戦争体験 の商品レビュー
戦争は将校や兵士たち軍人だけでなく、一般市民の心の奥にも大きな傷を負わせた。わたしの父も東京大空襲の夜は南の空が真っ赤だったと、埼玉に居ながら幼い頃の記憶を持ち続けている。埼玉の片田舎にも進駐軍として米国兵士が来ていた事も覚えている。この時代は食料もなく親族を軍に捧げるなど、どの...
戦争は将校や兵士たち軍人だけでなく、一般市民の心の奥にも大きな傷を負わせた。わたしの父も東京大空襲の夜は南の空が真っ赤だったと、埼玉に居ながら幼い頃の記憶を持ち続けている。埼玉の片田舎にも進駐軍として米国兵士が来ていた事も覚えている。この時代は食料もなく親族を軍に捧げるなど、どの家庭も何らかの形で戦争の影響を受けている。勿論それらは大半が辛く悲しい想いであろう。 本書は朝日新聞社に寄せられた戦争体験を綴った内容となっている。主に戦場体験よりも一般市民のものが中心となっており、特に戦地に夫や親族を兵隊として取られた後に残された妻の記憶や、当時まだ幼かった人々の記憶も多く含まれる。 特に空襲を扱った章は地獄の様な凄惨なシーンが脳裏に深く刻まれる、読み進めるのが辛いほど惨たらしい現実がそこに見える。 その他、満州からの引き上げも、戦後の食糧難についても母親の子に対する愛情を深く感じられる記憶が多い。引き揚げ船で泣き叫ぶ子を守る母親、残飯を漁り笑顔で頬張る子供を見て人知れず涙する母親。満足に食べさせる事もできず、痩せ細っていく子供を見た母親の悲しみも想像に耐えられない。 兵士たちの記憶では仲間が戦場で飢えで亡くなっていく姿や、銃撃されて目の前で消し飛ぶ姿など、戦後も長く記憶から消えずに、時には夢に魘される。現代戦争でもあまりに凄惨な状況に陥ると精神が崩壊し、戦後も長い間苦しむ兵士は多い。十分なケアが制度化されていない昭和2、30年代なら今よりももっと状況は酷かったであろう。さらにそれを見る家族の苦しみも大きかったであろう。 本書後半はシベリア抑留も多く扱っており、1956年に最後の引き上げ船が出るまで長いと10年以上も強制労働に従事していた。中にはソ連崩壊まで帰国できなかった人もいるとのこと、大半の人生を兵士と捕虜として生きた人々もいた。なお私も幼い記憶でニュースで満州の残留孤児問題が流れていたのを記憶している。 戦争は戦時の悲惨さだけではなく、その後の食糧難や戦争孤児、抑留者など長期に渡り人々を苦しめ、そして心も肉体も破壊し続ける。 まだ世界中ではウクライナ戦争だけでなく、内戦含め数十の戦争が現在進行中で発生している。過去に日本人が体験した悲惨な状況は世界各地で続いている。戦争がなくならない限り、同じ様な悲しみや苦しみはどこかで続く。戦後80年近く過ぎようとしている。寄せられた手紙の中に現代の学生が伝えていく事の大切さに触れている。 生の声を聞ける時間はそう長くないかもしれないが、過去に起こした戦争を記録し、記憶として残すことが重要だ。G7首脳は広島の原爆資料館で何を思ったであろうか。
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年を取った人は、それだけで耳を傾けるべき何事かを持っていると、少し前までは思ってた。誰でもそれぞれに語れる何かは持っている。でも、耳を傾ける価値のある人はごくわずかだ。 現代の私には理解しがたい教育を受けた人の中には、年を取っても眉をひそめたくなる考え方をする人が多い。
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戦争体験をした世代から戦争を知らない世代まで幅広い年代の読者から朝日新聞に寄せられた戦争の話の投書。私は戦争を知らないうえに戦争を経験した世代から話を聞く機会がないため、この本を手にとって読んだがリアルすぎて苦しくなる。それほど、戦争というものは重いのだと感じる。
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きっともう経験することはないだろう戦争の体験記を生々しく語った本。 このような過酷な状況にありながらも、必死で生きようとし続けた人々がいる。落ち込んだ時や「もう死にたい」と思った時に読むと、自分の辛い状況なんかちっぽけなものに思えてきて、元気づけられます。 一番印象に残...
