ふくろう の商品レビュー
久しぶりの時代小説です。 幼なじみの気立てのいい妻とやがて生まれてくる子供。 西丸書院番士に引き立てられるという幸運にも恵まれ、 幸せな家庭をちゃくちゃくと築く、伴鍋次郎。 ある日、茶店で出会ったうつ病の老人が、 自分の顔を見てひどく驚き、 切りつけられるという事件に遭遇します...
久しぶりの時代小説です。 幼なじみの気立てのいい妻とやがて生まれてくる子供。 西丸書院番士に引き立てられるという幸運にも恵まれ、 幸せな家庭をちゃくちゃくと築く、伴鍋次郎。 ある日、茶店で出会ったうつ病の老人が、 自分の顔を見てひどく驚き、 切りつけられるという事件に遭遇します。 あの老人はなぜ自分を見てあんなに驚いたのだろう。 鍋次郎は、ずっとそのことが気になっていましたが、 ある日、自宅で書物の整理をしていて、 自分の名前の位牌と父親の古い日記を見つけます。 自分の出生に秘密があると悟った鍋次郎は、 母親から自分が養子であったことを聞きました。 では自分の両親は誰なのか? 自分の名前の位牌のそばにあった ふくろうの根付は誰の物? 老人が自分を見て驚いたのも 自分の出生と何か関係があるのだろうか? まだまだ解けない謎を追い求め、 ついに鍋次郎は、実の父母の哀しい過去を突き止めます。 そこには、陰湿な大人のいじめがあったのでした。 やれやれ、驚きました。 江戸時代にもこんな陰湿なパワハラがあったとは。 上には逆らえない縦社会の中で恨みつらみが募っていく不幸。 そんな哀しい運命から逃れた鍋次郎ですが、 この出来事をきっかけに復讐心がめばえます。 そんな鍋次郎を救ったのは、不細工なふくろうの根付でした。 親ってなんて子供にたいして奥深い愛情を持つものなのだろう。 言葉ではいいあらわせない、 万感の思いが込められたふくろうの根付は きっと鍋次郎の将来を導いてくれることでしょう。 大人社会のいじめは、現代にもありそうです。 この点においては、 江戸時代も今も変わらないなあと思いました。
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L 自分の出生の秘密と父の壮絶な最期を知る話。 父の話は、史実。 ここまでの刃傷沙汰をでっち上げるとは…と思ったら、松平外記話は実在で史実。 文学演劇の題材にもなってるらしいけど、恥ずかしながら知らず。 wikiによれば長男までは実在で、主役の次男が創作なのか? 城内の刃...
L 自分の出生の秘密と父の壮絶な最期を知る話。 父の話は、史実。 ここまでの刃傷沙汰をでっち上げるとは…と思ったら、松平外記話は実在で史実。 文学演劇の題材にもなってるらしいけど、恥ずかしながら知らず。 wikiによれば長男までは実在で、主役の次男が創作なのか? 城内の刃傷沙汰は浅野内匠頭の事件と田沼意次の息子くらいかと思ってたらほかにもあったのかー。内容的に興味深い。
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江戸時代後期、文政六年(1823)松平外記忠寬によって引き起こされた刃傷事件「千代田の刃傷事件」を題材に書かれた素晴らしい読む価値のあるご本です。 家族の絆。 本作中 痛みを知らねば、痛みはわからぬ。この言葉が読後も強く印象に残った。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
西丸書院番士に引き立てらた伴鍋次郎が、両親の狼狽を目にし、そして町で出会った老武士の不可解な態度に不審に感じ探ると自分の出生の秘密、西丸書院番士に纏わる過去の悲しい事件を知ることになる。無骨な手彫りのふくろう(不苦労)の根付にこめられた我が子への愛情に溢れた父親の思いに涙した。江戸時代後期の新人いじめ「千代田の刃傷事件」という史実を基に、事件を起こした息子を主人公に設定し武家人情物語として構成される。
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いい年した男のいじめって結構壮絶だってきいたことありますが、 お城のなかの侍の間でくりひろげられます。あまりにもせこい陰謀ですが、結果は深刻。親子二代にわたり、影響がでていきますが、読後感は悪くないものになってます。いい、です。
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「KENZAN」vol.14~15に掲載した「不苦労」の改題、単行本化。 これは時代小説というより、「いじめ」問題を史実の松平外記の西の丸刃傷事件を題材にして語ったものと言った方がいい。 旗本の子で西の丸書院番に出仕することになった伴鍋次郎は、浪人の老人が自分の顔を見て恐怖で...
「KENZAN」vol.14~15に掲載した「不苦労」の改題、単行本化。 これは時代小説というより、「いじめ」問題を史実の松平外記の西の丸刃傷事件を題材にして語ったものと言った方がいい。 旗本の子で西の丸書院番に出仕することになった伴鍋次郎は、浪人の老人が自分の顔を見て恐怖で錯乱し川に飛び込んで死ぬという事件に遭遇し、家で「鍋次郎」という名の小さな位牌が隠されていたのを見つける。 やがて、義父から自分が西の丸書院番で人情事件を起こした松平外記の子で、事件後養子にされ伴家の実の子として育てられたこと、父が悪質な新人いじめにあって事件を起こしたことを聞かされる。
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松平外記の事件って史実なのかな。 江戸時代のパワハラですね。 陰湿でちょっと重かったけど、最後は救われたかな。
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読んでて辛いシーンがあります。 もう少し明るくしてほしいかな。 装丁が作品とあってなくて、強すぎな感じがしました。
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ふくろう とは、不苦労、もしくは、福籠 ということで、根付けにこめた我が子の幸せを祈る親心。優しく美しい妻が懐妊し、自らも西丸書院番士に引き立てられた伴鍋次郎なのに、なぜか両親は…。 う~~~ん、梶さんの目指したことは理解できる。 子どもの世界でも、大人の職場でも、苛める方は軽...
ふくろう とは、不苦労、もしくは、福籠 ということで、根付けにこめた我が子の幸せを祈る親心。優しく美しい妻が懐妊し、自らも西丸書院番士に引き立てられた伴鍋次郎なのに、なぜか両親は…。 う~~~ん、梶さんの目指したことは理解できる。 子どもの世界でも、大人の職場でも、苛める方は軽い気持ちで罪悪感さえないのだけど、やられた側には深い傷を残す。それを、苛められる方の気持ちが弱い、と片付けてしまう周りの者も同罪と言える。 苛めの場の話が執拗に続けられ、読むのが辛くてたまらなかった。 梶さんは好きな作家さんだし、鍋次郎の妻が時代ものには珍しいさっぱりとした可愛いタイプの女性なのが嬉しかったから、もう少し、なんとかならなかったかなぁ、と…。
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