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発送電分離の政治経済学 の商品レビュー

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2013/06/09

 筆者は、「発送電分離は必ず実施すべき」、という立場から、海外の電力改革の経緯を丁寧に調べたうえで、発送電分離メリットありというデータを引っ張り出して、改革案を提示している。 ここまでの調査結果は、評価に値するが、筆者の論理が成立するには、仮定条件が多すぎる。  例えば、発電、小...

 筆者は、「発送電分離は必ず実施すべき」、という立場から、海外の電力改革の経緯を丁寧に調べたうえで、発送電分離メリットありというデータを引っ張り出して、改革案を提示している。 ここまでの調査結果は、評価に値するが、筆者の論理が成立するには、仮定条件が多すぎる。  例えば、発電、小売りが自由に競争が始まれば電気代は下がるという点について、現在、発電、送電、配電、販売のコストは、ひとつの社内で行うため、経費は一度しかかからないが、分離後は、重層的に独立会社が経費をかけるので、結果、高くつくのではないか。  自由化の前提は、コストのパススルーであるとされる。 ところが、海外でも、公共料金には、政治の介入が繰り返され、結果、事業者が破たんし、電力危機を迎えている。  昨今の関西電力の値上げ査定でも、過分の政治介入により、パススルーできなかった。この状態では、諸外国と同じ道を歩むのではないか?  現在は、地域独占で問題だとされるが、分離後は、全国独占の送電会社ができる。こんな組織が経済性を発揮できるのか?  そして、最大の問題は、公正な規制機関の存在が欠かせないという点。 そんな規制機関が今までに存在したか?  学者の理想論であるという前置きをつけて、電力分野に精通する人で、発送電分離を勉強したい人は、精読してもよいだろうが、その他の人は、誤解をするので、おススメしない。

Posted byブクログ