ゾンビ日記 の商品レビュー
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小説の体をとっているが、いつもの。 ほのかに自伝的であり、短編の文量を長編化するための間を埋めつくすウンチクの書である。 2012/06刊行。2008年公開の映画『スカイ・クロラ』で明らかになった子殺しあるいは唯我独尊的自我の発露は本作品にもあり、クライマックスに至る主人公の決断を理解することは文脈上困難である。俺はいいけどお前はダメ、俺以外はみんな死ね。ある種のクリエイターはそんなふうに考えているフシがある。恩返しと称して後輩を育成するようなことをやってみせながら、表裏念入りにキルドレを銃撃してみせたように、二律背反的であったとしても。 きっかけは『身体のリアル』、実姉である最上和子氏との対談から。文字情報から得られる最上和子氏の活動はスピリチュアルな印象で、本分たる舞踏を見ても理解できまいと感じさせられた。実姉の言動からインスピレーションを得たという本書が手がかりになるのではないかと思ったのかもしれない。 なんだかんだいいつつもフォロワーなので、なにかしら理由をつけて成果物に触れたいのだろう。だが、評価はたいてい星3に落ち着いてしまう。
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押井守って小説も書けるんだ。というか、これは小説なのだろうか? 死と殺人(戦争行為含む)、そして二足歩行に関する考察と独白。人間が如何に人を殺しつつも、殺人を忌避してきたか。 特殊状況による独白劇で何を押井守は言いたかったのだろうか?
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ながいボヤキをこぼしながら同じ事の毎日を過ごす主人公が住む押井世界にゾンビがいたら、、、 そんな、夢みたいな設定で映像化もしないだろう小説 ゾンビ設定も今回限りな感じ ゾンビ好きか押井好きしか読まないだろう一作 ゾンビ好きにはもの足りない一作
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タイトルに騙された。ゾンビ日記であるので、主人公がゾンビだと思っていたが、全く違う話であり、ゾンビは登場するものの、あくまでも人間の一形態として、しかも何も理由も背景も語られることなく、自然に人間がゾンビに変わる世界に、生きている人としての主人公のモノローグとして話が綴られている...
タイトルに騙された。ゾンビ日記であるので、主人公がゾンビだと思っていたが、全く違う話であり、ゾンビは登場するものの、あくまでも人間の一形態として、しかも何も理由も背景も語られることなく、自然に人間がゾンビに変わる世界に、生きている人としての主人公のモノローグとして話が綴られているのが、日記に相当する。ただし、その日記も、そういった非現実的な世界での話ではなく、ただ只管に人間と戦争と銃器と狼と護犬の話が語れらており、ある意味、戦争と銃器のオタク的な話であるとともに、何も進展も発展もしないので、好かない人には全く向かない話となっている。死人の世界となった世界がどうなるのか、また何故、そうなったとか、物語の根幹をなす設定には一切、なんも頓着も無く説明もなく、ただただ単に、作者の語りたいことの背景として位置付けられている、ある種の潔さが楽しい。個人的には十分に面白かった。
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人間の有り様を客観視した、冷たい世界の優しい話。世界の細やかな描写と、人間という存在についての断片的なたくさんの情報が、人間とは何か、生きるとは何かを考えさせてくれます。
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・市民センター図書室でタイトル借り。ゾンビ物としては画期的かつ偏執的な作品。主人公は只管に冷静なようでいて完全に常軌を逸してる。つまり、冷静に狂ってる。その描写が凄まじくて一気に読んだ。 ・押井守の監督作品ってスカイクロラの冒頭を見た事があるだけなので、かえって先入観無しで読めた...
・市民センター図書室でタイトル借り。ゾンビ物としては画期的かつ偏執的な作品。主人公は只管に冷静なようでいて完全に常軌を逸してる。つまり、冷静に狂ってる。その描写が凄まじくて一気に読んだ。 ・押井守の監督作品ってスカイクロラの冒頭を見た事があるだけなので、かえって先入観無しで読めた。食わず嫌いだった映像作品も観てみる気になった。 ・ゾンビが蔓延してる世界を完全に設定としてのみ使ってる点が清々しい。なぜ?とか生存者は?とか人類の未来は?とかに全く行を割いてない。 ・何で排便排尿排ガスなんだろう?
