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フリント船長がまだいい人だったころ の商品レビュー

3.6

9件のお客様レビュー

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2024/10/06
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

これまた何で読みたいリストに入れていたのか思い出せない。 長らくリストに入っていたので、そろそろ消化しようと手にとる。 タイトルにある「フリント船長」は『宝島』に出てくる悪名高き伝説の海賊。 うすうす思っていたけど『宝島』先に読んでおけば良かったー。 読んでなくても支障はないけど、やはりそこが具体的に思い描けないので何かもやもやする。 1986年秋、アメリカ北西部、漁業の町ロイヤルティ・アイランド。 この町の経済を支える漁業会社の社長ジョン・ゴーントが亡くなった。 町のカリスマの死去による深い悲しみもさることながら、町民に広がるのは不安。 遺産を受け継ぐ放蕩息子のリチャードが漁業権もろとも会社資産を売り払ってしまい、職にあぶれ、生活基盤を失ってしまうのではないかと。 主人公カルの父親ヘンリーもゴーント家の所有する船の船長。 秋から春先にかけて一年の半分はアラスカに出てカニ漁に勤しんでいる。 家にいる間はなるべくカルとの関係を育むべく、寝物語に聞かせた自作話がタイトルにもなっている「フリント船長がまだいい人だったころ・・・」。 あの極悪人のフリント船長もその昔、”いい人”だった。 フリント船長はなぜ”悪い人”になってしまったのか。 それは、何もかもを欲しがるほどの欲深さを身に付けてしまったから。。。 ロイヤルティ・アイランドを支える船長達が、町を、自分達の生活を守るためにとった行動は欲深さだったのか。 人が成長し大人になる過程、または責任を果たそうとする中で純真さ、善良さを手放し黒きものを手にしてしまうことの切なさを感じた。 ましてや、行為の矛先が、いけ好かないもので同情や憐憫を感ずるには程遠い場合とあっては。 ただそうは言ってもその矛先ですら、自らの悪意に100%責任があるわけではないのだ。。 正解のない問題を抱え、惑い、出した答えに囚われ続ける人々の悲しい物語。

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2021/10/16

まずはタイトルが秀逸。長編だけどアメリカ短編小説家の系譜に連なるような作風。と思ったら父は「シカゴ育ち」のスチュアート・ダイベック。 いつも天気が悪くてパッとしない片田舎の港町と、そこで暮らす人々を支えるアラスカの荒れ狂う海。そんなイメージの中をサンタクルーズからやってきた母は父...

まずはタイトルが秀逸。長編だけどアメリカ短編小説家の系譜に連なるような作風。と思ったら父は「シカゴ育ち」のスチュアート・ダイベック。 いつも天気が悪くてパッとしない片田舎の港町と、そこで暮らす人々を支えるアラスカの荒れ狂う海。そんなイメージの中をサンタクルーズからやってきた母は父が母のために拵えた地下室のスタジオでLPレコードを聴いているのだった。 ポケミスには似合わない、やるせない青春物語。個別の小さなエピソードは素晴らしいのだけど、長編ならではのダイナミックさも欲しかったな。 「昔々フリント船長が…」で始まる父の創作話は、子供の頃に僕の父が毎晩お風呂で物語を話してくれたことを思い出す。残念ながら話は覚えてないけど「最後に一緒に入る時に血湧き肉躍る話をしてやるよ」って言ってたことは覚えてるよ。 3.8

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2016/02/25

タイトルに惹かれて読みました。描写のひとつひとつが丁寧で、ゆったり読めるお話だなと思いました。ミステリだけどあったかく読めるかなと思いきや、という展開と、少しだけ正気ではなくなった人の痛々しさが一番印象に残りました。好きな場面や台詞がたくさんあるお話だけど、所々に出てくる悪人とは...

タイトルに惹かれて読みました。描写のひとつひとつが丁寧で、ゆったり読めるお話だなと思いました。ミステリだけどあったかく読めるかなと思いきや、という展開と、少しだけ正気ではなくなった人の痛々しさが一番印象に残りました。好きな場面や台詞がたくさんあるお話だけど、所々に出てくる悪人とは、というテーマは、なんていうか、つらい。展開はゆっくりだけど好きなお話でした。

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2013/06/01

うーん、これはあまり楽しめなかった。印象的な場面やエピソードはいくつかある。でも、こういうとてもアメリカ的な家族(特に父と子)の愛憎を描いたものにほとんど興味が持てない。親も子も「独立した一個人」でなければならないというのは、えらくしんどいものであろうなあと思う。アジア的なベッタ...

うーん、これはあまり楽しめなかった。印象的な場面やエピソードはいくつかある。でも、こういうとてもアメリカ的な家族(特に父と子)の愛憎を描いたものにほとんど興味が持てない。親も子も「独立した一個人」でなければならないというのは、えらくしんどいものであろうなあと思う。アジア的なベッタリが私は性に合う。

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2013/02/18

図書館より 漁業で成り立つ小さな町を舞台に、ある犯罪に関わった少年の回顧録調で進む小説。 丁寧に情緒豊かに描かれる少年の心情、少年から見た町の人たちの様子がとても丁寧。読んでいる自分もゆっくりと作品の世界観、すこし閉鎖的な少年とある人物の関係に沈み込んでいくような印象を受けまし...

