ステノグラフィカ の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
国会速記者の碧(へき)の仕事は、耳をそばだて議員の発言を一字一句逃さずに書き留めること。自分の気配を消し、耳と目と手と頭だけを働かせる。 そんな碧が書き留めたいと思う声の持ち主がいる。 明光新聞社政治部記者の西口だ。 美声ではないけど、滑舌がよく、センテンスの区切りが明瞭。がさつな印象だが、不思議と下品ではない。後輩にも慕われ、よく下世話な話に興じている。最初に気になったのは声だけだけれど、次第にその人となりに興味を持つようになる。 ちょっとしたきっかけで言葉を交わすようになったふたり。 碧と同様に、西口の方でも 物静かで地味だけど、楚々とした碧に好奇心を抱いていた。 そのまっとう過ぎるほどまっとうで、何事もスルーしない性格。聞き上手で、情が深く、知らぬ間にスルッと入ってしまうような懐の深さ。 いつしか惹かれあうようになる。 このふたり、静と動というか、われ鍋にとじ蓋というか、お互いにないものを補えるようないい関係だと思う。18才もの年齢差を全然感じさせない。碧が老成してて…ww 西口は、碧が最初に思っていたよりも、ずっとナイーブでプライドが高くて、でも少し臆病で、ズルくて、大人って面倒くさいなって思う。 プライドとか矜持とかしがらみとか未練とか。色々あるんだなって。 大人だから、愛とか恋とかばっかり言ってられない。 でも、大人だって、やっぱり恋をするんだ。ただネズミ花火みたいにクルクル跳ね回れないだけで。 キラキラした高校生カップルみたいな、目がつぶれそうな眩しさはないけど、静かに胸をキュッと捕まれるような、そんな恋もいいかも。 一穂さん作品の中でも、これが大好きとは言わないけど、『Off you go』の空気を踏襲するような大人の難しさみたいのは悪くなかった。 でも、萌えとかトキメキとかキュンはなかった気もする。 ところどころ、小技はきかせていたのだと思うけど、攻も受も個人的にいまいちストライクゾーンじゃないので、心に響かなかったのかな。
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