日本はなぜ開戦に踏み切ったか の商品レビュー
今まで読んだ開戦モノの本の中でも非常に分かり易い。内閣と統帥部。軍令と軍政。開戦と外交について、とかく二元論で語られがちな開戦へのプロセスにおいて、体裁を繕うことを重視したために明るそうなシナリオとしての開戦が残ってしまい、かつそれがアメリカの思うツボだった、と理解すべきなのだろ...
今まで読んだ開戦モノの本の中でも非常に分かり易い。内閣と統帥部。軍令と軍政。開戦と外交について、とかく二元論で語られがちな開戦へのプロセスにおいて、体裁を繕うことを重視したために明るそうなシナリオとしての開戦が残ってしまい、かつそれがアメリカの思うツボだった、と理解すべきなのだろう。 最も希望を持てそうな選択肢が南方資源確保のための開戦であり、しかしながらそれは希望的観測に根拠を置く粉飾に満ちた数字合わせの所産であった…P.157のこの言葉は重い。 プリンシプル(原則)が無いと言われても仕方なかろう。また、外交か戦争かという対立軸ではなく本来なら臥薪嘗胆と戦争・外交のセットの間により本質的な対立があったという一文も重要である。
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タイトルどおり、「日米開戦」にいたる41年9月以降の政策決定プロセスを丹念にミクロにおっかけて説明した本。 「日本はどうしてアメリカを相手に負けるに決まっている戦争を始めたのだろうか?」という長年の疑問が解けたような気がする。 結局のところ、だれもが自分の部門の利益とか、メン...
タイトルどおり、「日米開戦」にいたる41年9月以降の政策決定プロセスを丹念にミクロにおっかけて説明した本。 「日本はどうしてアメリカを相手に負けるに決まっている戦争を始めたのだろうか?」という長年の疑問が解けたような気がする。 結局のところ、だれもが自分の部門の利益とか、メンツとか、責任を追いたくないとか、そういうレベルでしか考えていなくて、国全体の利益という観点で考える人がいない。 そして戦争を通じて得たいものが明確にあるわけではない。というか、これまで得た権益を失いたくないというだけ。「自衛」も立派な動機かもしれないが、どっちかというとこういう事態になったことの責任を負いたくないだけ、に見えてしまう。 残念ながら、そんなプロセスで、多分、だれも勝てると思っていない戦争がきまってしまう。勝てないけど、座して死を待つよりはいいだろうと。。。。。でも、座していたら、ほんとに死ぬのかどうかもわからないわけで。。。 こうしたことが、わかったからと言って、すっきりするわけでもなく、なんか脱力してしまった。 そして、こういうのって、今も違うテーマでやっているな〜。 政府だけでなくて、会社とかでも。
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『経済学者たちの日米開戦-秋丸機関「幻の報告書」の謎を解く-』、「なぜ必敗の戦争を始めたのか―陸軍エリート将校反省会議」参照。 以下、引用。 それでは臥薪嘗胆、外交交渉、戦争という三つの選択肢から、なぜ臥薪嘗胆が排除されたのだろうか。それは臥薪嘗胆が、日本が将来に蒙るであろう...
