ニサッタ、ニサッタ(下) の商品レビュー
斜里に戻り、スーパーの正社員になれそうかと思いきやからの転落。 そこから杏奈のまさかの告白。それにしても耕平が立ち直ってよかった
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おばあちゃんの言葉が心に刺さった。どうしようもなく途方に暮れて、生きる気力がなくなった人を目の前にした時、自分だったらどのように声をかけられるだろう? おばあちゃんは、「ただ今日のことだけ考えれば良い」と。確かにそういわれるとスっと楽になる感覚はある。 耕平を前にして叱咤せず冷静...
おばあちゃんの言葉が心に刺さった。どうしようもなく途方に暮れて、生きる気力がなくなった人を目の前にした時、自分だったらどのように声をかけられるだろう? おばあちゃんは、「ただ今日のことだけ考えれば良い」と。確かにそういわれるとスっと楽になる感覚はある。 耕平を前にして叱咤せず冷静にそのような言葉がかけられるようになるには、どんな人生を歩んできたんだろう、と考えてしまった。
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アイヌ語で「明日」と言う意味のニサッタと言う言葉。 裏面の本の紹介を読んで、どうにも気になってしまって早速読んでみた。 主人公の耕平は、本当にどこにでもいそう。 なんかやろうとしても、上手くいかなかったり、なんだかんだと言い訳をして逃げ出したり動かなかったり。本当にどうしょう...
アイヌ語で「明日」と言う意味のニサッタと言う言葉。 裏面の本の紹介を読んで、どうにも気になってしまって早速読んでみた。 主人公の耕平は、本当にどこにでもいそう。 なんかやろうとしても、上手くいかなかったり、なんだかんだと言い訳をして逃げ出したり動かなかったり。本当にどうしょうもないやつ。それでも、時折見せる前に進む姿に惹かれる。 そんな耕平の物語。 途中から出てくる杏菜も不思議なやつで、どこか掴みどころがないけれど、嫌えない。 何だろうね。どこかにあるこんな日常を僕らも生きている。
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故郷へ帰った耕平、相変わらずやることなすことダメダメで生きる希望も無く自死を考える毎日。そこに杏菜が出生の告白をする。生きるって何だろう、最近親ガチャという言葉があるが、それでいけば杏菜はハズレもハズレということになるだろう。でも一生懸命に生きている、耕平と二人で幸せな人生を歩...
故郷へ帰った耕平、相変わらずやることなすことダメダメで生きる希望も無く自死を考える毎日。そこに杏菜が出生の告白をする。生きるって何だろう、最近親ガチャという言葉があるが、それでいけば杏菜はハズレもハズレということになるだろう。でも一生懸命に生きている、耕平と二人で幸せな人生を歩んでいって欲しい。
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堕ちるところまで堕ちた片貝耕平のその後。 小説なんだから、どん底から這い上がった人が今までの経験を糧にして前に進んでいく更生ストーリーじゃないの !? まさかリバウンドがあろうとは……! 『ニサッタニサッタ(下)』乃南アサ (講談社文庫) この主人公のダメさ加減は何なんだろう。 これでもかこれでもかと、愚かなことを繰り返す。 応援してるのに、やっぱりダメじゃんコイツ。 何だか悲しくもなってしまう。 作者は耕平を使って、この物語をどうしようとしているのだろう。 解説には、「キャラクターへの愛を感じさせない、突き放したような作者の書きぶり」とある。 読んでいると、自分の視点が不思議と物語を俯瞰しているように思えてきて、それは取りも直さず主人公に感情移入できないということなのだが、それが狙いなのかな。 良い悪いに振り分けることのできない、現代に生きる若者の虚飾のない姿をばんと提示されて、戸惑いながら読んでいる自分がいる。 今の私の年齢は、耕平の母のほうに近いのだ。 片貝耕平は、新聞販売店でのトラブルを契機に、九年間の東京生活に見切りをつけ、故郷の斜里へ帰って来た。 しかし仕事はなかなか見つからず、友人の紹介でスーパーでアルバイトを始める。 が、付き合い始めた彼女にバイト代をすべて貢ぎ、さらに彼女が実はバツイチの子持ちで、耕平の友達や先輩とも関係を持っていたことを知り、別れる。 その後、スーパーの正社員を目指して一念発起し、今までにない頑張りを見せるも、なんと、あろうことか、正社員の辞令が下りる直前に飲酒運転で大怪我をし、入院してしまう。 そしてやはり、ここでもヤツは甘ったれた戯れ言を繰り返すのだ。 「人がこんなに苦しんでいるというのに、この母親は、何を枕元でぎゃあぎゃあわめき散らしているのだろう」 「運が悪かったとしか言いようがない」 「どうして察してくれないのか」 警察に監視される入院生活の中、自分が犯罪者になってしまったことで自暴自棄になった耕平は、自殺を考えるようになる。 見舞いに来た母や杏奈に当たり散らし、自分には生きる価値なんてない、と思い詰めていた耕平の心の鍵をはずしたのは、百歳近い祖母だった。 ベッドに横たわる耕平の手足を、お祖母ちゃんはゆっくりとさすり続けた。 わけのわからない苛立ちが吸い取られていく。 