55歳からのハローライフ の商品レビュー
身につまされて、やるせなくて、しかし少し救いがあってホロっとさせられる小説集、村上龍の『55歳からのハローライフ』 50代後半の熟年層を主人公にした5つの中編小説からなる。 「普通」の人々の話。といっても今の日本の普通ってのはひとくくりにできない。 1.結婚相談所 熟年離婚...
身につまされて、やるせなくて、しかし少し救いがあってホロっとさせられる小説集、村上龍の『55歳からのハローライフ』 50代後半の熟年層を主人公にした5つの中編小説からなる。 「普通」の人々の話。といっても今の日本の普通ってのはひとくくりにできない。 1.結婚相談所 熟年離婚した女性がお見合いをする。世の中には色々な男がいる。 傷ついたり、癒したり よりを戻そうとする元夫 「私たちは、別の人生がはじまると、別の人間になる」 「人生でもっとも恐ろしいのは、後悔とともに生きることだ。孤独ではない」 2.空飛ぶ夢をもう一度 「人は案外簡単にホームレスに転落する」 ホームレスになった中学の時の同級生をなぜか面倒みる。死ぬ間際に・・・どういう風に。 主人公はリストラされ、道路工事の誘導員をやっている還暦前の男。自分自身「不安だらけで・・・生きるのが苦しい」しかし「生きてさえいれば、またいつか、空を飛ぶ夢を見られるかも知れない」 3.キャンピングカー 早期退職して、キャンピングカーで日本中を妻と二人で廻ろうと考え、内緒で計画し、妻に言った・・・ 「ハローワークで、ふいに裸にされたような気がした」 「たとえ夫婦や親子でも、その人固有の時間というものがあって、それは他の人間には勝手にいじれないものなんです」 「庇護」と「従属」に慣らされてきた日本のサラリーマンには、それがなかなか受け入れられない。 そして、精神的にちょっとおかしくなる。でも・・・ 4.ペットロス 犬が飼い主に呼ばれてくるのは、そこに「信頼」があるから。 冷たい夫 愛犬の死 でも「夫婦だからだ。何十年いっしょに暮らしていると思ってるんだ」・・・夫は何を分かっているのか。 5.トラベルヘルパー 還暦を過ぎて単身の元トラックドライバー なんと古本屋で50歳前後の魅力的な女性と知り合い、デートを重ねる。さあどうなるのでしょう。 そしてトラベルヘルパーとは何なんだろう。
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5編からなる短編集。55歳を過ぎた富裕層未満中間層以上、中間層、貧困層と言う経済的背景の5人の男女が主人公。 第一話の結婚相談所は、会社人間だったが、会社をリストラされた夫と離婚した女性が主人公。女性は、結婚相談所に向かいますが、高齢者の結婚の難しさを知ります。相談員の「金があ...
5編からなる短編集。55歳を過ぎた富裕層未満中間層以上、中間層、貧困層と言う経済的背景の5人の男女が主人公。 第一話の結婚相談所は、会社人間だったが、会社をリストラされた夫と離婚した女性が主人公。女性は、結婚相談所に向かいますが、高齢者の結婚の難しさを知ります。相談員の「金があってしかも性格的にまともな男はとっくに誰かといっしょになっているんじゃないの」と言う言葉が、結婚相談所の夢のあるようなキャッチフレーズとのギャップを感じました。別れた旦那の未練がましさ、納得できないけど、男として分かる所も。でも、こんな性格だからリストラされたのかな。 第二話の空を飛ぶ夢をもう一度、身体的、経済的理由から派遣社員で働かざる得ない男の話。献身的な妻が唯一の救い。職場の工事現場で、学生時代の旧友と会い助けを求められる。利害関係で言ったら、友達を助ける義理はないのだが、友人の願いを聞き届ける主人公の必死の行動が涙を誘う。 第三話のキャンピングカーは、会社を早期退職して、キャンピングカーで妻と旅をしたい男の話。妻の言う自分の時間は大切だとおもう。高齢男性の再就職の厳しさがよく描けています。 第四話のペットロス。夫との関係にうんざりして、夫の反対を押しきり犬を飼う妻の話。最初は、嫌みばかりの夫だったけど、ペットの病気をきっかけに、不器用ながらも、妻とペットを気にかける夫が、良いなと思いました。口では心地よいことばかり言うが何もしない人。逆に無口だけど、いざと言う時に何かをしてくれる人。どちらが良いだろう。夫の不器用な優しさが良い。 最終話のトラベルヘルパーは、トラック運転手が、清楚な女性と出会い、恋をする話。最後に新たな希望を見つけられて良かった! 全話とも、深い話で良かった!
