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雪と珊瑚と の商品レビュー

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243件のお客様レビュー

  1. 5つ

    69

  2. 4つ

    96

  3. 3つ

    48

  4. 2つ

    6

  5. 1つ

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2012/06/02

あいかわらず、 この人の世界は好きです。 いろいろなことを 表も裏も斜めからもみて 本当のことを見せてくれる気がします。

Posted byブクログ

2012/05/28

真正面から「生きる」ことを問いかけ、また答えを提示している小説だと思う。 主人公の珊瑚は、まだ1歳にもならない乳飲み子の雪を抱え、職もなく、雪を預ける保育所のあてもなく、途方にくれて町にたたずむ。 その時、ふと通りかかった民家に掲げられた「赤ちゃん、お預かりします。」の貼り紙を見...

真正面から「生きる」ことを問いかけ、また答えを提示している小説だと思う。 主人公の珊瑚は、まだ1歳にもならない乳飲み子の雪を抱え、職もなく、雪を預ける保育所のあてもなく、途方にくれて町にたたずむ。 その時、ふと通りかかった民家に掲げられた「赤ちゃん、お預かりします。」の貼り紙を見つけたところから、 珊瑚の生活は、思いも寄らない速度と方向でぐんぐんと前進し始める。 導入部のあまりのあっけなさ、 高校中退という珊瑚のバックグラウンドを想定したとき、 彼女の言葉づかいにやや違和感を感じること(やたらと古くさいと個人的に感じた)、 登場人物の造形が主人公に都合がよすぎるのでは?等、 批評をしようとすればあれこれと「小説」としての粗をあげつらうことはできると思う。 だけれども、筆者がこの本に込めたメッセージは、そういった一切について、すべて些末な問題にすぎないと思わせてしまうほどの力を持つ。 それは、「生きるって、つまりはこういうことなんだ」という、ごくシンプルだけれども力強い宣言である。 自分以外に頼るもののない珊瑚と雪が、いかにして「他人」とつながり、自分たちの生活を築き上げていったかが、 淡々としているともいえる筆致で描かれるが、 展開されるあまりの「生命力」の強さに、 あっと言う間に引き込まれ、一気に読み終えてしまった。 また、梨木香歩らしいと思うのは、作中で描写される料理の情景や畑仕事の描写の細やかさである。 台所にたちこめる数々のおいしそうな料理の匂いや、畑に満ちる土や緑の匂いが、 ページから伝わってきそうなほどの説得力に満ちている。 この点もまた、本作の魅力のひとつだと思う。 後半で「総菜のメニュー名を決める」会話のやりとりが数ページにわたって続く場面があるのだが、 どんな料理なのかイメージが膨らんでうきうきとしてくる、読んでいて本当に楽しい箇所だった。 また、直接的にはふれられていないが、 この小説が「震災後」の作品であることを、中盤強く意識させられた。 ”復興”という単語が使われ、 人々が日々の暮らしを破壊された時、そこで必要とされるのは何か、 生活を再建するとは本質的にどういうことなのか、 といったことがある登場人物の口から語られるのだが、 その一言一言に、筆者の強い祈りを感じた。 (参考:野生時代での連載期間は2010年9月~2012年1月とのこと) 間違いなく、読み終わったあとに前向きな力をもらえる1冊である。 もっと珊瑚たちの暮らしを見ていたかったと、終わってしまうのが名残おしいほど。 既存の梨木香歩ファンであれば、待望の新刊でもあることだし、なにがなんでも必読!

Posted byブクログ

2012/05/26
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「西の魔女が死んだ」の主人公がシングルマザーになった版のような。 家族とは?食とは?を問いかけるような優しいお話。 くららさんといい、西の魔女といい、理想の女性かも。 文中のレシピがちょっと作ってみたくなるような、そして気軽に作れそうでおいしそう。

