「調べる」論 の商品レビュー
350 狂言の魅力は、遊び心をいかようにも反映できるところにあります。はじめは型に献め られるところからでも、だんだん、型を超えた芸に抜け出ていける。それこそ、狂言師の ひとつの目標でもあり、最近、僕が楽しくなってきた部分でもあるんです。 若いうちは、技術をいかに見せるかが問わ...
350 狂言の魅力は、遊び心をいかようにも反映できるところにあります。はじめは型に献め られるところからでも、だんだん、型を超えた芸に抜け出ていける。それこそ、狂言師の ひとつの目標でもあり、最近、僕が楽しくなってきた部分でもあるんです。 若いうちは、技術をいかに見せるかが問われ、年を取ると技術を操る人間そのものが問 われてきます。最近、僕は酔っ払いの役をやるとほんとうにアルコールがまわったように、 顔が少し赤くなるんですね。前は型として酔っているだけで現実味が薄かったのに、今は 次第に型と日常がシンクロするようになってきた。これは、面白いことですよ。 普段の僕の言動はたまに「型にしか見えない」と言われることもあります。もともと、 狂言の型は非日常的で、体にプログラミングされたものですよね。しかも、サイボーグの ように型を埋め込まれて育ちましたから、どんな動作も型に見えてしまうというのは不思 議ではありません。 しかし、かつては不自然だった型が体になじんできて、型に対して疑いもなくのめりこめるようになった時に、芸に格が出てくるような気がします。 基本がしっかりしていない中でリアルに体を動かしても、かえってウソ まうんですよ。ウソだし、きたないものに見えてしまう。これも、父に教えられたことで でもそういう演技を見せてしまうと「きたない声を出すんじゃない れていましたから。 分をモロに出しても、そのままでは他人は受けとめきれないんです。だか 人を思いやった、露骨ではない動作」が求められるわけで、それが型の美 言わば公共概念というものではないでしょうか? 型の基本がしっかりしていない中でリアルに体を動かしても、かえってウソに見えてし まうんですよ。ウソだし、きたないものに見えてしまう。これも、父に教えられたことで すね。少しでもそういう演技を見せてしまうと「きたない声を出すんじゃない!」と叱ら れていましたから。 自分をモロに出しても、そのままでは他人は受けとめきれないんです。だから型という 「他人を思いやった、露骨ではない動作」が求められるわけで、それが型の美しさであり、 言わば公共概念というものではないでしょうか? また、海外生活が長くなるにつれて痛感したのは、いくら外国語に習熟しても、思考や 認識の源は母語だということ。この実感は、日本のナショナリズム批判に対する疑問につ ながりました。日本でのナショナリズム批判そのものが、日本語のなかの、さらに狭い世 界でしか通用しない日本独特のものだからです。ナショナリズムの批判者たちは意識の上 ではナショナリズムを超えようと言っていながら、存在の上では完全にナショナリストな んですね。
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なんだか本全体的に、読んだことがある雰囲気だな〜と思ったら、糸井事務所から独立した方の本でした。 人との対談がなんとなくほぼ日に似ているのだと思う。 それはさておき、全体としては、調べる論というよりは、 職業論のような内容(ほぼ日のはたらきたいを思い出した) それもまた面白かった...
なんだか本全体的に、読んだことがある雰囲気だな〜と思ったら、糸井事務所から独立した方の本でした。 人との対談がなんとなくほぼ日に似ているのだと思う。 それはさておき、全体としては、調べる論というよりは、 職業論のような内容(ほぼ日のはたらきたいを思い出した) それもまた面白かった。
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◆研究者や漫画家、弁護士やジャーナリスト、「正解のない現実と向き合う」さまざまな人たちは、どのようにして現実と向き合うことになったのか。そしてそこからなにを得たのか。刺激に満ちたインタビュー集です。 ◆全体的に、一次情報にあたる大切さが強調されていました。ただそれだけでは当たり...
