終の住処 の商品レビュー
2009年第141回芥川賞受賞作の表題作と短編「ペナント」を併録。 どちらの作品も、夢の中にいるような現実世界に彷徨っているような、何とも不安定な心の状態を描いていたように感じるが、それでも時間は刻々と過ぎていく。 私には表現されている世界観が難しいかなと思えた。
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三十路結婚夫婦の夫側を主役に長い結婚生活を短く纏めている。妻や娘の名前はもちろん浮気遍歴の相手の数々の名前も明らかにされない寓意性。11年妻が口を利かないといっても結婚して娘までいて不倫しまくっている人なので死ぬまで満足する事ないのだろうと考えてしまう。もっともそういうものに無縁...
三十路結婚夫婦の夫側を主役に長い結婚生活を短く纏めている。妻や娘の名前はもちろん浮気遍歴の相手の数々の名前も明らかにされない寓意性。11年妻が口を利かないといっても結婚して娘までいて不倫しまくっている人なので死ぬまで満足する事ないのだろうと考えてしまう。もっともそういうものに無縁な自分の独り善がりだろうけど。
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※このレビューにはネタバレを含みます
結婚すれば世の中のすべてが違って見えるかといえば、やはりそんなことはなかったのだ──。互いに二十代の長く続いた恋愛に敗れたあとで付き合いはじめ、三十を過ぎて結婚した男女。不安定で茫漠とした新婚生活を経て、あるときを境に十一年、妻は口を利かないままになる。遠く隔たったままの二人に歳月は容赦なく押し寄せた……。 --------------------- 芥川賞受賞作。世間体で結婚して後悔した男の独白小説。 妻とうまく話もできず、何度もの不倫を重ねる。 「次に妻と話したのは、それから十一年後だった」 それでもそこは終の住処なのである。
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※表題作のみのレビューです。 141回(2009年上半期) ストーリー 2 登場人物 1 世界観 4 構成力 3 文章力 3 メッセージ性 3 ※5段階 期待して読んだ。読みやすかったが、はまらなかった。ガルシア=マルケスの「百年の孤独」を読んでいたら...
※表題作のみのレビューです。 141回(2009年上半期) ストーリー 2 登場人物 1 世界観 4 構成力 3 文章力 3 メッセージ性 3 ※5段階 期待して読んだ。読みやすかったが、はまらなかった。ガルシア=マルケスの「百年の孤独」を読んでいたら評価は変わったのかも知れない。主人公に感情移入できず、現実と空想の行き来も中途半端な感じがした。
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現実的にあり得ないような話である。妻と口を聞かなくなって十一年。同じ住処で?もはや、妻の復讐である。その部分は端折るられているので、もはや伝記の様相である。黒いストッキングの女、サングラスの女などの呼称が面白く、紫のスカートの女はいないのか?と探した。この一見モテそうもない50代...
現実的にあり得ないような話である。妻と口を聞かなくなって十一年。同じ住処で?もはや、妻の復讐である。その部分は端折るられているので、もはや伝記の様相である。黒いストッキングの女、サングラスの女などの呼称が面白く、紫のスカートの女はいないのか?と探した。この一見モテそうもない50代のおじさんが次々に女性を惹きつける部分にもリアリティの欠如がある。初読みの作家で硬いノリを予測していたが良い意味で大幅に裏切られた。ちょっと理解不能でしたが、文章は読みやすく、以外とサクサク進んだ。後半、つまらなく感じた。
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一人の男の人生を、前半は彼自身の等身大の視点で、後半は時間の悠久な視点で描いた作品。時に対する感覚が変容し、徐々に溶けていき、最終的には境目が曖昧となる、そんな面白さを持つ。 序盤の「自身だけが時から取り残されているのではないか」という時に対する感覚が、電車での女との邂逅、家...
一人の男の人生を、前半は彼自身の等身大の視点で、後半は時間の悠久な視点で描いた作品。時に対する感覚が変容し、徐々に溶けていき、最終的には境目が曖昧となる、そんな面白さを持つ。 序盤の「自身だけが時から取り残されているのではないか」という時に対する感覚が、電車での女との邂逅、家族で乗った観覧車、新居の建設を通して、漸次変容していく。 「ラストの展開が急であった」「置いてきぼりにされた」とのコメントも見られるが、上記の視点で物語を捉えれば、この上なく納得できるラストであろうと考える。 めちゃくちゃ面白かったです!!!
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妙にユーモアの効いた絶望感のあるお話だった。 ユーモアが効いてるので読んでる最中はスラスラと楽しくページが飛んでいくものの、読み終わったあとに「なんだったんだ、これは、、、」という絶望感。 なんとなくストーナーと似てる感じではあるけど、あっちは読後感にうっすらと希望があったけ...
妙にユーモアの効いた絶望感のあるお話だった。 ユーモアが効いてるので読んでる最中はスラスラと楽しくページが飛んでいくものの、読み終わったあとに「なんだったんだ、これは、、、」という絶望感。 なんとなくストーナーと似てる感じではあるけど、あっちは読後感にうっすらと希望があったけど、、、こっちは反対に絶望感。時代の問題か? あと、中年男性ってそんなにモテるの!?自分にはそんな気配ゼロだけど!?