Posted byブクログ

2012/05/26
  • ネタバレ

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ビルドゥイング?と思ったけど (ドイツ語で、知識・技能を学ぶことらしい) 帯の背には「成分表には載らない栄養素」との言葉と 梨木香歩さんの作品、立ち読みした数ページで、迷わず購入 珊瑚ちゃん、本当に21歳なの?と驚愕しながら でも、珊瑚ちゃんが生きてきたことを知れば知る程 想像しかできないけれど、生きていてくれてありがとうと思う 娘の雪ちゃんへの視線、想い、ジレンマ、愛 くららさんや廻りの人たちへの接し方、受け止め方 あまりにも正直で胸が痛くなる感じで、切ないです 出てくるお料理がまた美味しそうで 読んでいると、旬の野菜が食べたくなります と〜っても この本にもたくさんの付箋がつきました

Posted byブクログ

2012/05/25
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クララさんが素敵すぎる! 珊瑚の惣菜がカフェが上手くいきすぎなのは、気になるけれど... 今まで、苦労した分のお返しかな。

Posted byブクログ

2012/05/24
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出会えた人が良い人ばかりで、 (たとえ、実の母や 別れた夫、悪意の手紙をくれた人でも) 珊瑚さんは幸せです。 厳しい現実の前で右往左往している人に 何かしらの希望を与えてくれる、 大人のファンタジーって読み方はひねくれてしまいますか?

Posted byブクログ

2012/05/20

今年読んだ本で一番です、間違いなく。梨木香歩さんの西の魔女が死んだが好きなひとは絶対に好き。この空気感、なんか分からないけど涙腺が弱くなる言葉たち。 母親に愛情を一切もらうことなく若くしてシングルマザーとなった珊瑚と離乳食を食べ始めたばかりの娘、雪。 頼るところもない珊瑚が赤ち...

今年読んだ本で一番です、間違いなく。梨木香歩さんの西の魔女が死んだが好きなひとは絶対に好き。この空気感、なんか分からないけど涙腺が弱くなる言葉たち。 母親に愛情を一切もらうことなく若くしてシングルマザーとなった珊瑚と離乳食を食べ始めたばかりの娘、雪。 頼るところもない珊瑚が赤ちゃん預かりますのチラシをみて知り合ったくらら。 パン屋で働きながらくららの作る美味しい優しい食事、その他諸々に感化されて美味しくて優しい野菜のたっぷり使われた、惣菜も売るカフェを作る。 まぁそんなトントン拍子に物事はうまくいかないだろ、と捻くれた気持ちも生まれるが、珊瑚があまりにも一生懸命だから応援したくなる。そう言ったらきっと珊瑚は同情ととって嫌な気分になるのかもしれないが。その辺も作者の意図だろう。珊瑚の周りもとにかく素敵で、いじわるなパートのおばさんや、元連れ合いである元旦那、元旦那の家族、そして食べ物すら与えず育児放棄した珊瑚の母親でさえ憎むことができないどこかしら愛すべきところがあるのだからまた不思議。 最初から、なんか泣きたくなる空気がびんびん。哀しいとかではなくて愛があふれすぎてて。温かいのもあるが、必死な感じが。でも美しくて。 娘の雪を育てるためにパン屋に出向くとき、珊瑚が雪に放つ言葉 p82 「今日もくららさんのところへいくのよ。おかあさんがいてあげられなくてごめん」 おかあさんがいてあげられなくてごめん、ともう一度心で呟く。あなたも私にこう言うべきではなかったのか。 おかあさんがいてあげられなくてごめん。 今度は、小さかった自分自身に呟いた。 カフェをオープンする際に保証人が必要で、行方知らずの母親を見つけ出し、わけの分からない宗教に染まり切った母親に保証人になってくれるよう頼んだ珊瑚に母親が言った p248 「あんたの保証ならできる」 雪がはじめて珊瑚をママと呼んだあの日、そしてそれから最後の頁まで涙が止まらなかった。 宝石姫の口からこぼれた、宝石のように「ごはん、おいちいね、ああ、ちゃーちぇねえ」と雪が放つ言葉。食事を味わって、喜びながらご飯、美味しいね。ああ、幸せだね、と言う雪が愛おしい。珊瑚がくららが、みんなが。

Posted byブクログ

2012/05/17

シングルマザーの珊瑚がさほど苦労もせずに とんとん拍子に自分のお店を持ってしまう感じが 上手くいきすぎなのでは~と思ってしまったが 終盤になってズバッと胸をえぐられるような手紙をもらい その文章がグサグサ私にも刺さりまくりでした。 ポーズといわれてしまえばそれまでなのだが 珊瑚...

