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火山のふもとで の商品レビュー

4.3

103件のお客様レビュー

  1. 5つ

    44

  2. 4つ

    31

  3. 3つ

    12

  4. 2つ

    1

  5. 1つ

    1

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2013/07/14
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

松家仁之の火山のふもとでを読み終えた。簡単にいえば、80年代の建築設計事務所で働く大学をでたばかりの青年が、寡黙な老設計家と、そこで働く設計士たち、何人かの魅力的な女性との日々を静かに描いた作品ということになるのでしょう。でも、作品中で静かに語られていく建築や、家具のデザイン、図書館のコンペというトッピックスの中に、建築を志す人たちの葛藤やら、80年代初頭の懐かしい香りがふんだんに描かれていて、最後まで惹きつけられた。しかし、麻里子にしても、雪子にしても、藤沢さんにしても、登場する女性陣は、男性に比べて、なんて魅力的に描かれていることでしょう。80年代には、麻里子のような女性は実在したような気がする。しかし、よく考えてみれば、現実に自分の周りにいたのではなく、TVドラマや映画で描かれた80年台の、活発だけど最後は「家」を選ぶ進歩的な女性のステレオタイプみたいな偶像なのかもしれない。

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2013/07/10

建築への造詣が深く、一人の小説家がここまで描けるものなのかと驚き、吉村順三および中村好文…丹下健三、モデルはいないと著者は明記しているが、どうしても彼らの名前や建築が頭をよぎる。 自然や芸術に対しても愛は深い、しかし、それだけにこの本を好む人が限定されてくるように思う。 例える...

建築への造詣が深く、一人の小説家がここまで描けるものなのかと驚き、吉村順三および中村好文…丹下健三、モデルはいないと著者は明記しているが、どうしても彼らの名前や建築が頭をよぎる。 自然や芸術に対しても愛は深い、しかし、それだけにこの本を好む人が限定されてくるように思う。 例えるなら──、村上春樹にこの作品は似ている。 著書に出てくる「細部と全体は同時に成り立ってゆくものなんだ」という一節、頁の文章の対象のひとつひとつは上品に美しく仕上がり(細部)、それが全体的に(書評などで)評価が高いのだろう、読後感も良いのだろう、良くできているのだと思われる。 ただ、そのきれいなディテールで全体を作り上げる方法は、読後感が良くても心まで揺さぶる読書経験にはならないような、そんな気がした。 死に寄り添うピアノソナタ21番(シューベルト)、抽象画家マーク・ロスコ、そしてアスプルンドとライト、様々な細部と照らし合わせ、建築に少し傾いていたのならば、きっと読んでいて楽しいはずだ…、少なくとも自分はそうだった。 もし仮に次、出版するとしたら同じ手法(細部と全体)は難しいものと感じ、だが村上春樹好きならきっと自分は薦めるんだろうと思いました。

Posted byブクログ

2013/07/09

2013.7.2〜 読み始めたところで、これはもう私の大好きな本になるのではないかという予感がしている。こんなこと、珍しいし、久しくなかった感覚! 7.9読み終わる。ほんとに良い本だった。静かに泣いて終わった。これがデビューとはビックリ。 淡々とした日常と巡る季節と時間。自然の姿...

2013.7.2〜 読み始めたところで、これはもう私の大好きな本になるのではないかという予感がしている。こんなこと、珍しいし、久しくなかった感覚! 7.9読み終わる。ほんとに良い本だった。静かに泣いて終わった。これがデビューとはビックリ。 淡々とした日常と巡る季節と時間。自然の姿。朽ちていくものと残るもの。建築の話。良かった。

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2013/06/12

静かな佇まいを感じさせる小説で、私には大変好ましいものだった。 こういった小説が最近少なくなっている気がする。 大きな事件が起こるわけではないが、丁寧な描写が情景を浮き上がらせ、秘めた心の内を思わせる。 読んでいる間避暑地の清涼な空気を感じていた。 穏やかな気持ちで読み終わるこ...

静かな佇まいを感じさせる小説で、私には大変好ましいものだった。 こういった小説が最近少なくなっている気がする。 大きな事件が起こるわけではないが、丁寧な描写が情景を浮き上がらせ、秘めた心の内を思わせる。 読んでいる間避暑地の清涼な空気を感じていた。 穏やかな気持ちで読み終わることのできた本は久しぶりではないか。 これがデビュー作というからたいしたものだ。 次作が楽しみ。

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2013/05/31

ずっと読み続けていたいっなーんて気分なった本。 主人公は大学で建築を学ぶと、憧れていた建築家村井俊輔の事務所に入所する。 彼らは夏の間、浅間山のふもと(旧軽井沢のそばかな)に会社を移して、設計に没頭する。 それは静かで豊かな生活。 夏の家と名付けられた別荘。アプローチには桂...

