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つげ義春の温泉 の商品レビュー

3.6

13件のお客様レビュー

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2024/03/03

2024年3月読了。 200ページ程度の小著の内の140ページが著書による温泉場の写真、残りのページは地方別に温泉地探訪記で構成されている。 1960〜80年代初頭にかけての記録なので、掲載されている温泉宿の多くは既に廃業してしまっているので再訪は叶わない宿が多いと思われる。...

2024年3月読了。 200ページ程度の小著の内の140ページが著書による温泉場の写真、残りのページは地方別に温泉地探訪記で構成されている。 1960〜80年代初頭にかけての記録なので、掲載されている温泉宿の多くは既に廃業してしまっているので再訪は叶わない宿が多いと思われる。 161ページ(群馬県・湯平温泉) 私は、無口でひかえめな人柄の主人に親しみを覚え、こんな粗末な宿で、家族ぐるみ住み込んでいる境遇を想ってみたりした。質素で慎ましい埋もれたような人生は、不遇にみえることもあるけれど、こういう辺鄙な片隅ではあっても、平穏無事に過ごせるなら悪くはないのではないか、不遇なら厄災も張合をなくして相手にしなくなるのではないかと、自分の不調のことも思い巡らせていると、何かしら癒しに似た心持ちも兆し、いつか眠りに落ちた。 →ここまでの心境に至るにはまだまだ俗世の垢に塗れないと至ることはできなさそうだ。 163ページ(埼玉県・秩父地方) 鉱泉は素朴な田舎宿のほうが味も濃いわけで… →華やかな温泉地もよいがしみじみとした鉱泉で心静かに数日過ごしてまた都会に帰る、みたいな生活に憧れがあるが未だ達成できずにいる。 168ページ(同上) →柴原鉱泉の「白百合荘」という宿が紹介されているが、今はもう存在しないようだ。でも柴原鉱泉自体は存在しており宿もある模様。西武鉄道がレッドアロー号の運行を頻りに宣伝していて往時の静かさをあまりに期待し過ぎると裏切られそうだが、次の旅行地には好適かもしれない。 177ページ(山梨県・下部温泉) →ここでは大市館という宿が紹介されているが、この宿もどうやら廃業済みのようだ。下部温泉には身延山に行く途中に立ち寄ったことがある。当時(10年近く前)でも大型観光ホテルは廃墟化していてなかなか寂しげな雰囲気であったが、公衆浴場は渓流を眺めることができる場所にあり、なかなか良い場所だったと記憶している。井伏鱒二が投宿したという源泉館は今も稼働中なので、今度行く時は是非宿泊してみたい。望むらくはオーバーツーリズムを起こしていないことのみ。でも大した観光地はなかったと記憶している。都心からのアクセスも良くはない。 190ページ(伊豆半島・松崎) →「長八の宿・山光荘」に投宿したとのこと。ここは現存している。 温泉に行くというと一大イベントだったような気もするが、もう少し気楽に、「何もすることないからとりあえず温泉にでも行くか」くらいの軽い感じで温泉に行けるようになりたい。 こんな条件を満たす温泉宿を探している。 ・東京から遠すぎない(電車で2時間圏内くらい) ・メジャー観光地ではなく、大して見るべきものはない ・温泉は加水や沸かしをしていない、でも洗い場はそこそこ綺麗に保たれている ・宿主やスタッフとの距離感は近過ぎず遠過ぎず ・渓流の流れか海の波の音が聞こえてきたら尚可 ・山の中なのに海鮮が出てきたり、海の近くなのに山の幸が出てくるといった矛盾を生じない ・価格は「節度感」次第。安ければよいというわけではない。

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2023/08/01

ネガティブでうつ傾向の筆者が、質素で地味な温泉や鉱泉宿を訪ねる旅行記。 静かな環境で鉱泉宿を営むことまで夢想する。

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2023/06/23

写真3分の2、残りが紀行文の構成。 女湯の中も撮りまくっていて、当時はおおらかだったのかと思ったが、文章の中ではやはり地元の人から咎められている。いくら昭和とはいえそりゃそうだ。 鄙びたところ、何もないところに味を求めるのは百閒先生にも通じるところ。

Posted byブクログ

2022/05/22

古き湯治宿は、姥捨を想像させる。 だが、その侘びしさがまた癒しを感じさせるのである。(あとがきより)

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2021/11/11

「写真を中心とした、日本各地の温泉への旅行記」なのだけれども、そのような紹介文からイメージするであろうものとは、中身は随分と異なる。 まず、訪問した時期がとても古い。昭和40年代が中心。昭和40年は1965年であり、いまから55年ほど昔のこと。 次に、つげ義春が訪問した場所。華や...