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⚫︎受け取ったメッセージ 人生に起こる様々な出来事は 時間と距離を持って俯瞰すると まとまった一つの風景として見える そしてその風景が 近景しか見えないか、遠景しか見えないか、 両方とも見えるのかは 人それぞれ。 ⚫︎あらすじ(本概要より転載) 結婚すれば世の中のすべてが違って見えるかといえば、やはりそんなことはなかったのだ―。互いに二十代の長く続いた恋愛に敗れたあとで付き合いはじめ、三十を過ぎて結婚した男女。不安定で茫漠とした新婚生活を経て、あるときを境に十一年、妻は口を利かないままになる。遠く隔たったままの二人に歳月は容赦なく押し寄せた…。ベストセラーとなった芥川賞受賞作。 ⚫︎あらすじ(ネタバレ) 二人が結婚したことは二人のタイミングが合った偶然の上で成り立っており、「彼」の実力よりも、結婚したことが出世に結びつく。彼が浮気をし、離婚話を切り出そうとしたら、赤ん坊を授かっており、離婚回避。 妻が何を考えているのかわからない。面と向かって問いただすこともしない。赤ん坊の娘も掴みどころがない。 遊園地から帰ってきてから、11年間、妻は彼と口を聞かない。その間、彼は8人と浮気する。 突然家を買うという宣言に、妻はそうね、そういう時期ねという。 建築士に信服し、家のことを結果丸投げし、完成。 彼はアメリカ滞在中仕事で成果をあげ、戻ってきたら、娘がアメリカへ行っていると初めて知る。 最後は妻と向かい合い、目を見て、ここが終の住処であり、残り長くない人生を妻と過ごすのだ、と思う。 ⚫︎感想 なんといっても観覧車のところが名場面だと思う。 観覧車の場面で、妻は県境の方までずっと続く遠くの方を見ている。彼はあれこれと不倫相手や自分の家が点で存在するのだということに気づく。そしてバラバラに見えていた遊具が、実は扇状に整然と配置されていたのだと気づく。 このことからわかるのは、彼にとって、なぜ妻が何を考えているかわからないのか?ということだ。それは妻が人生を彼よりも俯瞰して見ているからだ。だから、妻は不倫のこともお見通しであり、諦観しているということを表しているのではないか。また、彼の方は、俯瞰して見ることができないので、妻のことはがんばっても理解できない。 観覧車について、浮気相手に聞いたら、浮気相手はお金をもらっても絶対に乗りたくないという。これは彼女もまた、彼と同様、人生を俯瞰して見たくはないという隠喩だと思う。 ただ、彼がたくさんの女と関係し、それを断ち切り、また仕事の上で成功してきたことは間違いない。妻はあたかもそれをはじめから知っていたように、読めた。それらをひっくるめて受け取る妻は、「いつでも別れようと思ったら、別れられるのよ」と言いながらも、別れなかったし、浮気にも気づいていただろうが、そのことを問いただすこともしなかった。 妻は全てを諦観しているように見え、現在に不満を抱いてはいるものの、彼と向き合って、自分の思っていることを話そうとはしない。 11年間におよぶ会話のない生活は、彼の「家を建てるぞ!」という一言で打開する。しかもそれは妻のことを慮ってのことではなく、「恋愛に取り憑かれた、延々と続く暗く長い螺旋階段を登り続けた彼の人生のひとつの時代が、この日ようやく終わった」という、彼の中で起こった変化であり、区切りであった。 「終の住処」で、やっと真正面から向き合う彼と妻は 諦観したような疲れたような、良く似た顔で、やっとお互いに向き合う。 「妻」は「彼」よりも精神的に大人であるためか、人生の遠景を見ている。50になった「彼」に見られても目を逸らさず見返すところから、これから二人はやっと対等に、逃げずに向き合えるのではないかな、と思った。
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文学とは何か、芥川賞の傾向は。 これをよく研究し、敢えて改行を用いず、読解の難易度を修辞的、技巧的に付与したもので、小説世界とは別の「読み難さ」により、読書における肉体的疲労感を意図的に演出している打算が、合わない。深く沈みたい時には良いのだろうか。 人生のイベントを自己目的...
文学とは何か、芥川賞の傾向は。 これをよく研究し、敢えて改行を用いず、読解の難易度を修辞的、技巧的に付与したもので、小説世界とは別の「読み難さ」により、読書における肉体的疲労感を意図的に演出している打算が、合わない。深く沈みたい時には良いのだろうか。 人生のイベントを自己目的化し、それを遂げる事を通過儀礼のように捉える。結婚をしても、家を建てても本質は変わらぬようだが、実際には、徐々に自分自身の感受性は変容し、いつからか別の人間になっている。やがて老い、後天的に獲得した形質や変化の方が肉体の中で市民権を得て、それに従うのが当然のような生活になる。自分にとっての「終の住処」とは、その纏わりつく肉体や精神の変遷の歴史である。 素直に本作が読めない自分と対比し、タイトルを見て、そうぼんやりと考えた。
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第141回芥川賞作品。 漂うのは虚しい孤独感だが物語自体は主人公の一人称であり、彼の完全なる主観で語られているため歪みを感じる。 現実は夫として父としての責務から逃げ続け、幾人もの女性と関係を持っているのに、それでも自己の正当性を失わない語りが気持ち悪い。
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