なぜ豊かな国と貧しい国が生まれたのか の商品レビュー
賃金が高くて資本(石炭)が安いからこそ、人的資本を効率化する意味があり、イギリスにおける産業革命に繋がったという見解には納得。 過去はそうだった。未来はどうか。 この理屈だと生産革命は先進国にしか起こし得ない。 もう少し考えたい。
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経済史版の『銃・病原菌・鉄』だというのをどこかで聞いて興味を持った。短くまとまっていて、タイトルにも忠実。 制度や文化、地理的要素が背景として重要ではあるが、それより「技術変化、グローバル化および経済政策こそが、経済発展の直接的な原因であった」というのが本書の立場。そして出...
経済史版の『銃・病原菌・鉄』だというのをどこかで聞いて興味を持った。短くまとまっていて、タイトルにも忠実。 制度や文化、地理的要素が背景として重要ではあるが、それより「技術変化、グローバル化および経済政策こそが、経済発展の直接的な原因であった」というのが本書の立場。そして出発地点のわずかな差が、のちのち大きく響いてきたということも。 まずさいしょの分岐となるのが、産業革命への準備が整っていたかどうか。産業革命前夜、大航海時代にイギリス(とオランダ)は植民地との交易により経済を繁栄させ、商業・製造業の礎をつくった。都市化と農村工業化がすすみ、高賃金経済が教育の投資価値を向上させた。賃金が高いからこそ、割安なエネルギーと資本を使って賃金を節約するような技術が採用され、イギリスに産業革命が起こったのだと著者は説明する。 たとえばなぜアメリカ南部が奴隷に頼り、北部で工業化がすすんだのかも、これで説明できる。奴隷制を採用するかどうかに重要なのは、モラルではない。農業プランテーションが可能な南部では奴隷がワリに合い、北部ではワリに合わなかったからなのだ。 一方、サハラ砂漠以南のアフリカが産業革命の準備ができていなかったのは、「先進的な農耕文明」ではなかったことに原因があると説明される。先進的な農耕文明は、財産の保証、読み書きや計算の能力、官僚などさまざまなものを準備する。世界のおもな地域でこれらを準備できたのは、西ヨーロッパ、中東ペルシア、インドの一部地域、中国、そして日本のみであり、それらの国々は産業革命が生じうる状況にあった。 つぎの分岐となるのが、「工業化の標準モデル」。(1)内国関税の撤廃と輸送の改善により大きな国内市場を創出すること (2)対外関税を設定し「幼稚産業」をイギリスとの競争から保護すること (3)通貨を安定させ、事業に資金を供給する銀行を創設すること (4)技術の開発と受け入れを加速させるために大衆教育を確立すること の4つだ。北西ヨーロッパの各国は、これらを共通の政策としてイギリスへキャッチアップしたし、日本やロシアなどの後発工業国もこの4条件をじょじょに整えた。 3つめの分岐は「ビッグプッシュ型工業化」。先進国へ追いつくためにはジャンプが必要だ。それは製鉄所、発電所、自動車工場、都市等を同時に建設するという荒技を意味する。ソビエト、日本、そして台湾・韓国・近年の中国はそれぞれ独自のやりかたで、これらの計画をたて、実現を成し遂げた。 著者の説明はジャレッド・ダイアモンド的な娯楽読み物とちがって、学問の香りがする謙虚なものだ。わかりやすくはあるが、突飛な思いつきではない。そこがいいという人もいるし、結局どうなんだという人もいると思うが、自分にはたいそう相性がよかった。
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グローバル経済史の入門書。経済の発展、産業の発達におけるインセンティブの重要性を再認識した。また、この本を読んで改めて思ったのは、近世以降、特に近代以降の日本史は、世界史の中に位置付けて学ぶべきだということ。
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経済学的な観点から、豊かな国と貧しい国ができた歴史的な経緯を分析。労働力のコストや、資源へのアクセス…といった視点はなるほどと思わせるが、読み物としての面白さでこのテーマとなると、やはりジャレド・ダイアモンドがはるかに上。
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主張は一貫していて読みやすい。ヨーロッパ史観が排しきれていないように思えるものの、なぜアフリカが低成長のままか、など知りたかった&知るべきことが書かれていて満足。コンパクトにまとまっていて大学生とかが読むといいんじゃないかな。 まとめた http://bukupe.com/su...
主張は一貫していて読みやすい。ヨーロッパ史観が排しきれていないように思えるものの、なぜアフリカが低成長のままか、など知りたかった&知るべきことが書かれていて満足。コンパクトにまとまっていて大学生とかが読むといいんじゃないかな。 まとめた http://bukupe.com/summary/8334
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本書は、産業革命以降の多くの国々が高度な成長を獲得する中で、アフリカや南北アメリカなど成長に失敗した国の何が問題であり、どう違っていたのかを総括的に考察するという壮大なアイデア満載の本である。 「GDP」「労働者の生存費に対する所得比」「ロンドンと北京の実質賃金比」などの多く...
本書は、産業革命以降の多くの国々が高度な成長を獲得する中で、アフリカや南北アメリカなど成長に失敗した国の何が問題であり、どう違っていたのかを総括的に考察するという壮大なアイデア満載の本である。 「GDP」「労働者の生存費に対する所得比」「ロンドンと北京の実質賃金比」などの多くのデータを駆使しつつ、成長の過程を類推する手法は、合理的とも言えるし、それなりの説得力もあるが、本書は読みにくいとも感じた。 この読みにくさは、著者の論理にあるのか、それとも翻訳のせいなのか。 それぞれの国の経済成長が、各国の置かれた経済条件のみならず、文化的・歴史的条件に規定される以上、数字的データのみを持って、論理的に断定することは困難なのではないのかという疑問も持ったが、「グローバル経済」というものが既にこのような世界的考察をしなければならない段階になっているという現実を突きつけられるようにも思えた。 それにしても、本書の考察で目を引いたのが「アフリカの部族社会」と「日本のビッグプッシュ型工業化の終焉」である。 アジアの停滞ではかつて「儒教」の影響が語られたことがよくあったが、本書では、アフリカにおいては「国家は人種差別の排除には成功したが、部族性の排除はそれほどうまくいかなかった」と考察し、「アフリカがその歴史から逃れることは容易ではない」と結論する。 最近のアルジェの事件や不安定化するアフリカを見ると、グローバル化のもとで一層悪化するアフリカの政治情勢は、今後乗り越えることができるのだろうかとの疑問を持った。 また本書では「先進国は世界の技術フロンティアが拡大するのと同じ速さでしか成長できない。つまり毎年1.2%の成長しかできないということである」と断定している。 この結論は最近の別の「経済書」でも散見する見解である。それぞれ別のアプローチからの結論が一緒ということは、日本は今後「低い成長」を前提とした社会構成を目指さなければならないのだろうか。そうならば、安倍政権は「見果てぬ夢」を追いかけていることになるのだが。 本書は、読みにくさはあるものの、読者に多くのことを考えさせてくれる良書であると思った。
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第1章 大いなる分岐 第2章 西洋の勃興 第3章 産業革命 第4章 工業化の標準モデル 第5章 偉大なる帝国 第6章 南北アメリカ 第7章 アフリカ 第8章 後発工業国と標準モデル 第9章 ビッグプッシュ型工業化
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