怖い俳句 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
「ぼんぼん彩句」のあとがきで、 宮部みゆきがこの本を読んで俳句の世界に魅せられたと書いてあったので。 面白かった。 俳句と言えば学校で習った有名どころしか知らなかったので、 こんな俳句もあるんだ、というのが正直な感想。 だが、紹介されている俳句の数が多く、 怖くて不気味で意味不明なこともあって、かなりの消化不良。 それと、著者がたとえにちょくちょく絵画を出してきて、 それを調べるのに忙しい。 私が怖かったのは、 稲妻に道きく女はだしかな 泉鏡花 夕焼けや みな殺されて 歩きだす 岩片仁次 実際に溺れた同僚を助けて水死した河本緑石の俳句も怖かった。 死んで俺が水の中にすんでる夢だつた あと面白かったのは、 府中の猫はこれは嘘だがぜんぶ片目 前島篤志
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超多面体である俳句の中で怖い俳句というのは一面でしかない、という言葉が後書きにあったけど、その「怖い」も多面的であると感じた。写実的であったりシュールレアリスムであったり、SFめいていたりする「怖さ」。それらは俳句という最短の文学ととても相性がいい。
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先日読んだ「怖い短歌」の姉妹書で、著者である倉阪鬼一郎基準で選ばれた古今の怖い俳句を集めたアンソロジー。(刊行はこちらの方が先) 読み比べてみると短歌に比べて文字数が少ない分、描写がよりタイトで読み手の想像の入り込む余地が多く「怖い」。 収録されている句では渡辺白泉の「戦争が廊下...
先日読んだ「怖い短歌」の姉妹書で、著者である倉阪鬼一郎基準で選ばれた古今の怖い俳句を集めたアンソロジー。(刊行はこちらの方が先) 読み比べてみると短歌に比べて文字数が少ない分、描写がよりタイトで読み手の想像の入り込む余地が多く「怖い」。 収録されている句では渡辺白泉の「戦争が廊下の奥に立つている」や高柳重信「六つで死んでいまも押入れで泣く弟」、津田清子「ホントニ死ヌトキハデンワヲカケマセン」などが良い。 しかし川柳の方が季語などの成約がない分、「怖い文章」という意味では有利なのかもしれない。草地豊子「蛇口からしばらく誰も出ていない」「解体は終わり頭が売れ残る」、樋口由紀子「三角形のどの角からも死が匂う」
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世界最短の詩文学・俳句は同時に世界最恐の文芸形式でもあります。日常を侵犯・異化するなにか、未知なるものとの遭遇、人間性そのもの…作品の中心にある怖さはそれぞれですが、どれも短いがゆえに言葉が心の深く暗い部分にまで響きます。一句二句、暗唱して秘められた世界に浸ってみてください。不思...
世界最短の詩文学・俳句は同時に世界最恐の文芸形式でもあります。日常を侵犯・異化するなにか、未知なるものとの遭遇、人間性そのもの…作品の中心にある怖さはそれぞれですが、どれも短いがゆえに言葉が心の深く暗い部分にまで響きます。一句二句、暗唱して秘められた世界に浸ってみてください。不思議なことに、そこはかとない恐怖がやがてある種の感動へと変わるはずです。数々のホラー小説を手がけ、また俳人でもある著者が、芭蕉から現代までたどった傑作アンソロジー。(裏表紙) 基本的には575の17文字なんだから、確かに「世界最短だわな」と改めて思う。 とはいえ、17文字の世界のなんと広いことか。テーマの「怖い」一つとっても、様々なシチュエーションが展開されている。 興味深い分野だから次のを…と思うんだけど、なかなかないなぁ。そも詩集自体見かけないし。
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俳句って、なんか、いいもんだなと思った。俳句は写真に似てるかもね。描写しつつ仄めかす。俳句の世界に興味を持たせてくれたいい本でした。
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怖いものが好きというよりも俳句が好き。あの短く切り詰められた形式は、長い文章よりも人の想像力をさまざまに刺激するからこそ、見えない世界の怖さを感じさせる作品も多いのだろう。怪奇趣味のものだけでなく芭蕉から今日まで幅広い句集を渉猟して紹介した編者の労力がすごい。以下、個人的に印象に...
