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政友会と民政党 の商品レビュー

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21件のお客様レビュー

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2023/12/11

民主党がまだ元気だった頃に、政友会を自民党に・民政党を民主党に見立てて二大政党制の在り方について論じた本(本文中に直接的な現代政党との比較こそないが、あとがきから自民・民主の二大政党制を念頭に置いているのは明らか)。 既得権益層の支持を背景に政局的に物事を推し進める政友会と、政...

民主党がまだ元気だった頃に、政友会を自民党に・民政党を民主党に見立てて二大政党制の在り方について論じた本(本文中に直接的な現代政党との比較こそないが、あとがきから自民・民主の二大政党制を念頭に置いているのは明らか)。 既得権益層の支持を背景に政局的に物事を推し進める政友会と、政策的見地から政治を進めようとするもその軟弱さから実施へ一歩踏み込めない、よしんば踏み込めたとしても転んでしまう民政党との比較は面白い。惜しむべきは民主党が政友会と民政党の悪いところを受け継いでしまっている部分か。そのせいで仮定が崩れて論点がぼやけてしまっている感は否めないかな。 ただ細かい部分は読む前の両党のイメージから逸脱した知見を得られて面白い。よく軍部に迎合して515事件と共に崩壊したとも言われるが、少なくとも226事件までは(部分的に協力することはあっても)完全に迎合していた訳ではなく、軍中央部と理性的な連携をとりながら物事を進める部分もあったのは新しい発見だった。国際連盟脱退は軍の方が驚いていたくらいだし。 それだけに226事件と日中戦争は軍の政治への関わり方を根底から覆してしまったのだなぁと実感。 一次資料にかなり当たっているので、各論に関しては面白く読めた。 しかし近衛文麿本当に余計なことしかせんな。

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2021/11/27

この段落、この章で何を説明したいのか、それを明確にせず歴史的文書や発言の引用を重ねていくため、戦前の日本の政治史はおろか、政友会や民政党についてなんら知識を持たない私は置いてけぼりにされたような気分になった。一度図書館か本屋で軽くページをめくってから、読むか読まないか決めると良い...

この段落、この章で何を説明したいのか、それを明確にせず歴史的文書や発言の引用を重ねていくため、戦前の日本の政治史はおろか、政友会や民政党についてなんら知識を持たない私は置いてけぼりにされたような気分になった。一度図書館か本屋で軽くページをめくってから、読むか読まないか決めると良い。 【この本を読もうと思ったきっかけ】 小説家・火野葦平の芥川受賞作『糞尿譚』が、戦前の北九州での政治模様を描いた作品であった。この小説に出てくる政友会と民政党を軽く調べてみた結果、この本が詳しく解説しているだろうと考えて読むことにした。 【他の本との繋がり】 Jack Snyderという国際政治学の教授が書いた『From Voting to Violence: Democratization and Nationalist Conflict』という本がある。この本は、民主主義化がまだ進んでいない国が民主主義化をしようと踏み切る際に戦争の可能性が高まるということを論じた本だ。日本の普通選挙化への歴史と政党、そして戦争までの細かい流れをこの井上寿一『政友会と民政党』で学習できたことは、Jack Snyderの唱える学説の理解にも繋がったといえる。

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2020/01/26

なぜ、戦争に突入してしまったのか、という問いの答えの一つに政党政治の失敗ということがあるのではないかと、ここ最近考えていた。この本で解説してあった戦前、特に昭和一桁の頃の政党政治や、選挙の状況を確認するに及んで、いよいよその思いを強くした。足の引っ張り合いをしている政党に嫌気が差...

なぜ、戦争に突入してしまったのか、という問いの答えの一つに政党政治の失敗ということがあるのではないかと、ここ最近考えていた。この本で解説してあった戦前、特に昭和一桁の頃の政党政治や、選挙の状況を確認するに及んで、いよいよその思いを強くした。足の引っ張り合いをしている政党に嫌気が差した国民が、軍部に期待してしまう様子がよくわかった。 誰か1人が決めるのではなく、時間がかかっても仕方ないから民主主義で行くのがベターなのだと再認識。

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2020/01/17

約100年前の日本政治に実現していた二大政党制から学ぶことにより、100年後の日本政治でなぜ二大政党制が実現しないのかを考察すべきなんだろうが、そもそも著者は二大政党制に否定的なようである。その理由については明確に述べられていないが、それは歴史学者である著者の専門外だからなのだろ...