ずっと読み続けていたいっなーんて気分なった本。 主人公は大学で建築を学ぶと、憧れていた建築家村井俊輔の事務所に入所する。 彼らは夏の間、浅間山のふもと(旧軽井沢のそばかな)に会社を移して、設計に没頭する。 それは静かで豊かな生活。 夏の家と名付けられた別荘。アプローチには桂の大木。二階にある設計室の全面窓をいっぱいに開けると、その明るく軽快な桂がのびのびと葉を広げるのがみえる。 磨き上げられた楢の木の床、大きな暖炉の周りを囲むように置かれたソファ。 朝はフォールディングナイフで鉛筆をけずるサリサリという音でまだぼんやりとしている頭の芯が目覚めていく。 夜には料理好きの所員たちがつくる仔羊のローストやビシソワーズなどのシンプルなご馳走をたべる。 まるで自分がそこで生活しているような錯覚に、ページを捲る手がゆっくりになる。読み進めるのがもったいないような。季節的にもバッチリだったな。 ひたすら先生から設計を学ぼうと修業する主人公は、繊細で優しいが頑固なところもある。頼りないところもあるが、設計を大切に建築されたものを愛でるチカラはものすごいというのが伝わってくる。(色んな建物の描写がおもしろかったなー) ゆったりとした中で、彼の恋の部分だけは緊張感がまとう。不器用なだけに…。ギイィッと、だれも気づかないぐらいの小さな声でしか鳴かないコゲラに自分を例える。(こーゆうナイーブな美少年に弱いのよねん) 明るく率直な麻里子。静かな強さを持つ雪子。正反対のふたり。ハラハラした。 国立現代図書館のコンペの設計はこれまでで最高のものになるはずだった。それが最後にこんなことになるとは。 ものにはからなず終わりがある。一年草のように。でも花が終わっても全てが無くなるわけじゃない。そんなことを感じた。

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2013/06/06

主人公の坂西は、大学で建築を学び自分が気にいていた教会の設計をした建築家の事務所に入った。その村井設計事務所は、夏になると青山の事務所を閉じ、浅間山ふもとの村にある山の家に場所をうつす事が恒例になっていた。坂西が屋行って年は、新しくできる国立図書館の設計コンペを前に、事務所中がコ...

主人公の坂西は、大学で建築を学び自分が気にいていた教会の設計をした建築家の事務所に入った。その村井設計事務所は、夏になると青山の事務所を閉じ、浅間山ふもとの村にある山の家に場所をうつす事が恒例になっていた。坂西が屋行って年は、新しくできる国立図書館の設計コンペを前に、事務所中がコンペに備える体制になっていた。 昭和の避暑地の香りの残る山の家で、坂西は先生の愛する人々と出会い、自分の生き方を模索する。 読むことに引き込まれていくような、清冽な作品でした。

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2013/05/21
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

大学を卒業したばかりの建築家希望の青年と青年が運よく 入所する尊敬すべき村井俊輔の設計事務所の物語。 村井設計事務所は都内の事務所のほかにひと夏を過ごす 夏の家を軽井沢に持っている。仕事機能もすべてそちらに 以降して夏中泊まりがけで作業がすすめられる。 その夏は国立現代図書館のコンペの準備で所員たちは 山のような仕事をこなしていた。 物語は建築や建築家について語られることも多く フランク・ロイド・ライトやアスプルンドなど 名前や建造物だけは知っているものの、 その人の人生など知らなかったので興味深い内容が多かった。 また軽井沢の自然の中で植物や野鳥など細かな描写が とても心地よく、名前の出てくる野鳥はどんな様子 なんだろうと興味を持ちながら読んだ。 さらにステッドラーやオピネル、リラなど文具好きなら 必ず耳にするなど道具類も大切に描写されており、 建築家達が使ったちびたステッドラーの鉛筆がたくさん入った 何本もの硝子瓶なんて想像するだけで、いいなぁって思った。 そういう心地よい描写の数々で他のレビュー通り 読書中は常に穏やかな気持ちでいられた。 ただ最初から本文中で青年が下の名前を呼んでいた雪子と 麻里子については妙齢の女性のようだし、 青年と何かあるのかなってドキドキしながら読んだ。 一定のリズムの穏やかな物語の中で、それらが どのように組み込まれていくのか、そこが読書中に 緊張感を与えて飽きずに読めた。 最近は本を読んで涙するってことがほとんどないのだけど この物語は感動ものというほど大げさではなく 人生についての感無量というかやるせなさというか 複雑な気持ちの涙があふれてきた。 自分の人生にきちんと自分でかたを付けて終わるというのは とても辛く厳しいものなのではないかと思った。 大抵の人々は流れるように人生が終わってしまうものなのではないかな。 もう一度細かくじっくり読み返してみたい本だった。

Posted byブクログ

2013/04/30

夏の間だけ東京から移動してきた山あいでの静かな話。 環境そのものも静かだけど、物語自体、静かで鳥の鳴き声や、空気の冷えた感触が読み手にも感じられるような話だった。 面白いかと言われると、どうなのかなぁとは思うけど、こういう気持ちが静けさを吸収するような本もたまにはいいもんだなぁと...

夏の間だけ東京から移動してきた山あいでの静かな話。 環境そのものも静かだけど、物語自体、静かで鳥の鳴き声や、空気の冷えた感触が読み手にも感じられるような話だった。 面白いかと言われると、どうなのかなぁとは思うけど、こういう気持ちが静けさを吸収するような本もたまにはいいもんだなぁと思う。

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2013/04/29

読後感が最高の小説。話しの流れは淡々として起伏はあまりないが、描写がうまくて、場面場面の情景が鮮明にうかぶ。

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2013/04/21

噴火する浅間山。夏の間の仕事場となる別荘。国立現代図書館の建築設計をめぐるセッション。現代建築の名匠の秘話。謎めいた女性の大邸宅。そして、一夏の仕事の合間に展開する密かな恋…。翻訳小説のような文体に、贅沢で豊かなムードをはらんだ物語が進行する。重厚でもなく軽薄でもなく、懐かしくも...

噴火する浅間山。夏の間の仕事場となる別荘。国立現代図書館の建築設計をめぐるセッション。現代建築の名匠の秘話。謎めいた女性の大邸宅。そして、一夏の仕事の合間に展開する密かな恋…。翻訳小説のような文体に、贅沢で豊かなムードをはらんだ物語が進行する。重厚でもなく軽薄でもなく、懐かしくもあり斬新でもあり。ジャンル分けが難しい、まさにこれが小説である、としか言えない。

Posted byブクログ