『経済学者たちの日米開戦-秋丸機関「幻の報告書」の謎を解く-』、「なぜ必敗の戦争を始めたのか―陸軍エリート将校反省会議」参照。 以下、引用。 それでは臥薪嘗胆、外交交渉、戦争という三つの選択肢から、なぜ臥薪嘗胆が排除されたのだろうか。それは臥薪嘗胆が、日本が将来に蒙るであろうマイナス要素を確定してしまったからであった。これに比較して、外交交渉と戦争は、その結果において曖昧だった。つまり、アメリカが乗ってくるかどうかわからない外交交渉と、開戦3年めからの見通しがつかない戦争は、どうなるかわからないにもかかわらず選ばれたのではなく、ともにどうなるかわからないからこそ、指導者たちが合意することができたのである。 ここで、改めて日本が検討した選択肢と想定された結果を整理してみよう。審議の過程で排除された英米不可分論(対英蘭戦)も含めて表3にまとめてみた(P159)。採択されなかった英米可分論と臥薪嘗胆が1と2、実際に採択された外交交渉と対英米蘭戦が3と4である。このように並べてみると、採択された選択肢が最良の結果を期待していたことが、一目瞭然である。 採択されなかった選択肢は最悪の結果を恐れて排除されていた。英米可分論は、危険な要素(英蘭の植民地を攻略したとしても、石油などの輸送ルートの横腹をアメリカに晒すことになる。アメリカが突然参戦に踏み切ったら、守る術はない)という最悪の結果が早々に選択され、日本の取りえるオプションとして排除された。もうひとつの臥薪嘗胆論は最後まで残ったが、やはり、日本の身動きがとれなくなった段階でアメリカ艦隊に来攻されるという最悪のケースへの懸念を排除できずに却下された。 一方、再検討の結果として採択された外交交渉、そしてこれが不成立の場合は戦争というに段構えの方針は、共に希望的観測を根拠としていた。その点で、最悪の想定を理由に排除された英米可分論や臥薪嘗胆とは、対蹠的である。つまあり、日本は最悪のケースに追い込まれることにおびえ、もっと最悪の事態を自ら引き寄せたことになる。もし、外交と戦争がその後の現実となった最悪のケース(外交で失敗し戦争に訴えて惨敗)を想定し、臥薪嘗胆が最良のケースを想定していたら、結論は逆になったに違いない。
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やや難しい専門的な部分もあるが、基本的にあ分かりやすくコンパクトにまとまっている。東郷や昭和天皇の関わりなど勉強になったし、あいまいにせずるをえなかった国策など、考えさせられた。
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しごく簡単に言えば,対米戦への意思決定に参加した政府+軍部の責任ある立場の者で日米戦争を本気で誘導したものは少なかったのにも関わらず,それぞれが属している組織を守り,他の組織のでしゃばりを押さえつつも最低限の顔をたて意思決定をおこなった結果,常に両論併記になり,米国(及び英国等関...
しごく簡単に言えば,対米戦への意思決定に参加した政府+軍部の責任ある立場の者で日米戦争を本気で誘導したものは少なかったのにも関わらず,それぞれが属している組織を守り,他の組織のでしゃばりを押さえつつも最低限の顔をたて意思決定をおこなった結果,常に両論併記になり,米国(及び英国等関係国)の出方+ヨーロッパ戦線の経緯で決めようという非決定が横行したということである.そのような国としてのどちらつかずの態度は,国際的に(特に米国側からみて)信頼のおけないものとみなされ,疑念を深く持たれる結果となり,最終的に日米戦争を誘起したということになるのか. しかし,その間の世論はどちらかといえば対米戦争に好意的であったことを忘れてはならない. だた同著者のものだと「日米開戦と情報戦」 (講談社現代新書)のほうが深みがあるような気がしますので,こちらもオススメです.
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>「どの選択肢が自分の組織を守れるか」そう考えて話し合っていると、戦争が選択肢になっていた というレビューが絶妙。 リーダーも国民も決定できない、リーダーが責任取ることも許さず、国を動かすエリートたちによる保身圧力が現代の日本と重なる
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当時の日本の選択を政策決定の状況に焦点を当てて考察している本。 なぜ戦争突入したのかと考察する本はいろいろあるけれど、この本は白眉だと思う。 当時を考える際、考慮するものがたくさんありすべてを見て考えるのはあまり現実的でないので、「誰」によって、「どのような政治過程」を経てああ...
当時の日本の選択を政策決定の状況に焦点を当てて考察している本。 なぜ戦争突入したのかと考察する本はいろいろあるけれど、この本は白眉だと思う。 当時を考える際、考慮するものがたくさんありすべてを見て考えるのはあまり現実的でないので、「誰」によって、「どのような政治過程」を経てああなったのかに焦点を当ててみることでとても明瞭な話になっていてとても分かりやすい。 この手の話は陸軍が諸悪の根源とされがちで、この本でもそれは変わらないのだけれど、天皇の責任、海軍の責任も重要だとしてるところが興味深かった。 とくに海軍が戦争を容認しなければ絶対にアメリカと戦争をすることなどなかったとする話はそれほど重視する人が居ない気がするが、とても重要な指摘だと思う。 なぜそういう話になったのかと言うのが副題にも書かれている「両論併記」と「非決定」だという話は、現代においても同じような話にあふれているように思う。 政治にかかわっていた人間が無能だとか悪意を持っていたという話ではなく、みなが自組織の利益のためにと合理的に行動した結果が、だれも得をしない破滅への道だった――しかもその決定がもっとも自分達の利益にかなうと信じていた――となると笑うに笑えない。 現代でも総論賛成各論反対と言った話は無くなってないし、反対勢力を納得さえるためとはいえ論理が一貫してない話を用いたり、超絶と頭につけたくなるくらいに楽観的な見通しを基に計画を立てて話を進める。それでいて決定をひたすらに先送りにする。そんな組織にまともな決定ができるわけもなく。 示唆に富む話が多く、当時の政治における大変さや緊張感がとてもよく伝わる本でした。 特に御前会議を開催して天皇の前で審議、採決された「国策」が何度も何度も、時には依然とは相反する話が間を置かずに新たな「国策」として採用されてた話などは、義務教育できちんと教えておく必要がある気がする。
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本書は、1941年、まさに開戦の年の陸海軍、外務省三つ巴のすさまじい「文書と権限の戦い」を、公式記録を徹底的に検討して再現した一冊。 著者は序盤で、一般に言い習わされている「軍部の台頭」という表現にまず着眼する。「軍部」という抽象的な悪玉を具体的に見ていけば、陸軍省、海軍省とい...