きっともう経験することはないだろう戦争の体験記を生々しく語った本。 このような過酷な状況にありながらも、必死で生きようとし続けた人々がいる。落ち込んだ時や「もう死にたい」と思った時に読むと、自分の辛い状況なんかちっぽけなものに思えてきて、元気づけられます。 一番印象に残ったのは、旧日本陸軍の秘密特攻隊「マルレ」の話。中学生くらいの若者がベニヤ板製の小型艇に爆雷を積んで敵艦めがけて体当たりしていくのです。 戦争経験者が少なくなっていっても、この戦争・敗戦の体験があってこそ今の栄えた日本があるということは、永遠に語りつがれていくべきだと思います。
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朝日新聞社の読者の声「語り続ぐ戦争」が一冊の本になり、 2012年7月に発売。 戦争末期における庶民の生活、軍部参謀とは逆の立場の軍人から見た 軍国教育、天皇の位置づけ、人と見なさない大本営。 大陸や半島で日本軍がおこなったこと、戦後の混乱、引き上げ、 飢餓、そして紙一重の生...
朝日新聞社の読者の声「語り続ぐ戦争」が一冊の本になり、 2012年7月に発売。 戦争末期における庶民の生活、軍部参謀とは逆の立場の軍人から見た 軍国教育、天皇の位置づけ、人と見なさない大本営。 大陸や半島で日本軍がおこなったこと、戦後の混乱、引き上げ、 飢餓、そして紙一重の生死。 どれも戦時中の事と片づけられない現実がそこにあった。 第二次世界大戦は、日本の学校では出来事の羅列を教えられる。 そこで、何が起き、どんな背景で起こったか詳しい事は習わない。 3学期中に終わらないから・・・・。 よって、中学校ではほんの数ページで昭和時代は終わる。 この本は、現実味を帯びている。身近に感じた。 なんとか後世に伝えたいとの思いが伝わってくる。 戦争を知らない世代として、 日本人として、子孫に伝えていきたい良書。 なぜ、1億玉砕といえども、 必ず死ぬ特攻隊等に15,6の少年が進んで志願するのか今まで分からなかった。まだほんの子供ではないか。 しかし、この本を読んで、軍国教育は軍国少年を育み 国の為に、天皇の為に命をささげることがすべてであることが初めて身にしみて理解できた。今までは知っていただけだった。 一人でも多くの人に読んでいただきたい良書。 終戦頃、最近になって毎年軍部参謀達の肉声テープや大本営の特集をやっているのを見る。 いかに、現場と乖離していることか。彼らは戦時中に死ぬことはない、飢えもない。各国から揶揄される、上層部は、最低、現場は、最高の働きとはこの事か。 天皇下にあった、「統帥権」という化け物。 戦争に突入し、泥沼化した背景をもっとマスコミは取り上げてもよいと思う。事象は、必ず風化し、歴史は繰り返すのだから。 今でも聖戦争という名のイラク戦争、アフガン内戦、シリア内戦が勃発し、平和とテロ撲滅をうたう大国が介入している。 平和を祈る国がある一方で、 今でも内戦が続き憎しみが生まれ数式の計算の例えを、 銃と相手国の住民に例え、何人殺せたかと教える国もたくさんある。 憎しみは、憎しみしか生まないことを、戦後の 史実を見ただけでもよくわかる。 ☆ 私には、韓国・中国の友人がいるが、詳しく一章かけて学ぶそうだ。 日本人の学生が知らない過ぎて、カルチャーショックを受けることもあると悲しく言う。 これがいわゆる歴史問題の一端。 韓国に行き、友達の家にホームステイしたとき、おばあさんがいた。 日本人の私少女を初めて見たのだと思う。ずっと私を見ていた。 別れ際に、優しい笑顔で日本語でさようならと言われた。 涙が止まらなかった。 しかし私の祖父母は、交流が理解ができません。 それが教育だったと。 悲しい現実ではあるが、私達から変わらなければならない。 この話もいつか孫に伝えよう。
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