図書館より 漁業で成り立つ小さな町を舞台に、ある犯罪に関わった少年の回顧録調で進む小説。 丁寧に情緒豊かに描かれる少年の心情、少年から見た町の人たちの様子がとても丁寧。読んでいる自分もゆっくりと作品の世界観、すこし閉鎖的な少年とある人物の関係に沈み込んでいくような印象を受けました。 ただ面白くなるまでの助走が長い……派手な展開で魅せる、とういうミステリでないのは、序盤でなんとなくわかりましたが、それでも少し退屈でした。 でもラストはなかなかの衝撃でした。文章の感じも嫌いというわけでもないので、これがデビュー作だとすると少し気になる存在の作家さんになりそう。

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2012/12/21

うーん、着眼点というか、ベースのアイデアはいいんです。こういう視点のこういう展開のものはとても好き。でも、なんか、盛り上がりにかけるというか、盛り上がりを感じるタイミングが遅い…。 あと前半は母親がとても大きな存在だったのに、後半家を出てからの母親の存在感がとても薄い。あれだけキ...

うーん、着眼点というか、ベースのアイデアはいいんです。こういう視点のこういう展開のものはとても好き。でも、なんか、盛り上がりにかけるというか、盛り上がりを感じるタイミングが遅い…。 あと前半は母親がとても大きな存在だったのに、後半家を出てからの母親の存在感がとても薄い。あれだけキーパーソンとして描いたんだから、後半にももっと母親の陰を感じさせる展開にできなかったものか。 とても惜しい作品でした。

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2012/12/11

厳冬のアラスカでの漁に頼って生きているアメリカ北西部の小さな町。 漁船団のオーナーが亡くなり、唯一の相続人である放蕩息子は全てを売却すると表明した。 漁師たちは自らを守るため犯罪に手を染めようとしているが…。 主人公は14歳の少年・カル。 カルを初め、家族、周囲の人々、町の様子...

厳冬のアラスカでの漁に頼って生きているアメリカ北西部の小さな町。 漁船団のオーナーが亡くなり、唯一の相続人である放蕩息子は全てを売却すると表明した。 漁師たちは自らを守るため犯罪に手を染めようとしているが…。 主人公は14歳の少年・カル。 カルを初め、家族、周囲の人々、町の様子などを丁寧に描いている。 静かに静かに進む物語。 心温かに終わろうかという終盤にまさかの衝撃に見舞われる。 思わず声が漏れた。 キャッチーなタイトルといい、この結末といい、誰かと語りたくなる。そんな作品。 それにしても新生ポケミスはすごい作品を次々と出してくるなぁ。 いわゆる純粋なミステリにこだわっていないあたり、どこまで行ってしまうのか楽しみで仕方がない。

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2012/11/14

こりゃ、まいった。タイヘンだ。 すごい。素晴らしい出来だ。 まず丹念である。町やそこに住む人々、冬の海で行われる生業であるカニ漁、そういったものを丹念に描写する。主要な登場人物の1人1人の、影までくっきりと見せてくる。 ストーリー自体は、どちらかというと地味である。テンポもゆ...

こりゃ、まいった。タイヘンだ。 すごい。素晴らしい出来だ。 まず丹念である。町やそこに住む人々、冬の海で行われる生業であるカニ漁、そういったものを丹念に描写する。主要な登場人物の1人1人の、影までくっきりと見せてくる。 ストーリー自体は、どちらかというと地味である。テンポもゆっくりめ。 でも、ゆっくりであることで、読む人が町の一員とならされる。 選曲がいい。カルの母親のコレクションがとてもいい。 産まれた時からの悪人、根っからの悪人なんていない。(いるのだろうか?) 世で起きる多くの悪事を見るにつけ、この人も子どもの時から悪人だったわけではなかろうに、と思わずにいられない。 作者の「いい人間や、普通の人間が、なぜ悪事に手を染めてしまうのだろう?」という疑問に共感する。そしてその一つの答えにも。 いや、きっと答えなんてないんだ。ラストの8行が生きる。 お父さん(スチュアート・ダイベック)もさぞやご満足でしょう、と思わずにいられないデヴュー作である。

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2012/11/02

アイオワ・ライターズ・ワークショップはよく聞く名前だ。 これがデビュー作だなんて、 今後が楽しみな作家が出てきた。 カルを中心とした人びとの細やかな心情の描写や、 別件のエピソードを丁寧に描くことで、 各人物像が鮮明に浮かび上がる。うまい。 善良なはずの人達にもあるダークサイドの...

アイオワ・ライターズ・ワークショップはよく聞く名前だ。 これがデビュー作だなんて、 今後が楽しみな作家が出てきた。 カルを中心とした人びとの細やかな心情の描写や、 別件のエピソードを丁寧に描くことで、 各人物像が鮮明に浮かび上がる。うまい。 善良なはずの人達にもあるダークサイドの物語を、 少年を中心に据えることにより、 作品がより一層輝きを増したように思う。

Posted byブクログ