赦す人 の商品レビュー
事実は小説より奇なりを地で行く、まるで大河ドラマを観ているかのような一冊。 一気に読みたいような、小出しに長く味わいたいような。 とにかく読んでみたい本が増えすぎて困る。。。
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いやあ、おもしろかったー。「破天荒」という言葉はこういう人のためにあるんだなあと、つくづく感じ入った次第。そしてまた「鬼才」の名にこれほどふさわしい人もそうはいないだろう。将棋を通じて親交のあった著者にしか書けないであろう、血の通った評伝になっていて読み応えたっぷりだ。 団鬼六...
いやあ、おもしろかったー。「破天荒」という言葉はこういう人のためにあるんだなあと、つくづく感じ入った次第。そしてまた「鬼才」の名にこれほどふさわしい人もそうはいないだろう。将棋を通じて親交のあった著者にしか書けないであろう、血の通った評伝になっていて読み応えたっぷりだ。 団鬼六その人については、その波瀾万丈の人生自体が一編の小説のようだ。人生の大きな転変の節目節目で、不思議にも思える頼りない偶然に導かれて、希代の作家「団鬼六」ができあがっていく。その過程が実にスリリング。世に出るべき器の持ち主、ということなのだろう。虚実入り乱れる驚きのエピソードの数々から、人生を愛し、人を愛し、また愛されたスケールの大きな人物像が浮かび上がってくる。最後の葬儀の場面ではしみじみ泣けてきてしまった。 本書が面白いのは、鬼六を巡る人々がこれまた並みの人間ではなく、そのアウトロー的な逸脱ぶりに奇妙な爽快感があることだ。鬼六の父母しかり、鬼六がかわいがったたこ八郎しかり。しかし、何と言っても群を抜いて鮮烈な印象を残すのは「真剣師」小池重明だろう。 いやまあ、この人の天才ぶりと、それをしのぐダメ人間ぶりは本当にすごい。恵まれた才能をうまく制御して生きていくのは難しいものなのだなあと思う。でも、その愚かな生き方には抗いがたい魅力があって、鬼六も自身をしのぐ彼の破滅型の人生に心ひかれたからこそ、何度裏切られても面倒を見ようとしたのだろう。 私もそうだが、多くの人は世間の一定の枠からあまりはみ出ずに生きている。そんなもの無視して欲望のままに突っ走りたい気持ちがないわけではないけれど、やはり現実は重いのである。だから、ちまちました分別をうっちゃってしまった、小池重明や団鬼六のようなアウトロー的存在に、どこか胸のすく思いをするのだと思う。 また、本書は、著者大崎善生さん自身の人生についても一定のページが割かれていて、ここがまた面白い。小説家を目指すが、まったく書けずに一度は挫折。将棋にのめり込み、将棋雑誌の編集者から、再び作家を志していく歩みには、一人の青年の生き方として胸に迫るものがある。 団鬼六晩年の傑作とされる「真剣師 小池重明」「不貞の季節」などをわたしはまったく読んでいなかった。早速読もうと思う。楽しみだ。
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ほんとうにこんな人がいるのか、という驚きに満ちた波乱万丈の人生。作者の、真実を追おうとする姿勢に、団に対する敬意と愛情があいまって、とてもすがすがしい印象を受ける。ただし、団の死期が近づいている中、出版されたものを見てもらうために、執筆を早めて連載形式にしたという事情が書かれてい...
ほんとうにこんな人がいるのか、という驚きに満ちた波乱万丈の人生。作者の、真実を追おうとする姿勢に、団に対する敬意と愛情があいまって、とてもすがすがしい印象を受ける。ただし、団の死期が近づいている中、出版されたものを見てもらうために、執筆を早めて連載形式にしたという事情が書かれているが、そのような事情のせいか、若干最後のほうの内容が前の章とかぶっているきらいがある。また団の行動パターンが決まっているので、読んでいるうちに、またあれかといった中だるみは若干ある。それでも、最後までとても面白く読めたし、大崎自身がどのように小説を書くようになったのかといういきさつも同時にわかった。その意味でも興味深かった。
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団鬼六の伝記。大昔、自伝「蛇の道は」を勧められて読み、自伝というジャンルそのもののおもしろさに目覚めたのを思い出した。その後も、『美青年』などでどこまでが実話でどこからが創作なのかわからない、巧みな語り口に喜んではめられた。この著者も、団鬼六作品の最大の魅力のひとつとしてそこを認...
