元素をめぐる美と驚き の商品レビュー
『元素図鑑』といった元素系の本がはやった時に手にした本ですが、元素に関する内容にちがいなくとも、その内容は元素オタクの著者だけになかなかマニアックです。歴史でいうと、受験に関わる内容よりもむしろあるエピソードの方が印象に残っているということがあると思いますが、それの化学版といった...
『元素図鑑』といった元素系の本がはやった時に手にした本ですが、元素に関する内容にちがいなくとも、その内容は元素オタクの著者だけになかなかマニアックです。歴史でいうと、受験に関わる内容よりもむしろあるエピソードの方が印象に残っているということがあると思いますが、それの化学版といったところ。 とはいえ中身は文系向きに書かれています。意外にもガラスに関わる元素も多く、それに関連する記述がみられました。 著者の主張したいのは「私たちが実際に個々の元素を知るようになるのは、化学実験での出会いを通してというより、文化的な生活を通してだ」という一文に集約されると思います。つまり、周期表にある元素は化学者だけのものなのではなく、実は身の回りにあふれているものである、ということ。学校ではこのようなことを教えないと嘆いています。 レアアースが日本に輸入されにくくなってきたという問題が数年前に起こりましたが、この時、よく使っている家電にレアアースが使われていることが話題となっていました。聞いたことない元素が実は携帯などの電子機器に使われていると分かれば、たちまち周期表が身近になってきます。もしかしたらリサイクルに協力してくれる人も増えるかもしれません。 とにかく、元素図鑑に特徴的な、一般人にとってあまり関心のわかない元素の質量やら色といったプロフィールに飽き飽きしているならば、元素にまつわる名前の由来や発見者、発見場所などエピソードで語られる本書の方が面白いかもしれません。
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元素とか周期表とか聞くとそっち系の本か、と思うかもしれませんが、むしろ元素をとりまく人々、社会の話。 元素コレクションでプルトニウムを手に入れようとした時の、ホメオパシーのレメディーのくだりやら、プルトニウムの命名やら、失笑するようなエピソードもあるし、亜鉛(zinc)と酒場だと...
元素とか周期表とか聞くとそっち系の本か、と思うかもしれませんが、むしろ元素をとりまく人々、社会の話。 元素コレクションでプルトニウムを手に入れようとした時の、ホメオパシーのレメディーのくだりやら、プルトニウムの命名やら、失笑するようなエピソードもあるし、亜鉛(zinc)と酒場だとか、かっこよくて少しさみしいような話もある。書ききれないなあ。 銅は算出される半分以上がケーブルや通信関連などに使われていて、世界は銅ケーブルで包まれている。僕が書いたこの短文も、同ケーブルに乗ってどこかに伝わっていく。 「私たちは元素との必然的な関わりを大事にし、楽しむべきだ」
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最も科学的な指標の一つである元素と人文系の知識が、見事に融合していて、豊かな気持ちにさせられる本でした。 一つ一つの元素のエピソードが、小学生の時に作った鉱石標本のように、小さく区切られた箱に丁寧におさめられているような印象を持ちましたが、そのひとつひとつの仕切りの中の世界が広い...
最も科学的な指標の一つである元素と人文系の知識が、見事に融合していて、豊かな気持ちにさせられる本でした。 一つ一つの元素のエピソードが、小学生の時に作った鉱石標本のように、小さく区切られた箱に丁寧におさめられているような印象を持ちましたが、そのひとつひとつの仕切りの中の世界が広い元素の世界につながっているようにも思えます。 個人的には、「おしっこからリンを精製する話」や「6つの元素が発見されたイッテルビーが思いのほか神秘的でない話」が面白かったです。元素発見の地を巡礼するという旅をしている人がいるということにも感動。 早速感動の押し売りで、化学科卒の同僚に貸してきました。その筋の人と読後感を語り合うのも楽しみです。
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原子番号順に並ぶメンデレーエフの周期表は元素という宇宙を見事なまでに表現している。原子核を構成する陽子の数が1つ異なるだけでその性質が別物となってしまう元素と人間の歴史がこの本には描かれている。
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元素に関わる歴史や美術などをまとめた本。あの元素はこうして生まれた、あの金属はこっち金属の方が珍重された、など面白いので科学が苦手な人は読んでみると苦手感が少し払拭できるかもしれない。ただ全体的に長く後半は間延びしてくるので、流し読みで興味のあるとこだけ読めば良いと思う。
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様々な元素がどのように発見され、世の中に認識されたか、そして、どのような意味合いと結び付けて語られているかといったことについての薀蓄の詰まった本。例えば、「鉄の女」という言葉の鉄のイメージ、単体のコバルトを見たことのある人は少ないが「コバルトブルー」として共有される色など。マイナ...
様々な元素がどのように発見され、世の中に認識されたか、そして、どのような意味合いと結び付けて語られているかといったことについての薀蓄の詰まった本。例えば、「鉄の女」という言葉の鉄のイメージ、単体のコバルトを見たことのある人は少ないが「コバルトブルー」として共有される色など。マイナーな元素は別にして、多くの元素が文学や絵画といった芸術との関係で説明されるので、様々な作品が引用されていて、それだけで作者の教養の深さがよく分かるのだが、よく知らない作品も多く、いまひとつ深く共感できなかった部分も多い。本書は、元素という自然科学分野と文化という人文科学分野の融合というアイディアがオリジナリティに溢れていて、その点がウリなのだが、個人的には、もう少し科学の分野の記述を濃くしてもらった方が面白かったように思う。もっとも、それは他の本でどうぞということなのかもしれないが。
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