが Ⅰ 時代の証言者たち 1権力にあらがって 2かららが見た日本 Ⅱ 戦争と日本人 3戦場の手紙 4女たちの戦争 5敗戦のあとさき Ⅲ 愛する者へ 6恋人へ 7妻・夫へ 8親から子へ 9友情のことば Ⅳ 死者からのメッセージ 10夭折者たち 11遺書と弔辞 あとがき 明治維新から昭和の戦争まで激動の時代のなかの日本人が遺した数々のメッセージ、真摯に読み進めました。
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タイトルに惹かれて思わず買ってしまった。 田中正造の天皇への直訴に始まり、昭和天皇から皇太子へ宛てたもの、大河内清輝くんの遺書など、20世紀の百年間に日本人が書いた様々な手紙を百通あまり取り上げたもの。 戦時中に書かれた手紙が多かったが、最も印象に残ったのは、慶応義塾大学の塾長を...
タイトルに惹かれて思わず買ってしまった。 田中正造の天皇への直訴に始まり、昭和天皇から皇太子へ宛てたもの、大河内清輝くんの遺書など、20世紀の百年間に日本人が書いた様々な手紙を百通あまり取り上げたもの。 戦時中に書かれた手紙が多かったが、最も印象に残ったのは、慶応義塾大学の塾長を務めた小泉信三が長男信吉に出征時に手渡した手紙。 「吾々両親は、完全に君に満足し、君をわが子とすることを何よりの誇りとしている。僕は若し生れ替わって妻を択べといわれたら、幾度でも君のお母様を択ぶ。同様に、若しもわが子を択ぶということが出来るものなら、吾々二人は必ず君を択ぶ。人の子として両親にこう言わせるより以上の孝行はない。君はなお父母に孝養を尽したいと思っているかも知れないが、吾々夫婦は、今日までの二十四年間の間に、凡そ人の親として享け得る限りの幸福は既に享けた。親に対し、妹に対し、なお仕残したことがあると思ってはならぬ。今日特にこのことを君に言って置く」 出征する子が親に書く手紙は比較的よく目にするが、親が子に向けたものは珍しいのではないだろうか。
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尾崎秀実の言い回しを借りると、 戦争は人としてどうしても必要なのかもしれませんが、人をけっして幸福にはしない。 愛は人を幸福にはしないかもしれませんが、人としてどうしても必要です。 ・・というようなことを感じた。
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先月だったか。谷潤こと、作家・谷崎潤一郎の未公開書簡 288通が見つかったとのニュースがあった。妻・松子夫人 やその妹と交わした書簡だと言う。 作家の全集にはほぼ1巻、書簡集がある。購入すると真っ先に 手にするのがこの書簡集だ。日記と共に、手紙はその人の 生活を覗き見する楽しみ...
先月だったか。谷潤こと、作家・谷崎潤一郎の未公開書簡 288通が見つかったとのニュースがあった。妻・松子夫人 やその妹と交わした書簡だと言う。 作家の全集にはほぼ1巻、書簡集がある。購入すると真っ先に 手にするのがこの書簡集だ。日記と共に、手紙はその人の 生活を覗き見する楽しみがある。 20世紀の日本人が遺した100通の手紙を元にして綴られた エッセイが本書だ。 手紙の内容とそれが書かれた時代背景、人物等について、それ ぞれ2~4ページでまとめられている。 これは時代の証言としての資料ではないだろうか。先の大戦で 戦地から家族へ送られた手紙は勿論だが、政治家が妻になる 女性へ送った熱烈なラブレターもある。 本書で一番の衝撃だったのは大逆事件で収監された管野すがが、 幸徳秋水の為に弁護士を探して欲しいと新聞記者へ依頼した 手紙だ。 出獄する女囚に頼んで投函したのだろうと著者が推測する 手紙に文字はない。しかし、光にかざすと紙面には小さな 穴が開いている。秋水を助けたい。その激しい思いが、 ひとつひとつの穴に込められている、哀しい手紙だ。 田中正造の明治天皇への直訴状、昭和天皇と香淳皇后から 疎開中だった今上天皇への手紙、いじめによって自殺する しかなかった大河内清輝くんの遺書。 有名・無名を問わずに掲載された手紙は、それぞれに心を 打つものがある。 インターネットが発達し、手紙よりもメールのやりとりが 多くなった。それでも、数少ない親しい友達には年に数回、 近況報告の手紙を出す。 本書には収録されていないが、野口英世の母・シカさんの 手紙など、手書きで書かれた文章はメールとは違った人間味 を感じる。
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読んでよかった。 実は本屋で探しても見つからなかったので、図書館で借りた本です。 でも読み終えて、これは手元に置いておくべき本だと思いました。 20世紀の100年の、著名人から一般の人まで、いろんな人のいろんな状況での手紙を紹介。 でも、その手紙を書いてからまもなく亡くなった人...
読んでよかった。 実は本屋で探しても見つからなかったので、図書館で借りた本です。 でも読み終えて、これは手元に置いておくべき本だと思いました。 20世紀の100年の、著名人から一般の人まで、いろんな人のいろんな状況での手紙を紹介。 でも、その手紙を書いてからまもなく亡くなった人のが多かったかな……。 足尾銅山鉱毒事件の田中正造や、芥川賞が欲しかった太宰治、他にも特攻で亡くなった人のや、サハラ砂漠で亡くなった人、いじめを苦に自殺した中学生の遺書など、ホントに様々な手紙をこの一冊で見ることができます。 でも、21世紀が終わって、誰かが梯さんと同じように「百年の手紙」という本を作ろうとしても、もう無理なんじゃないかって気がする。 だってもうメールの世の中で、手紙を書く人って激減したと思うから。 メールだって残るけど、機種変したら見れなくなって、充電器とかもどんどん変わってくから、誰かが不意に「遺されてたのを見つけた」って状況には、もうならないんじゃないかと……。 寂しいなあ。
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歴史好きの後輩からオススメされた本。 現代までの100年の間にかかれた手紙を有名無名問わず集めたアンソロジー。 田中正造から、原敬の妻から、特攻隊員から太宰治などなど時代も職業も全く違う人たちの本物の言葉。 勿論作者が抜粋、編成したのであって、多少の思惑や誘導はあるとは思う。...
歴史好きの後輩からオススメされた本。 現代までの100年の間にかかれた手紙を有名無名問わず集めたアンソロジー。 田中正造から、原敬の妻から、特攻隊員から太宰治などなど時代も職業も全く違う人たちの本物の言葉。 勿論作者が抜粋、編成したのであって、多少の思惑や誘導はあるとは思う。戦時中の検閲から逃れるために、書きたいことが書けない状態にあるものもある。 それでもやっぱり心揺さぶられるのは、手紙という、自分の気持ちを伝えたい相手に正直に伝えられる道具で、大切な人たちに思いを伝えているから。 面と向かって会ったりすると、中々ここまで正直には言いづらいですもんね。 人というのは時代が代わっても、同じ間違いを繰り返すこと愚かな生き物だなぁと思うのと同時に、思いは変わらないんだなぁと改めて気づかせてくれる、そんね素敵な本だと思います。
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