団鬼六の伝記。大昔、自伝「蛇の道は」を勧められて読み、自伝というジャンルそのもののおもしろさに目覚めたのを思い出した。その後も、『美青年』などでどこまでが実話でどこからが創作なのかわからない、巧みな語り口に喜んではめられた。この著者も、団鬼六作品の最大の魅力のひとつとしてそこを認めつつ、伝記作家として、実際のところどうだったのかを本人に食い下がっている。まだ団が存命だったときにそれをする人がいたのは幸運だった。著者自身の個人史とも絡めつつ書かれているのも悪くないけれど、ウソでもいいからやっぱり団鬼六の語る団鬼六のほうがおもしろいのは当然で、途中からちょっと冗長に感じられてきたこともあり、鬼六作品を再読したくなったのであった。
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実録、団鬼六。生誕環境から死の直前まで、生涯を描いたノンフィクション。事業の失敗など大SM作家らしい波瀾万丈な流転の反面、ただひたすら優しく人間愛に満ちた実像が描かれる。 その生き様を「赦す」というキーワードで括る作者のセンスが好いし、また、いかにも昭和のオヤジな描き方がメラ...
実録、団鬼六。生誕環境から死の直前まで、生涯を描いたノンフィクション。事業の失敗など大SM作家らしい波瀾万丈な流転の反面、ただひたすら優しく人間愛に満ちた実像が描かれる。 その生き様を「赦す」というキーワードで括る作者のセンスが好いし、また、いかにも昭和のオヤジな描き方がメランコリックな感傷を呼び起こす。 たこ八郎に関するエピソードの数々が笑えて泣けていいな。
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泣かせの名手が、団鬼六の生涯を書く。これが面白くならないわけがない。最後でやはり泣く。死期が迫った鬼六の様子を見つめる著者の視線は暖かさに満ちている。この人の生き様を読むと、優しさの対語は執着ではないかと思えてくる。拘りやプライド、金銭や生存からの自由。
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確かに小学生~中学生のときは映画の看板で一番記憶に残っているね・・・鞭とか縛るとか・・・人の一生は面白い 彦根も行ったことあるし
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SMの大家、団鬼六の生涯を描いたノンフィクション。今まで自分の中ではエロいじいさん、といった印象しかなかったが、こんなにも破天荒で、器が大きくて、皆に愛されていた人だとは思いもよらなかった。 「一期は夢よ、ただ狂え」人は自分に無いものを見て、他の人を好きになるというが、だからこそ...
SMの大家、団鬼六の生涯を描いたノンフィクション。今まで自分の中ではエロいじいさん、といった印象しかなかったが、こんなにも破天荒で、器が大きくて、皆に愛されていた人だとは思いもよらなかった。 「一期は夢よ、ただ狂え」人は自分に無いものを見て、他の人を好きになるというが、だからこそ皆に愛されていたのだと思う。なんたって生き方が格好良すぎますもん。 なお、団鬼六の自伝的エッセイよりも、こちらの方が客観的に団鬼六を見据えていて(団自身は書きたくなかったため、自伝的エッセイには書いてないであろうこともズバズバ書いていて)非常に面白かった。
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団鬼六、恐るべし。◆一度も発禁にならなかったことを恥としていたのか。◆◆狸顔の女は嫁に、狐顔の女は愛人にか。◆文章は面白くてナンボ、文章を書くことに困ったことがないのも凄い。◆◆鴇色の蹴上げか… 他のエッセイも読みたくなった。
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