本書は、1941年、まさに開戦の年の陸海軍、外務省三つ巴のすさまじい「文書と権限の戦い」を、公式記録を徹底的に検討して再現した一冊。 著者は序盤で、一般に言い習わされている「軍部の台頭」という表現にまず着眼する。「軍部」という抽象的な悪玉を具体的に見ていけば、陸軍省、海軍省という巨大な官僚組織の一部門、一部署に行きつく。そこでの意思決定はステレオタイプな「独裁」では決してない。むしろ、今の我々にとってなじみ深い「関係各部との摺りあわせ」の連続なのだ。対米戦争は厳しい、と陸軍も含めすべての関係者が認識しながら合意はなされない。 明治憲法の下では、内閣総理大臣は内閣の「全会一致」なしには何も決めることができなかった。誰か一人が抵抗すれば非決定に進むしかないのだ。 このような制度上の欠陥は、それまでは維新の元勲たちが密室で議論することで補われてきた。が、ある意味制度が成熟したからこそ、この戦争は初めて形式的な仕組のみにゆだねられてしまった、との趣旨の著者の指摘には考えさせられた。
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いくらでも戦争を回避する機会と手段はあったはずなのだが、それがことごとく失われていく過程は、読んでいてかなり空しいものがある。 陸軍参謀本部の好戦的雰囲気にも嫌気が差すが、終始煮え切らない態度を取り続けた海軍にも腹立たしさを感じる。 詰まるところは、明治憲法下での国の政策決定のあ...
いくらでも戦争を回避する機会と手段はあったはずなのだが、それがことごとく失われていく過程は、読んでいてかなり空しいものがある。 陸軍参謀本部の好戦的雰囲気にも嫌気が差すが、終始煮え切らない態度を取り続けた海軍にも腹立たしさを感じる。 詰まるところは、明治憲法下での国の政策決定のあり方が決定的であったということか。 膨大な資料にあたって、精密に論を進めようとしたことはわかるが、もう少し焦点を絞って、筆者の考える「なぜ開戦に踏み切ったか」ということを論じた方がよかったのではないか。いささか論述に煩雑な感を禁じ得なかった。
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冷静な現実感覚を持つためにおすすめの二冊。 歴史家が一般向けに書いた日米開戦の政策過程分析本である。開戦は日本全体としては不合理な決定であっても、陸軍と海軍の妥協としては合理的な決定だったという論調。現実はこうやって決まるのだ。消費税増税も日本全体から考えて不合理でも実行される...
冷静な現実感覚を持つためにおすすめの二冊。 歴史家が一般向けに書いた日米開戦の政策過程分析本である。開戦は日本全体としては不合理な決定であっても、陸軍と海軍の妥協としては合理的な決定だったという論調。現実はこうやって決まるのだ。消費税増税も日本全体から考えて不合理でも実行される可能性がある。日米開戦のように。 何十万、何百万の死傷者がでようが自分たちの組織的利害が一番大切。これが政策担当者の本音。景気がどうなろうが財務省は知ったこっちゃない。覚悟しておいた方がいい。 一般に、合理性は日本全体を考えてと思われがちだが、合理性の追求は個人、局、省などの利害に基づいて行われる。覚悟を決めて冷静に準備しておく必要がある。
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