◆研究者や漫画家、弁護士やジャーナリスト、「正解のない現実と向き合う」さまざまな人たちは、どのようにして現実と向き合うことになったのか。そしてそこからなにを得たのか。刺激に満ちたインタビュー集です。 ◆全体的に、一次情報にあたる大切さが強調されていました。ただそれだけでは当たり前のことなのですが、この本では、彼らが一次情報から引き出したもの、あるいは引き出した方法といった、過程のドラマに焦点が当てられています。足で調べまわることもあれば、じっとデータを見ていて、なにかの拍子にそのデータが意味するものがみえてくることもあるようです。そしてそうした発見によって、関係の無いように見えることが思わぬところで関連していることが分かったりして、通説と異なる現実の姿がみえてくるのですね。 ◆この本は、さまざまな分野での調査の方法を説明するような本ではありません。むしろ調べる(答えのない問いを立て、答えを探す)人たちの人間的なドラマに関心がある方が楽しめる本だと思います。
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様々な職種、学者、医者、狂言師、漫画家、雑誌編集者など20人の方を著者がインタービューしたものをまとめたもの。取材者の言葉は消してあり、一人一人の思いが伝わりやすいように構成されていて読みやすい。
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調べるには、二つの方法がある。人に聞くのと本で読むかだ。この本は、その内の一つ、人に聞く方法「インタビュー」について書かれている。そして、その方法を「本で読む」ことにより得ている。 筆者は、インタビューを「質問と回答の繰り返しの中から、過去の解釈をやり直すための触媒」だと考えている。 ほとんど、評価が定まった過去の事実も、無数の過去の記録が集まって作られた過去の記録にすぎない。 調べることにより、それらの記録の解釈が変化されるかも知れない。
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阿部彩さん、中田亨さん、佐藤克文さんの話が特に興味深かった。 著者の引き出す能力はすごいと思う。 子どもたち向けに、13歳のハローワークというものがあるけれど、木村さんにも別の角度からあらゆる職種の方の話を引き出して本にまとめてほしい。
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調べる能力はどんな仕事にも通じる普遍的な能力であることを感じました。阿部彩さんの話が特に印象的です。
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大学時代の友達を介して出会った、広告会社勤務の彼女(三十)には、まだ何十年と人生がありますからね。介護が必要で、治療中にたぶん子供を作れない体になった僕にとって、結婚は現実的でなく、彼女には一緒にいられることの感謝を伝えることしかできません。もう恋人というよりは、最も大切な家族なんですよ。 交際初期は僕も彼女も多忙で、そんなに仲睦まじくもなかったんですよ。でも二年前に治療が始まり、再発後は治療の副作用で毎日吐き、便を垂れ流し、愚痴だらけだった僕を彼女は受け入れ、看護までしてくれた。 徹夜するほど激務の時でさえ、十五分でも毎日病室に来てくれたんです。具合が悪くて話もできず、彼女の料理をもぐもぐ食べるだけの時間が続いたけど、その時間に愛情も信頼関係も深まって。互いに要介護になってから、急に仲良くなった僕の祖父母のようで。本来何十年も連れ合った後みたいな関係が先に来て、申し訳ないのですけどね。 僕は未来社会で人と人の関係がどう変わるか考えるのが好きで、事業を始めた側面があります。彼女もそんな僕のアイディアごと好きになってくれた。ただ病気になってよく分かったのは、社会って起業したときのイメージよりもずっと直接的なつながりでできていることです。 直につながった人のためにできることこそが、社会に還元できることで、僕の場合、彼女や肉親や友達に、どれだけ誠実に対応できるかなんだと考えるようになりました。毎朝、友達からもらった手紙や二年前から記しているノートを読み直しながら、周囲との関係に思いをはせているのですが、すると不思議に、いま幸せなんですよ。 トルストイは『アンナ・カレーニナ』の冒頭で「幸福な家庭すべて互いに似かよったものであり、不幸な家庭はどこもその不幸の趣が異なっているものである」と書きましたが、僕は必ずしもそう考えないですね。 病院のがん入院患者も、みなさん事情があります。絵に描いたような希望なんてない中でも、それぞれ周囲との関係から幸せへの道はまだつながっているようで。僕も結婚はしていないし体はきついけど、彼女が病室に来てくれるだけでも幸福で、それでいいと思っているんです。 (「朝日新聞」二〇一二年一月七日「be」土曜版の「結婚未満」より引用。漢字、数字での表記の方法は本書に合うように改めておいた)
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とにかくしつこくデータをとり続けるうちに、いつの間にか意味がわかってくる。 意味がわかるようになると発見する。 哲学はジャンルを問わない学問、 人間の知性や生き方の問題。哲学が物事を考える道具。言葉を使ってとことん考えるのが哲学。 知性の本質は言葉をアウトプットすることにある。知...
とにかくしつこくデータをとり続けるうちに、いつの間にか意味がわかってくる。 意味がわかるようになると発見する。 哲学はジャンルを問わない学問、 人間の知性や生き方の問題。哲学が物事を考える道具。言葉を使ってとことん考えるのが哲学。 知性の本質は言葉をアウトプットすることにある。知性のアウトプット能力。
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「調べる」をキーワードに記者や研究者、ある特定のプロフェッショナルなどにインタビューした、インタビュー集。 「調べる」具体的な方法論を示した本ではなくて、各分野で著名な方の研究や仕事内容のエッセンスを集めた本となっている。 一般向けにベストセラーとなっている新書などを出版されてい...
「調べる」をキーワードに記者や研究者、ある特定のプロフェッショナルなどにインタビューした、インタビュー集。 「調べる」具体的な方法論を示した本ではなくて、各分野で著名な方の研究や仕事内容のエッセンスを集めた本となっている。 一般向けにベストセラーとなっている新書などを出版されている方も多く収録されているので、詳しい内容はやはりご本人が書かれた本を一冊一冊読んだ方がより面白いのではないかなあ、と思ってしまった。ただ、こんな人がいるんだ、という入口になる本ではある。
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