怖いものが好きというよりも俳句が好き。あの短く切り詰められた形式は、長い文章よりも人の想像力をさまざまに刺激するからこそ、見えない世界の怖さを感じさせる作品も多いのだろう。怪奇趣味のものだけでなく芭蕉から今日まで幅広い句集を渉猟して紹介した編者の労力がすごい。以下、個人的に印象に残ったものをいくつかメモ。 流燈やひとつにはかにさかのぼる(飯田蛇笏) 人殺ろす我かも知れず飛ぶ蛍(前田普羅) 死にければ闇たちこむる蛍籠(山口誓子) 包帯を巻かれ巨大な兵になる(渡邊白泉) 萬緑や死は一弾を以て足る(上田五千石) 野遊びの児を暗き者擦過する(永田耕衣) 鶏殺すこと待て海を見せてから(大原テルカズ) 鶏しめる男に雪が殺到す(橋本多佳子) この樹登らば鬼女となるべし夕紅葉(三橋鷹女) ひとりゐて刃物のごとき昼とおもふ(藤木清子) もう一度 核爆発の閃光(ハトがでますよ)ハイ、チーズ(高橋龍)
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寺山の歌集に衝撃。 しかし頭の悪い高校生ゆえ季語を知らない。 切れ字もぴんとこず。 とはいえ川柳というと言葉が低俗な印象。 やっぱり俳句より短歌だ、 俳句ではわずかに山頭火くらいだな、 とまったく無駄なこだわりを持ち続けていたが、 まったくの誤りであると眼を見開かされた。 言葉...
寺山の歌集に衝撃。 しかし頭の悪い高校生ゆえ季語を知らない。 切れ字もぴんとこず。 とはいえ川柳というと言葉が低俗な印象。 やっぱり俳句より短歌だ、 俳句ではわずかに山頭火くらいだな、 とまったく無駄なこだわりを持ち続けていたが、 まったくの誤りであると眼を見開かされた。 言葉少なく指し示すことの豊饒さ。 ホントニ死ヌトキハデンワヲカケマセン
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似たような感じで先行ヒットした桐生操『ほんとうは怖いグリム童話』や中野京子『怖い絵』みたいな「あの有名な作品に実はこんな怖い意味が…」というのとは違うが、俳句にもいろんな味わいの作品があるんだと知ることができて面白かった。
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買ってから、あれーまた怖いの買っちゃったよー。なぜ、わたしは怖いものに惹かれるのかなーとしみじみ考えながら読みました。芭蕉から、現代までの怖い俳句の数々。ひとつひとつ読んでいくと、これはあんまり怖くない、わぁ!これはゾッとするなぁ。と自分の嗜好がわかってきます。説明が付与されない...
買ってから、あれーまた怖いの買っちゃったよー。なぜ、わたしは怖いものに惹かれるのかなーとしみじみ考えながら読みました。芭蕉から、現代までの怖い俳句の数々。ひとつひとつ読んでいくと、これはあんまり怖くない、わぁ!これはゾッとするなぁ。と自分の嗜好がわかってきます。説明が付与されない不安、分からなさ、ぽんと放り出された不条理。そういった怖さに俳句の形式はぴったりです。
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【怖い~を読む―2】 いそうでいない…とか、見えそうで見えない… ってのが、「怖さ」を引き起こすんだろうなぁ。 俳句は17音…すべてを語るには短すぎる… わかりそうでわからない…う~む、やっぱり怖い… 本書にもあるように… 「鑑賞する主体によって、感じる怖さはおのずと違ってきま...
【怖い~を読む―2】 いそうでいない…とか、見えそうで見えない… ってのが、「怖さ」を引き起こすんだろうなぁ。 俳句は17音…すべてを語るには短すぎる… わかりそうでわからない…う~む、やっぱり怖い… 本書にもあるように… 「鑑賞する主体によって、感じる怖さはおのずと違ってきます。」 …というわけで、ボクが怖いぃ~と思ったのは、 こんな句でした…絞りに絞って10句… 稲妻に道きく女はだしかな 泉鏡花 戦争が廊下の奥に立つてゐた 渡邊白泉 葱を切るうしろに廊下つづきけり 下村槐多 うしろとは死ぬまでうしろ浮き氷 八田木枯 不安な世代完全な形で死ぬ電球 上月章 水を、水を、水の中より手がそよぎ 坂戸淳夫 呪う人は好きな人なり紅芙蓉 長谷川かな女 六月の皿に盛りたる人の顔 栗林千津 きみのからだはもはや蠅からしか見えぬ 中烏健二 かあさんはぼくのぬけがらななかまど 佐藤成之 怖いもの見たさで一気に読んじゃったけど、 ふと気がつけば、この本…俳句の世界を概観できるように なっています…そして、人の心に蠢く闇のありようも…まさに、 本書で語られることのすべてがある世が「怖い」のかも…
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