「俺なんかさあ、せっかくなあ、正社員になれるとこだったんだ。それも駄目んなった。また借金も出来たしさ。これで少し怪我が治ったら、今度は警察に捕まるんだ。しょうがねえんだけどさ。全部、自分が悪いんだから。俺って、どうしてこんな風になっちゃうのかなあ」 「あるもんだ。ほーだぁときが」 このお祖母ちゃんと耕平のシーンがとてもいい。 なんだか泣けてくる。 「耕ちゃん」 「うん」 「今日のことだけ、考えでな」 「今日のこと?」 「んだよ。今日、夜んなって寝るまでのことしか考えねえでいいから」 一世紀近くも生きているお祖母ちゃんの、言葉の一つ一つが沁みてくる。 物語を俯瞰していると、耕平を頼って東京から知床へやって来た杏奈が、いつの間にか物語の中心にいることに気付く。 東京では何かにつけてじめじめと暗かった杏奈が、この見知らぬ土地で、生き生きと自分のフィールドを広げていく。 そんな杏奈の行動力やバイタリティーは、耕平と対極のものでありながらも、耕平を取り巻く世界を、あたたかく外から包んでいるのだ。 耕平を決定的に変えたのは、杏奈の口から語られた彼女の生い立ちだった。 まだ弱冠二十歳の杏奈が背負っているのは、単なる家族の問題だけではなかった。 沖縄という土地が抱えている、例えば基地や、それに伴って起きてくる問題。人種差別。それは、アイヌ人が差別を受けていた、耕平たちの住む北海道の歴史ともリンクしていく。 生きててよかったと言う杏奈に、耕平は涙を止めることができなかった。 そしてエピローグ。 ああ、まったく(苦笑) しょっぱなから耕平が寝坊して遅刻するシーンかいっ! 涙も乾くわっ!(笑) よかった。 耕平は、一生をかけて頑張れる夢を見つけた。 南欧料理店のオーナーシェフに弟子入りしたのだ。 そして、一生杏奈を守ると決めた。 かっこいいじゃないか。 頑張れ。 でも絶対また失敗するに違いない。 こいつはそういうヤツだ(笑) でも、それでも、何度でも何度でもやり直そう。 その言葉はいつの間にか私自身に向けられていて、ああ人間ってこういうもんなんだなあと、妙に気持ちのいい清々しさが心を満たす。 何だかんだイライラさせられたけれど、読んでよかったなと思えた上下巻なのでありました。 ハッピーエンド。
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耕平は何やっても言い訳ばかり、多分正社員にはなれないだろうなと思ってたらまさかの交通事故で心も体もボロボロ。どうやって立ち直るのか心配だった。でも昔は優しいおばあちゃんっ子だったんだろう事とか、不正に立ち向う正義感がある事が彼を救ったんだと思う。
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耕平はダメ人間。最後も約束したのにお酒で寝坊するし。でも、彼の周囲はみんないい人。お母さん、おばあちゃん、杏菜ちゃんから好かれてるのは彼の魅力なのだろう。周囲には恵まれていると思う。杏菜ちゃんが身の上話をするくだりは涙が出た。しかし、耕平もかなり痛い目に遭わなければ学べないし軌道修正できないというのは難儀やなー。でも、2人とも、これから。過去は気にせずがんばれ!
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心理描写が上手なので、感情移入されてしまう。同じような場面で同じように考えてしまう気がして余計に落ち込む。だからこその、最後の清々しさがとても良かった。いろんな経験をしたからこそ見つけられた大切なものは、意外と身近にあるし、そんな大層なものでなくて良いのだ、と気付かされる。
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自分自身の人生を受け入れ、愛する人のために働くことができるようなった主人公。読み進めていけばいくほど、彼の言動の変化が目に見えてわかりました。一度失敗したって、必ずそばで支えてくれる人はいるのだから、どんなときも人生をあきらめてはいけないと思わせてくれる話でした。
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Rさまオススメ本の下巻。 ようやくちゃんと働くようになったかと思ったら、なぜそのような女に?と思うような女性に入れ込み。 果ては飲酒運転で事故とは。 もうほんと読んでて情けない、歯がゆい思いをさせられるのだけど、思いの外、芯は優しく人に対しても誠実な良い人間なのだと思う。だからなおさら歯がゆいのか。 母親や杏奈にあたり散らしたものの、婆ちゃんのあたたかさには素直になれる。 ようやく落ち着いて母親や姉のことも考えられるようになるなど、やはり根は優しく思いやりがあるのだと思う。 杏奈もそんな部分に救われたのだろうと思う。 最後にはやりたいことを見つけ、希望に溢れる感じが良かったと思う。 しかし、就職難や借金地獄、家族の問題から民族の問題などなかなかに痛烈な内容を孕んでいて、これでもかと主人公が転がり落ちて行くのはしんどかった。 何が悪かったのかと考えるとき、まず自分を振り返るよりも前に周りのせいにする。なんかここまでではなくても、自分でもそんなふうに考えてしまいそうなときがありそうで尚更しんどく感じたのかも。
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