約100年前の日本政治に実現していた二大政党制から学ぶことにより、100年後の日本政治でなぜ二大政党制が実現しないのかを考察すべきなんだろうが、そもそも著者は二大政党制に否定的なようである。その理由については明確に述べられていないが、それは歴史学者である著者の専門外だからなのだろう。これが歴史学者の限界と言ってしまえばそれまでなんだが。 同じ資本主義・自由主義陣営の米英では機能している二大政党制がなぜ日本では機能しないのか?それを日本人の国民性や文化に求めるのは容易いが、それでは社会科学とは言えないだろう。歴史から何を学び、現代にどう生かすのか、その接続性が問われているように感じた。

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2016/07/10

戦前、「憲政の常道」と呼ばれた、政友会と民政党の二大政党が交互に政権を担う時代があった。本書は、その時代を中心に、政友会、民政党それぞれの成立・展開・崩壊の軌跡を丹念にたどっている。 両党ともに外交政策は協調外交路線で共通度は高いのに、民政党は不戦条約に難癖をつけ、政友会はロンド...

戦前、「憲政の常道」と呼ばれた、政友会と民政党の二大政党が交互に政権を担う時代があった。本書は、その時代を中心に、政友会、民政党それぞれの成立・展開・崩壊の軌跡を丹念にたどっている。 両党ともに外交政策は協調外交路線で共通度は高いのに、民政党は不戦条約に難癖をつけ、政友会はロンドン海軍軍縮条約を「統帥権干犯」と非難するなど、お互いに党利党略による足の引っ張り合いを行うようになり、それが軍国主義的な時代の伏線となってしまうといった点は、現代の二大政党政治においても、大いに教訓となるものであり、本書は現代政治を考えるうえでも有益であると思われる。

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2016/05/16

戦前の政友会・民政党の2大政党制はなぜ崩壊したのか。そして、現在の日本の政党政治はどうあるべきか。歴史に教訓を求めるべきとの本書の主張は、副題に「戦前の二大政党制に何を学ぶか」にある通り。複雑な昭和戦前期の政治経済、そして外交情勢を念頭に置きながら、政党がどのような方向性を模索し...

戦前の政友会・民政党の2大政党制はなぜ崩壊したのか。そして、現在の日本の政党政治はどうあるべきか。歴史に教訓を求めるべきとの本書の主張は、副題に「戦前の二大政党制に何を学ぶか」にある通り。複雑な昭和戦前期の政治経済、そして外交情勢を念頭に置きながら、政党がどのような方向性を模索したのかをリアルに想像していくのは案外と難しい。2大政党のみが政治主体ではなく、官僚や軍部などの非政党の政治主体も同時に動きつつ、政党との距離も近くなったり遠ざかったりするからである。 以前、自分も昭和恐慌期の本を書いたとき、民政党の安達謙造が政友会との協力内閣構想が挫折したエピソードから書き始めた。昭和恐慌という経済危機の状況にあっても経済政策・外交政策ともに変えられなかった民政党の挫折が相当気になっていたからにほかならないのだが、本書を読んであらためてこの時代に何が可能だったのか、続く政友会内閣で何が政党政治の方向を誤らせたのかを考えてみる必要があるように思った。

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2015/06/04

政治史というよりは政党政治史と言った方が近い。「憲政の常道」における二大政党制と、5.15後における両党の模索を描く。 戦前の政党政治下でも多くの政策が実行された。日華関税協定による日華関係改善、ロンドン海軍軍縮条約の調印など。しかし、国内世論あるいは党利党略により憲政の常道=ワ...

政治史というよりは政党政治史と言った方が近い。「憲政の常道」における二大政党制と、5.15後における両党の模索を描く。 戦前の政党政治下でも多くの政策が実行された。日華関税協定による日華関係改善、ロンドン海軍軍縮条約の調印など。しかし、国内世論あるいは党利党略により憲政の常道=ワシントン体制から「逸脱」したのもまた政党であった。 膠着局面で天皇の威光に頼り、時には陸軍の主張に同調した。満州事変、5.15、2.26、国家総動員法、大政翼賛会への統合と、自滅していく。 普選後は政党が政治のアクターとして登場するため、政策決定における非合理的な部分—統帥権干犯問題や天皇期機関説/国体明徴声明事件—が増えて来る。その背景を知る上で刺激的な一冊である。また、演説の引用から当時の政治が浮かび上がり面白い。 ただ、この一冊で流れがわかるというものではない。陸軍の影響はやはり大き過ぎる。そして、この時代はとにかくアクターが多過ぎる。

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2014/09/03

二大政党制の限界がよくわかる 米国で二大政党制が成立するということは、それだけはっきりとした思想の対立があるということ。日本は所詮経済よければすべて良し、すると異なる政策を打ち出すのは困難。つまらない議論で足を引っ張りあうのが関の山。政友会を批判しながら議会政治、政党政治を自己否...