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よくあるゾンビから逃げ回るような本ではない。 ゾンビといわれる生を、失っても生き続けるものたちを主題に、押井守の死生観なり、軍隊というものについて書かれた独白文書というのが正直な感想。 ゾンビ映画でお馴染みのショッピングモールは、食糧も生活用品もストックが豊富で、集団で籠城する...
よくあるゾンビから逃げ回るような本ではない。 ゾンビといわれる生を、失っても生き続けるものたちを主題に、押井守の死生観なり、軍隊というものについて書かれた独白文書というのが正直な感想。 ゾンビ映画でお馴染みのショッピングモールは、食糧も生活用品もストックが豊富で、集団で籠城するには好都合なのだろうが、管理が行き届かなくてすぐに荒廃するだろうし、なにより長い夜を1人で過ごすには広すぎる。一月以内に鬱病になること請け合いだ。 宗教なるものは、死という現象を解釈可能なものとして受け入れるために発生し、わけても先進国の過半を占めるキリスト教圏においては、死と生ら峻別されるものでなければならない。 といった考え方は、面白かったが、銃マニアではないので、軍用知識の説明が乱立しているために、少々読みづらくもあり、ページが進まなかった。 ストーリー自体の起伏はないので、物語として小説という体裁で考えると、ちょっとしんどい。
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死んだはずの人間が起きて歩き回る。ただ眠りについただけの健康な人々が死者となって、目覚める。 世界には死が蔓延し、死者が満ち、生きている人間はどこにも存在しない。その死者を「弔う」ために狙撃し続けている「俺」以外には誰も。 孤独な狙撃手の無言劇。世界に響き渡るのはライフルの発砲音...
死んだはずの人間が起きて歩き回る。ただ眠りについただけの健康な人々が死者となって、目覚める。 世界には死が蔓延し、死者が満ち、生きている人間はどこにも存在しない。その死者を「弔う」ために狙撃し続けている「俺」以外には誰も。 孤独な狙撃手の無言劇。世界に響き渡るのはライフルの発砲音だけ。 小説というよりは死生観と狙撃に纏わるエッセイなのじゃないだろうか。 台詞なし、登場人物(ほぼ)ひとり、「現実」の延長に「非現実的」を描く手法、どれをとっても押井守ぽいなあと思わずニヤけた。 ラストは「死を生きる」動き回る死者という役者を上手く使ったなあという感じ。 派手なドンパチはないけど、余計な知識がたくさんついてきて楽しめる一冊です。
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果たして小説なのかこれは。 「死者」の頭をブチ抜く孤独なスナイパーの一人称で変化のない毎日を綴りながらも、随所にマニア受けするような戦闘戦争の四方山話&独自の死生観が語られる。むしろ押井守得意の退廃した近未来という設定を借りたエッセイといってもよい。 完全なる孤独の環境...
果たして小説なのかこれは。 「死者」の頭をブチ抜く孤独なスナイパーの一人称で変化のない毎日を綴りながらも、随所にマニア受けするような戦闘戦争の四方山話&独自の死生観が語られる。むしろ押井守得意の退廃した近未来という設定を借りたエッセイといってもよい。 完全なる孤独の環境下で、人はどこまで自分自身を保つことができるか。いつ何時、自分も周りも社会的・精神的な均衡が崩れるかは分からない。そうなったときの覚悟を求められているような気がしてならなかった。 ストレス耐性を高める一助となる一冊。
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※このレビューにはネタバレを含みます
動き回る死体…ゾンビで埋め尽くされた世界。 生き残った最後の人間は30口径の弾丸でゾンビを狙撃する日々を過ごす。 一人称で語られる物語では、ただ徘徊するだけの死体と世界の破滅についての説明は驚くほどアッサリと済ませている。 狙撃手の心理描写、戦争と射撃の歴史にページの殆どが占められている。 物語といった形式ではなく、狙撃手の独白(ゾンビ以外の唯一の人類)が綴られるのを読むのに近い。 緊迫感のある戦闘シーンは少なく、あっ気ない程「ストン」と結末を迎える。 「実銃射撃経験豊富な作者の考察が散りばめられているんだなぁ…」と感じました。
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