実在とは何か の商品レビュー
「実在」などというと,古びた哲学論議のようだが,これは物理学における実在の話。哲学ではよく,「目に見えるものしか実在として認めない」とか「いや,目に見えるからといって実在とは限らない」とかいう話になるのだが,そんな素朴な観念論ではない。目に見えない電磁波だって時空だってエネルギー...
「実在」などというと,古びた哲学論議のようだが,これは物理学における実在の話。哲学ではよく,「目に見えるものしか実在として認めない」とか「いや,目に見えるからといって実在とは限らない」とかいう話になるのだが,そんな素朴な観念論ではない。目に見えない電磁波だって時空だってエネルギーだって,物理においてはそれは確かに実在する。そういった古典物理における概念の実在は当然のこととして,本書は量子論の奇妙な世界と実在について扱う。必然的に,宇宙そのものについても。 内容は多岐にわたっていて,並行宇宙・マルチバース,数学が現実を説明することの神秘,負の確率,ループ量子重力理論,ホログラフィック宇宙,超弦理論,幾何学や代数多元体と物理の関係…などなど。過去の日経サイエンスの記事を「実在に迫る」「究極の真実を求めて」の二章にまとめてる。 以前は,量子の世界が現実離れしていて不可解なのは当然で,その実在を云々するのは無意味,なぜか正しく出てくる結果だけをうまく応用すれば良い,と考えていたが,そういう簡単な話でもないようだ。「弱い観測」で量子状態の乱れを少なくして物理量を知る技術も実現してきているそうだ。 興味深かった記事が「平面国の量子重力」。空間が三次元でなく二次元だったら重力はどうなるかと言う話。まず,二次元では重力波が存在しない。そうするとその重力を量子論に落とし込もうとしても,量子化すべき波がなくて困ったことになる。でもこれを解決すると思われるアイディアも出されてて,それは時間の起源に関係があるかもしれないという。二次元の重力は仮定の話だが,そこから統一理論へのヒントが得られるかも。 それと二次元では,重力は相対的に運動する物体間にしか働かない。ブラックホールは形成され得る。ホーキング放射もあるようだ。いろいろと興味は尽きない。
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題名を読んだだけだと、哲学か何かの本と勘違いしそうである。しかし、内容は現代物理。それも宇宙や素粒子などの量子といったものである。 専門知識を持たない自分にとって、決して簡単な内容ではなかった。しかし、どこかにある(であろう)「もう一つの宇宙」の話題や、「多元宇宙」・「多次元宇宙」、量子世界の不思議な振る舞いなどは、あまりにも非日常的でおもしろかった。数学と物理学の接点も多くある。
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