「写真を中心とした、日本各地の温泉への旅行記」なのだけれども、そのような紹介文からイメージするであろうものとは、中身は随分と異なる。 まず、訪問した時期がとても古い。昭和40年代が中心。昭和40年は1965年であり、いまから55年ほど昔のこと。 次に、つげ義春が訪問した場所。華やかさとか、賑やかさとは無縁の、温泉街というよりは、湯治場と呼ぶ方が相応しい場所が多い。鄙びている、というよりも、寂れていると言う方が良さそうな場所ばかり。半世紀前のそんな場所だから、その寂れている感も半端ない。 また、写真が暗いものばかり。モノクロの写真なので、仕方がないところもあるが、それにしても、いかにも寂れた風景や、いかにも暗い人達や、明るさを感じさせる写真がほとんどない。 つげ義春は、このような場所が好きなのである。 本書の最後の丹沢への旅行記は、下記のように、締め括られている。 【引用】 一般の行楽客にとっては、暗い谷間とちっぽけな滝、中津川の川原は殺風景で、これほどつまらぬ所はないだろうが、私はここが、とくに滝やお堂がすっかり気に入った。鉱泉業のことはともかくとして、こんな絶望的な場所があるのを発見したのは、なんだか救われるような気がした。 【引用終わり】 絶望的な場所を発見して救われる、というのは、随分と倒錯的な感じもするが、それが、つげ義春ワールドのベースなのだろう。

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2020/07/25

『つげ義春日記』で生まれたばかりの子どもを置いていくのが心配で、不安で少しも楽しめないと愚痴を言っていた旅行記も含めた温泉に関するエッセイ。 寂れて暗くて貧乏臭い温泉や鉱泉の居心地の良さ。思い切り裸の人が写ってる昔の温泉の風景写真多数。こんなとこ出かけてみたいな。Gotoキャンペ...

『つげ義春日記』で生まれたばかりの子どもを置いていくのが心配で、不安で少しも楽しめないと愚痴を言っていた旅行記も含めた温泉に関するエッセイ。 寂れて暗くて貧乏臭い温泉や鉱泉の居心地の良さ。思い切り裸の人が写ってる昔の温泉の風景写真多数。こんなとこ出かけてみたいな。Gotoキャンペーンから除外された東京の4連休。

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2017/02/11

昭和の寂れた温泉街の写真が良い。 突き放したような書き方だが、それでも鄙びた温泉が好きで心が落ち着くというところでしょうか。 温泉行きたい。

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2014/09/14
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

『ねじ式』や『無能の人』で有名な漫画家ですが、これはエッセイ。内容的には『貧困旅行記』と少しダブル感じはありますが、とにかく侘しい方へと傾きながら、値段の割に部屋が悪いと文句を言い、いい部屋だと素直に喜ぶ作者の反応が妙に笑える。つげ義春やっぱりいいわ。いい味出してます。ただ前半がほとんど写真ばかりなので少し減点。イラストなら良いのですが。

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2013/05/15

私はひなびた温泉宿が好きと自負していますが、本書に登場する温泉宿は、ひなびたという単語の田舎の良さの様なものすら持ち合わせない、本当に救いのないものの様に描かれています。著者の撮影した写真と、活力の欠片も感じさせない文章がさらに救いの無さを引き立たせており、むしろその非日常的な世...

私はひなびた温泉宿が好きと自負していますが、本書に登場する温泉宿は、ひなびたという単語の田舎の良さの様なものすら持ち合わせない、本当に救いのないものの様に描かれています。著者の撮影した写真と、活力の欠片も感じさせない文章がさらに救いの無さを引き立たせており、むしろその非日常的な世界が、不思議と落ち着く読後感に繋がっていると思います。

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2012/12/28

鄙びた様子が素晴らしい温泉です。定義温泉、渓間屋など、如何にも鄙びた観光客に宣伝していないところがいい。また、昭和42年頃のまだ、日本で、交通が不便な温泉が、鄙びた温泉が残っていて素晴らしい。

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