功利主義入門 の商品レビュー
とあるところで紹介されていたので読んでみました。 功利主義というと、「最大多数の最大幸福」の実現を目指す考え方と思えばよいのですが、「最大多数」が誰を指すのか、そこから漏れた人はどう扱うのか、「幸福」とは何か、「最大幸福」にあたって「幸福」は数値化できるのか、など、いろいろと実...
とあるところで紹介されていたので読んでみました。 功利主義というと、「最大多数の最大幸福」の実現を目指す考え方と思えばよいのですが、「最大多数」が誰を指すのか、そこから漏れた人はどう扱うのか、「幸福」とは何か、「最大幸福」にあたって「幸福」は数値化できるのか、など、いろいろと実現にあたって定義すべき問題があります。 また、「最大多数の最大幸福」の考え方が広く知られるようになってから200年ほど経ちますが、この200年の間で科学(とくに生命科学で中でも脳科学、あるいは心理学)が大きく進歩した結果、倫理学や哲学(道徳哲学)においても、科学の知見を取り入れざるを得なくなってきており、功利主義は、どんどん洗練されてきています。 そういった経緯をわかりやすく丁寧に説明してくれているのが本書、といえると思います。 著者が言うには、本書は、入門書としてまだまだ難しいようで、さらなる入門書を紹介するなど、そういった面でも親切な一冊です
Posted by
2023.3.4読了。弟子筋の人に教えてもらって読み始めた本。功利主義についてはあまり理解できていない部分が多かったが本書でざっくりと、功利主義の形成の流れについて知ることができた。
Posted by
読みやすくて、倫理学の知識を体系的に学ぶ事が出来た。引用してくる倫理学者の古典文章を、わかりやすい所を分かりやすく引っ張ってきてくれてるのが助かります。今まで麻薬で出す快楽と、知的活動で得られる快楽の違いをずっと考えていたけど、本文の「それが客観的な快楽かどうか」という文書で何と...
読みやすくて、倫理学の知識を体系的に学ぶ事が出来た。引用してくる倫理学者の古典文章を、わかりやすい所を分かりやすく引っ張ってきてくれてるのが助かります。今まで麻薬で出す快楽と、知的活動で得られる快楽の違いをずっと考えていたけど、本文の「それが客観的な快楽かどうか」という文書で何となく腑に落ちた。 相対主義批判の矛盾 根本的ルールは同じ 自然は正しいの? ジレンマに対して備えておく より洗練された倫理 共感 反感の原理 自分の好きなことだけ ベンサム 道徳と"立法"の諸原理序説 帰結主義 行為の帰結を評価 幸福主義 幸福だけが内在的価値を持つ ゴドウィン 政治的正義 婚姻制度批判 「わたしの」という発想をなくせ 公平性 結婚後は変わる 家庭の人間関係のうちに暮らす人は、他の人に快を与える機会を持つ 規則的功利主義 規則や義務に2次的に採用 間接功利主義 行為功利主義 個々の行為に ゴドウィン 道徳的に重要な違いがあれば 異なる仕方で ピーターシンガー 貧しい国への援助 最大多数はどこまで含むのか 公共政策における功利主義 最小不幸社会 トリアージ 優先度 ロールズ「功利主義は人格の個別性を無視する」どんぶり勘定 長い目で見たら ミル 自由主義的 長期的に見て社会全体が幸福に ロックの自然権は根拠 他者危害原則 チャドウィック 権威主義的 パターナリズム 当人の意思に関係なく、当人の利益のために どこまで正当化されるか リバタリアンパターナリズム ナッジ 人間は合理的に行動しない 人々を取り巻く環境を変更して自然と正しい選択肢を 高級な快楽とは 高級な苦痛は 快楽ソムリエ マトリックスは幸福? 我々は客観的にも幸福でありたい 快楽とは選好 選好功利主義 適応的選考の形成 選好の充実が幸福なのか 吾唯知足 厚生功利主義 特定の命を救うことに大きな共感 募金 思考は直観的な経験的システムと分析的システム mri デブトロッコ実験 落とす派は認知的活動を司る脳の部位が活性化 落とさない派 感情を司る脳が活発 ビル・ゲイツの寄付のやり方 j美
Posted by
「功利主義」という言葉の意味が全くわからなかった初学者であった私。 この本を読んで、大枠を掴むことができた。 人類が進化しているのは技術だけでなくて、倫理の面もだということを実感した。
Posted by
功利主義入門にふさわしい。実例を挙げながらわかりやすく功利主義の全体像や、ベンサム、ミルの思想に加え、リベラリズムとの関係性なども説明されており、スッキリとした内容になっている。
Posted by
世間の功利主義者への風当たりは強い。「最大多数の最大幸福」をスローガンに掲げる功利主義者は、みんな(つまり多数派)の幸福を大事にするから少数派を置き去りにするし、権威主義的で非道徳的だと。いやいや、まあ急進的な原理主義的功利主義者はそうかもしれないけれど、功利主義ってそんな悪魔の...
