サイフォンの科学史 の商品レビュー
灯油ポンプやコーヒーサイフォンなどに用いられている『サイフォンの原理』。その歴史は古く、2000年以上も人類が使い続けてきた。そんな身近なサイフォンだが、その作動原理については「大気圧によって水が動く」という誤った説明が350年間も普及していた。著者はサイフォンの新しい説明<鎖モ...
灯油ポンプやコーヒーサイフォンなどに用いられている『サイフォンの原理』。その歴史は古く、2000年以上も人類が使い続けてきた。そんな身近なサイフォンだが、その作動原理については「大気圧によって水が動く」という誤った説明が350年間も普及していた。著者はサイフォンの新しい説明<鎖モデル>を紹介するとともに、過去の文献を紐解き、大気圧説の起源はどこか、どのように広まったか、なぜ誤った説が広まったかを解き明かした。その過程は推理小説のようでスリルがある。原理は誤っていながらも広く利用されてきたサイフォンは、「技術が科学」に先行した例としても面白い。その応用も、タンタロスのコップ、囲みサイフォン、自動式サイフォン、管なしサイフォンなど興味深いものばかりである。 また著者はサイフォンの事例から我々が学べることとして、以下の4点を挙げる。 ①論理的に考えたことは正しいという保証はない ②実験をくり返していくことでしか、本当のことはわからない ③実験の背後にどういう仮説を持っているのかが決定的だ ④本当のことを明らかにするには、いろんな考え方をする人が必要だ
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「サイフォンは大気圧で動いているのではなかった!!」 理科に強いと思っている人ほど「真空ではサイフォンは動かない」と思っているのではないでしょうか。 本書は,一高校教師が,サイフォン研究の歴史を原書でたどりながら,解明していった「サイフォンの研究科学史」です。 著者が調査...
「サイフォンは大気圧で動いているのではなかった!!」 理科に強いと思っている人ほど「真空ではサイフォンは動かない」と思っているのではないでしょうか。 本書は,一高校教師が,サイフォン研究の歴史を原書でたどりながら,解明していった「サイフォンの研究科学史」です。 著者が調査していった順に論が展開されているため,とても臨場感のある読み心地のいい文章になっています。これも,アマチュア研究家だからこそできた「文章展開」なのかも知れません。 サイフォンの歴史を見ると「論理的に考えたからといって正しいとは言えない」ことがよくわかります。 本書の後半半分は,仮説実験授業の授業書になっています。サイフォンを「水分子の鎖」で見ていく,とてもたのしい授業ができるようです。
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