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若い頃40歳ってのはすごい大人だと思った、そして50歳なんてのは全く想像もつかない未知の領域であったわけだが… いざ自分がその近くまで来て気付くのは消耗品としての肉体の衰えや社会的責任という無責任な評価などの弊害はあるものの内面的には「なんも変わっちゃいない」ってこと、だから焦る...
若い頃40歳ってのはすごい大人だと思った、そして50歳なんてのは全く想像もつかない未知の領域であったわけだが… いざ自分がその近くまで来て気付くのは消耗品としての肉体の衰えや社会的責任という無責任な評価などの弊害はあるものの内面的には「なんも変わっちゃいない」ってこと、だから焦る。 離婚や失業などつまらないものを経験した立場から言わせてもらえばなかなか鋭い斬り込み方をしてると思う。赤い下着に羞恥しつつ婚活パーティーに出掛ける女性、堕ちた友人の尊厳を守るため一歩を踏み出す男性…リアルすぎる世界だったな。 本の主題は再スタートへのエール、そしてそのきっかけは何気ない処に落ちている
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【Entertaiment】55歳からのハローライフ/村上 龍/20140301 (20/195) ◆きっかけ ・日経新聞紹介 ◆感想 ・人生の折り返し地点をとうに過ぎて、定年後再出発を果たそうとする中、体力が弱り、経済的不安定で、しばしば老いを意識せざるを得ない状況で、いか...
【Entertaiment】55歳からのハローライフ/村上 龍/20140301 (20/195) ◆きっかけ ・日経新聞紹介 ◆感想 ・人生の折り返し地点をとうに過ぎて、定年後再出発を果たそうとする中、体力が弱り、経済的不安定で、しばしば老いを意識せざるを得ない状況で、いかにサバイブして、その後の人生を安定的なものにしていくか、が課題。重い。憂鬱。リアリティあふれ、かつドラマチックでもある。 ・その切り口としては、①再婚、②貧困、③再就職、④伴侶、⑤老いらくの恋等々。 ・少なくとも健康でなければならない。しかし、それだけでなく、経済的安定もなければ、とおも思う。しかし、それでも不十分、それまでにどんな人とどんな形で信頼関係を気づき、仲間がいるか、そしてその仲間と何を一緒にでき、何を自分は貢献できるか、ということが大切。 ◆引用 ・自分の人生を選べる人は限られている。しかし、自分はどんな人生をいきようとしているのかを考えている人と、まったく考えない人だと、ずいぶん違う。 ・誰にでも辛いときがある。精神的に不安定になったとき、まずは飲み物をゆっくりと味わうことができれば、どんな人も気持ちが鎮まるはず。 ・男がおばさん化する=守りに入るから。 ・本当に大切なことは、本当に大切な人にしか話せ
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5話の短編集。どれも50代半ばを主人公にした人生折り返しの時期の物語で熟年離婚した女性の結婚相談所に絡む話。リストラされた男性の派遣生活、上場企業を早期退職した男性の再就職への道、子供が結婚後に犬を飼う女性そして犬の死、トラック運転手の中年の恋。どれも切ない展開で、よほど裕福じゃ...
5話の短編集。どれも50代半ばを主人公にした人生折り返しの時期の物語で熟年離婚した女性の結婚相談所に絡む話。リストラされた男性の派遣生活、上場企業を早期退職した男性の再就職への道、子供が結婚後に犬を飼う女性そして犬の死、トラック運転手の中年の恋。どれも切ない展開で、よほど裕福じゃないと悠々自適に暮らせない現実が待っていると言う未来が見えた話が殆どで切なくなりました。
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副題には「Llfe Guidance for the 55-year-olds and all triers」とある「55歳からのハローライフ」の英訳なのだろうが、この題名はよくない。誤解を生んでいると思う。著者には「13歳のハローワーク」というベストセラーがあるので、てっきり中...