世間の功利主義者への風当たりは強い。「最大多数の最大幸福」をスローガンに掲げる功利主義者は、みんな(つまり多数派)の幸福を大事にするから少数派を置き去りにするし、権威主義的で非道徳的だと。いやいや、まあ急進的な原理主義的功利主義者はそうかもしれないけれど、功利主義ってそんな悪魔の経典みたいなんじゃなくてね、という話。直感的には、目の前の困っている人を助けてあげたいけれど、国を統治する人がそれをしていたらキリがないですね。むしろ、統治者の目に見えていない人たちが犠牲になっている。そのための指針として「最大多数の最大幸福」という基準で測ってみるのはどうですか?ほとんど無視されていた労働者、奴隷、女性などの多くの人々の幸せを等しく勘定に入れましょうよ、という考え方です。原理主義的になりすぎるとどうかと思いますが、真っ当な指針だと思いませんか? 本書では、功利主義の説明に続いて、幸福と快楽の関係性や、「人間は非合理的な意思決定を行いがちだ」という心理学的・行動経済学的な知見にもとづいた考え方と功利主義の関係についても解説されています。全体的に読みやすく、小ネタも面白くて好き。最後の「ブックガイド」もおすすめです。
Posted by
道徳科の勉強のために読みました。 今まではトロッコ問題とかについて話すと主観のぶつけ合いだったのですが、 理論的に倫理学について学ぶことで、 客観的な判断基準が出来ると思いました。
Posted by
倫理とは何か、について、功利主義という主義に入門してざっと全体を眺めてみようじゃないか、という本。 最近、自動運転で流行りのトロリー問題から始まり、豊富な例題と読みやすい文体で一気に読んでしまった。 功利主義とは、簡単に言ってしまえば快楽の総和を最大化することが目的であり、純...
倫理とは何か、について、功利主義という主義に入門してざっと全体を眺めてみようじゃないか、という本。 最近、自動運転で流行りのトロリー問題から始まり、豊富な例題と読みやすい文体で一気に読んでしまった。 功利主義とは、簡単に言ってしまえば快楽の総和を最大化することが目的であり、純粋に言えばトロリー問題で言えば迷わず5人の命を救うのだろうけど、実際に功利主義の原理主義みたいな、最大幸福の実現のために少数を犠牲にするような考え方は古く、その起りもむしろ少数のないがしろにされている人間も平等に扱うべきだというところがあることが理解できた。また、それに対する批判もあった上で、どう変遷していったかがわかりやすい。 特に興味深かったのが公衆衛生の章。この本はコロナ以前に書かれた本だが、政治と功利主義の関係性について現実と照らし合わせるとよく理解できた。コロナに罹患した状態、というのをどう定義するかによるけれども「他人に危害を与える状態」という立場をとれば確実に公衆衛生上隔離や強制的な治療といった措置は免れないし、ただしその場合でも功利主義の最大幸福のために公権力からの個人への介入をどれだけ許容するのか、という議論になる。ほぼ最大限に介入しているのが中国で、自由主義を極端にいっているのがアメリカ、ととらえられるかなと。日本は、というと、その中間というか、自粛という言葉も何もかも「ナッジ」という考えで実行されているとするとある程度は納得できるかなと。公衆衛生は守りたいのでコロナがうつりやすい状況は変えたい(緊急事態宣言や自粛)が、個人の自由は最大限に尊重したいのでその環境は整える(GoTo)みたいな。まあ、ただそのやり方がどこから見ても非常にまずいという気はするけれど、極端な立場から批判できるものでもないかなという気はする。 参考文献も面白そうだったので、倫理学というか功利主義についてもうちょい理解を深めてみたい。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
幸福を考える上での功利主義の立ち位置がよくわかった。 個人の効用を高めるのにリバタリアン・パターナリズムが有効というのはなるほどと思った。個人の自由意志を尊重しつつ選択肢を提示するのは確かにそうだし、政府の役割が「最小不幸社会」を目指すべきというのも納得。 結局、絶対的・定量的に幸福度を測るものはないのだから、一人一人が正しいと思うものを選択して、それで満足のいく結果が得られることが重要だと思う。そのために、適切に判断する能力や選択したことに対して責任を持った多王をしたいと思った。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
思想が誤解されがちな功利主義を改めて入門する本であると同時に倫理学の入門書として本書は位置付けられています。結婚制度に絶対反対の立場であったゴドウィンがウォルストンクラフトと結婚することで転向し、結婚制度に積極的な態度をとるようになったエピソードはとても面白かったです笑 2人から生まれた子供がフランケンシュタインの著者で有名なメアリー・シェリーで近代フェミニズムの先駆けとなった母親の意志を受け継ぎ(当初母国の英国では全く受け入れられなかったけれど)、フランケンシュタインの中で家庭の天使とされた女性を批判し、フェミニズムを見事に描き出しています。 本書中では、倫理学の分野ではもはや忘れ去られている?幸福論についても言及が行われています。幸福とは何かについて再度問いをたて検討を行っています。著者の見解では、政治レベルでは最大幸福原理を追及、個人レベルでは時には己の際限なき欲求を戒めつつも、自分が現に持っている欲求を追及すべきだそうです。 うーん全ての人間の欲望が満たされるのが先か、地球が人類が真っ当な生活を送れる水準を保てなくなるのが先か、もはや地球環境レベルの話もふまえて議論していくべきかなと個人的には思います。 いわゆる先進国における欲望の肥大化を戒め、他の国々・地域に資源の分配を行うのであればすぐにでも達成できそうな話ですが・・・。本書中でも心理的麻痺の話がありましたが、意外とそこまで考えが至る人がまだまだ少ないということですかね。 また本書末のブックガイドが良かったです。次読む本の参考にしたい。 ところでJ美さんは序盤と最後以外全く出てこなかった気がしますが気のせいですか?
Posted by