二大政党制の限界がよくわかる 米国で二大政党制が成立するということは、それだけはっきりとした思想の対立があるということ。日本は所詮経済よければすべて良し、すると異なる政策を打ち出すのは困難。つまらない議論で足を引っ張りあうのが関の山。政友会を批判しながら議会政治、政党政治を自己否定してしまう鳩山一郎のようなことは、今の国会でもよくあるように思う。 また二大政党が解党して大政翼賛会へ合流していく過程は恐ろしい。議員の各人は政党政治の大切さを信じつつも、大勢から距離を置くことを恐れたり、権益を放棄できずに、禁断の道を洗濯していってしまう。

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2014/01/26

戦前の二大政党、政友会と民政党を主軸に描く昭和史。 解釈に疑問を持つ点が無いわけでも無かったが、 個人的にはこれまで他書で触れたことのない観点で 昭和史を振り返ることができ、非常に有用であった。 内容も読みやすく、かつ納得がゆき、示唆に富んでいる。 帝国憲法の限界をもどかしく思...

戦前の二大政党、政友会と民政党を主軸に描く昭和史。 解釈に疑問を持つ点が無いわけでも無かったが、 個人的にはこれまで他書で触れたことのない観点で 昭和史を振り返ることができ、非常に有用であった。 内容も読みやすく、かつ納得がゆき、示唆に富んでいる。 帝国憲法の限界をもどかしく思う一方で、 大衆迎合主義に走り、党利党略にまみれ、方向を見失う政党と、 本質を見失い、過激なメディアに踊らされ、 熱しやすく移り気な民衆の構図は今も昔も変わらないと感じた。 題名は硬いが、オススメしたい一冊。

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2013/10/06

 2009年の民主党政権の発足も衝撃だったが、昨2012年の自民党政権の復活にもまた驚いた。  民主党の拙劣な政権運営や相次ぐ内部の軋轢はひどいものだったが、その後一年近くを経過すると、あの政権崩壊は民主党の愚かさだけではなく、もっと深い原因と理由があったのかもしれないとぼんやり...

 2009年の民主党政権の発足も衝撃だったが、昨2012年の自民党政権の復活にもまた驚いた。  民主党の拙劣な政権運営や相次ぐ内部の軋轢はひどいものだったが、その後一年近くを経過すると、あの政権崩壊は民主党の愚かさだけではなく、もっと深い原因と理由があったのかもしれないとぼんやりと思いつつ本書を手にとってみた。  本書は、戦前の「政友会と民政党」という二大政党が明治憲法体制のもとでどのような歴史経過をたどったのか詳細に追いかけている。  当時は「明治憲法体制」下にあったし、「宮中」や「陸海軍」などの有力な政治勢力が存在していたり、現在とはまったく違った世界だと思っていたが、本書の内容を読むと、まるで現在の「自民党」と「民主党」の姿を見るような思いをも感じた。  すなわち「自民党=政友会」、「民主党=民政党」である。  もちろん、「政党」という政治勢力であるから方針は紆余曲折もあるし、単純な比較はできないのは当然だろうが、日本人が「政党」という西洋から輸入した組織を運営する時の行動は、ひょっとして戦前・戦後という情勢の激変にもかかわらず、似てくるのではないかとも思えた。  しかし、本書はあまりにも歴史的出来事を詳細に追いかけている。  その事実を一つ一つ読みながら理解するだけでも大変であり、その内容は多くの示唆を含んではいるが、それを「政治文化」という観点から、わかり易い簡単な結論を出すまで進むことは困難である。  本書は、あとがきで「2009年の政権交代から3年後の今、眼前に荒涼とした政治の風景が広がる。…このような国民の政治心理はで既視感がつきまとう」と語る。  まさにそのとおりであるが、そういう内容の「解説書」のほうが求められているのではないかと思えた。  本書を読んで、日本の「戦前」と「戦後」が「政党政治」という観点からはどうやら「断絶」していたわけではないらしいが、その「連続性」をどう考えたらよいのかまではわからないという点に、ちょっと不満を感じた

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