副題には「Llfe Guidance for the 55-year-olds and all triers」とある「55歳からのハローライフ」の英訳なのだろうが、この題名はよくない。誤解を生んでいると思う。著者には「13歳のハローワーク」というベストセラーがあるので、てっきり中高年からの再就職活動の小説かと思うのである。それに似た話も一編あるのだが、テーマはそこではない。いわば「55歳からの再出発日記」なのである。となれば、「再出発日記」というブログを立ち上げていて、そういう年代になってしまっている私には、とても切実で共感出来る話ばかりになっていた。 2014年3月13日読了
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元新聞連載の中篇小説集。図書館で、少し前にリクエストが多かった本のコーナーでたまたま手にして借りたのだけど、思いがけず掘り出し物だった。同世代で、共感とまではいかないけど、何となく心情がわかる主人公たち。丁寧に描かれた心の機微。どれも味わい深い読後感だった。
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あまり村上龍さんの作品は読まないのですが、この本には自分世代の近い将来の姿が描かれているようです。こたろうさん、ムーミン2号さんのレポを読みながら、読んでみたいと思っていました。 ●結婚相談所 ●空を飛ぶ夢をもう一度 ●キャンピングカー ●ペットロス ●トラベルヘルパー ...
あまり村上龍さんの作品は読まないのですが、この本には自分世代の近い将来の姿が描かれているようです。こたろうさん、ムーミン2号さんのレポを読みながら、読んでみたいと思っていました。 ●結婚相談所 ●空を飛ぶ夢をもう一度 ●キャンピングカー ●ペットロス ●トラベルヘルパー 以上5編の短編・中編小説からなっています。 読後しての第一印象は、 じっくりと現実を感じながら最後まで読める小説ということです。 最初の話の「結婚相談所」は60歳間際の離婚した女性が再婚を考えて結婚相談所に通う話でした。女性も60歳ぐらいなら、お相手もそれぐらいの年齢。でも、こんなにも晩年の人生に対する考え方が女性と男性で違うとは・・・。おかしくあり、哀しくもあり。「定年離婚」が結構多いと聞きますが、そうなるわけがわかるような気がします。 定年後に家族との関係がぎくしゃくする「キャンピングカー」も、定年後の夫婦の過ごし方をどうするかで、夫婦の間の考え方の違いが明らかになる話でした。いつまでも夫の考えている通りの妻ではない、ということでしょうか。普段から常に、お互いのライフプランを話し合っておくべきだなと思いました。 「空を飛ぶ夢をもう一度」は、人生に破綻してホームレスになった同級生を故郷の母のもとへ連れ帰ってあげる男性が主人公です。定年後の預貯金や生活費、就職の不安を抱えながらも、友人を見捨てられない男性。自分自身がホームレスになりそうな恐怖と戦いながら、友に救いの手を差し伸べる姿に感動しました。 「ペットロス」はタイトル通り、熟年夫婦の家で可愛がられているペットが亡くなる話です。大切に育てて慈しんだペットが病死。喪失感でいっぱいの妻を見て夫のとった行動は、妻にはちょっと意外なものでした。 「トラベルヘルパー」では、60歳を過ぎたトラックドライバーの男性が一目ぼれをした同じ世代の女性の秘密を知ります。失恋の痛手のまま、故郷へ帰り、そこで、自分に出来ることを思いつきます。 無我夢中で生きてきて、「定年」年齢で迎えるとき、 人はどういう気持ちになるのか、リアルに具体的に書かれています。 仕事だけでなく、家族間においても、夫婦間においても。 痛いほどその状態がわかる話もあり、 決して小説の中だけではすまない現実感がありました。 熟年層世代にはとてもいい教訓本になると思いました。
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55歳の主人公が不幸な境遇ながらも、光を見いだし前に進んでいこうとする短編集。 定年前で孤独や貧困と対峙している人生は大変だと思うし、明日は我が身かも知れないし、読んでいて心寒くなる。また、この年の人でも、同じ様な、悩みや苦しみを抱えているとわかるが、悲しい様な、そんなに人は変...
55歳の主人公が不幸な境遇ながらも、光を見いだし前に進んでいこうとする短編集。 定年前で孤独や貧困と対峙している人生は大変だと思うし、明日は我が身かも知れないし、読んでいて心寒くなる。また、この年の人でも、同じ様な、悩みや苦しみを抱えているとわかるが、悲しい様な、そんなに人は変わらないんだなあ、感。 どうしたら良いだろうか、恐らくお金を貯めているだけではダメで、家族や仲間と良い関係を築くと言うことを大切にしたいと思う。
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山陰中央新報で読む。いずれの主人公たちも人生最後の転機に賭け、厳しい現実にさらされる。独りよがりの登場人物が多くて辟易しつつ、自分もその誰かに当てはまる気がする。
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