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ビルバオ-ニューヨーク-ビルバオ の商品レビュー

3.7

10件のお客様レビュー

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2021/08/09

本を読んでいるのについ文章から想起された記憶や考えに彷徨って、ふと我に返りまた本に目を戻すのを繰り返しているような文章。 詩的だなあと思いながら読んだら、もともと詩人とのことで納得。夢見がちな感性には時に周りの人間から冷静なツッコミが入っていたりして、とても微笑ましい。 作中で引...

本を読んでいるのについ文章から想起された記憶や考えに彷徨って、ふと我に返りまた本に目を戻すのを繰り返しているような文章。 詩的だなあと思いながら読んだら、もともと詩人とのことで納得。夢見がちな感性には時に周りの人間から冷静なツッコミが入っていたりして、とても微笑ましい。 作中で引用される本がいちいち気になってしまう。 フランコ政権やスペイン内戦のことは知っていたけど、バスクはその後も不安定な情勢が続いていたりして特有の事情があるのが全体から漂ってくる。 とくに印象に残ったのは若者の出ていったあと漁村で漁師を募集したらアフリカからしか来なかったという話。やってきた移民たちが漁師としてそこで生活して子供もバスク語を話して、ルーツは違うところだけどバスクの人として生きてる感じが短いけど描かれる。ちゃんと生計を立てて暮らし、ルーツは違うけどそこの住民として根を下ろしている。事実なのか希望を込めた創作なのかは判らないが、その温かい眼差しは現実と未来をまっすぐに捉えてもいる。

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2017/04/24

何とも独特の雰囲気を持った小説であった。 原本はバスク語で書かれているという。 短編小説を集めたような構成なのだが、小説なのかノンフィクションなのか定かではないところへ、いろんな挿話が展開されて読んでいて飽きない。

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2016/04/28

実際にはこんな風に過ごして考えてるよなぁ,というのを再現してもらえてるのが心地よいのかな,と思った。私も,おじいちゃんおばあちゃんについて遡って知ってみたいと思うけど,なかなか難しそう。筆者が羨ましい。

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2015/10/05

表紙の船に惹かれて。 時系列が行ったり来たりするのでこのエピソードはどっちだ、と前のページをぱらぱら捲りながら読み進めた。文章自体は好きなんだけど、ストレス溜まる。

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2015/02/03

新進気鋭のバスク人作家の処女小説。 構想に驚いた。バスクからNYに行くまでの短い道中に想起したことを小説にするなんて。 爽やかでありながら懐かしさ、新しさすべてが感じられる快作。

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2014/11/05
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

[ 内容 ] 主人公キルメン・ウリベは、バスクの中心都市ビルバオから、飛行機でニューヨークへ向けて旅立つ。 心に浮かんでは消えていく、さまざまな思い出や記憶…。 祖父の船の名前をめぐる謎。 スペイン内戦に翻弄されたバスクの画家アウレリオ・アルテタと、ピカソの“ゲルニカ”にまつわる秘話。 漁師として、ビスケー湾からスコットランド、アフリカ沖、カリブ海へと海を渡り歩いた父や叔父たちのこと。 移民や亡命者たち。 そして今書いている小説のこと。 失われゆく過去を見送りながら、新たな世界へと船出していく、バスク文学の旗手による珠玉の処女小説。 [ 目次 ] [ 問題提起 ] [ 結論 ] [ コメント ] [ 読了した日 ]

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2013/11/05

心地の良い小説だった。妙なてらいがなく、誠実。身の回りの物事、人々が語った物事が積み重なって自然とバスクの世界を表していく。 過去を振り返っていく物語でありながら、ありがちな現代への恐れみたいなものがなく、その先に未来への出発がある安心感。 それから、訳者さんが若いですね。僕と...

心地の良い小説だった。妙なてらいがなく、誠実。身の回りの物事、人々が語った物事が積み重なって自然とバスクの世界を表していく。 過去を振り返っていく物語でありながら、ありがちな現代への恐れみたいなものがなく、その先に未来への出発がある安心感。 それから、訳者さんが若いですね。僕と5つ違いでバスク語の小説を訳す・・・すごい・・・!

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2013/09/13

バスク人である著者が、自らの血の系譜をたどる旅を描いた自伝的小説。 魚と樹は似ている・・・から始まる、祖父、父、そして著者自身の物語は、20世紀スペインにおける民族の苦闘の一大絵巻物語として綴られ、読み手はバスク人の心の風景を時間をさかのぼるようにして辿ることになる。 様々な...

バスク人である著者が、自らの血の系譜をたどる旅を描いた自伝的小説。 魚と樹は似ている・・・から始まる、祖父、父、そして著者自身の物語は、20世紀スペインにおける民族の苦闘の一大絵巻物語として綴られ、読み手はバスク人の心の風景を時間をさかのぼるようにして辿ることになる。 様々な登場人物、そしてユーモアと皮肉たっぷりに語られる数々のエピソード。 それらは断片的な人間のドラマを映し出しながらも、ひとつの大きな歴史の流れの中に集約される。 作中、バスク語の起源をバベルの塔崩壊に遡った記述があり、大変興味深かった。 今も独立紛争によって、様々な社会問題を抱えたバスク人。 著者自身の目を通して綴られた、民族の心の軌跡は、主観としての歴史を、現代にリアルさを伴って蘇らせてくれた。 文学が本質的に持っている表現としての可能性をあらためて感じさせてくれた。 久々の海外文学だったが、ページをめくる喜びを思い出させてくれた一冊であった。

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2013/02/03

この手の本の感想を書くのが一番難しい。何も起こらないし何も始まらないから。でもそこには何かがある。読んでる時にしかない小説。

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2012/11/07

なんとも不思議な魅力を持つ静謐な作品だ。著者自身の、あるいは著者と何らかの関わりのある人びとの記憶や経験が、社会や歴史におけるエピソードと巧みに絡みあい、一つの小宇宙を作り出している。そして、そうした全体像を紡ぎ出す作者の視線ないし世界観が、逆に浮き彫りにされてくる仕掛けとなって...

なんとも不思議な魅力を持つ静謐な作品だ。著者自身の、あるいは著者と何らかの関わりのある人びとの記憶や経験が、社会や歴史におけるエピソードと巧みに絡みあい、一つの小宇宙を作り出している。そして、そうした全体像を紡ぎ出す作者の視線ないし世界観が、逆に浮き彫りにされてくる仕掛けとなっている。上質で丁寧な日本語に訳されており、訳者のデヴュー作品としては申し分ないだろう。 訳者の解説によれば、著者は2008年にバスク語版を出版し、翌年には別の人がスペイン語に訳した文章に著者自ら手を入れてスペイン語版を出版した。両者には、章立てを含め、異同が多い。ところが、著者は、さらに、バスク語から他言語に訳すひとのために、スペイン語版に基づいてバスク語版をさらに書き直した(ウルガタ版、未刊行)という。なぜこんな作業を行う必要があったのだろう。訳者も、日本語訳においては、このウルガタ版を参照したと言うが、ウルガタ版が未刊行である以上、バスク語版、スペイン語版と日本語版の異同を検証することは不可能である。

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