シングルマザーの珊瑚がさほど苦労もせずに とんとん拍子に自分のお店を持ってしまう感じが 上手くいきすぎなのでは~と思ってしまったが 終盤になってズバッと胸をえぐられるような手紙をもらい その文章がグサグサ私にも刺さりまくりでした。 ポーズといわれてしまえばそれまでなのだが 珊瑚の母のように他人(娘にも)にどう思われようが 潔く生きるって難しい。

Posted byブクログ

2012/05/16
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梨木さん、新刊~~♪ いいですねー、やっぱ好き。 「かもめ食堂」とかあのへんのテンポで映画化とか素敵そうという感じ。 いや、でもそれだとこのイチイチ言葉で伝えてくる感じがだせない、か? うーん、でも雑木林の民家カフェとか、こう光景浮かんでくるんだよなあ。 料理もおいしそうですし。 くららさん、もう尊敬ですっ。 大根のスープ、やってみようっと。 子を産むって、やっぱりなにかが変わるものなんだろうか? そのエネルギーがプラスになるかマイナスになるかは 分からないけど、プラスになれば、確かにそれは生きる糧になりそうな気はする。 ただ、それをエネルギー源にすることは子にとっては どういう意味になるのかなあ? うーん、ぐるぐるぐる考えても分からないです。 母になる資格がない人はなるべきではない、それは子供を不幸にするから。 でも資格があるって、自分にはできるってどうしたら分かるのだろう? ・・・・・なんかものすっごい賭けな気もする。 さて、珊瑚さん。 シングルマザーという存在。私が育つ過程においてそーゆー存在は 全くなく。正直、よくわからない。珊瑚が泰司の家庭をよくわからない、と思うのと同じに。 無知は罪悪だというけれど、少なくとも無知であるとゆーことを自覚する ことはできると思う。 でもやっぱ分からないことは分からないことで、知ろうとすることが いいことなのか、悪いことなのかさえ想像がつかない。 この人の姿勢、とゆーか在り方とゆーか、はとても好きだ。 くららさんに出会えて、そうしていろんな人と関わりあっていって、 ぐるぐるぐるぐる悩みながらも、でも前に進むしかない。 働いて、生きようって。 たんたんと働いてればいつかは終わる。 目の前にあることをひとつづつ片づけること。 ちょっと復興への望み、みたいなのも感じたり。 なんとゆーか、色々、本当に色々あるんだけど、 おいしいものをちゃんっと食べて、一生懸命働いて、 そうしてみんなで生きていけたらいい、ってすっごく思った。 で、梨木さんの描く気持ちのいい人たちってのは、私にとっては結構 理想的で、とても好きなのだけれど、 それだけじゃお話は成り立たないわけで、こうひっかかる人、 美知恵さんですね。 この人、なんかヤな人、だけで終わるかとおもいきや、 最後にすっごいぐさっときたなあ。 つーか、普通、あんな手紙、書かない。 でも梨木さんの中であれは必要だから書いたのだろうなあ。 どっぷり珊瑚さんは受け止めちゃってたが、 もし私だったら、完全無視です。つーかもう破いて棄てます。 もうびりっびりに!! あれは完全なる悪意なんだろうか、それとも理解できない、分からないものへの拒絶なんだろうか。 後者ならば関係の変化はありうる。 でも前者ならば・・・・。 うーんここでもまたぐるぐるぐる。 梨木さんのお話は、どうも私にとってああ、おもしろかった、だけで 終わらせられないものが多い。 なんとゆーかストーリーを楽しむというより、 登場人物の考えとか感じたこととか、そーゆーものを味わうように 読む感じ。 考えるのは苦手だし、答えのでないものの方が多いし、 それでもまた読みたくなる。 あ、でもただ好きだなあって思えるだけのも大好きです。

Posted byブクログ

2012/05/12

珊瑚、21歳。20歳で結婚したものの1年で離婚。ゼロ歳の女の子・雪を抱えて保育所探しの日々だったのを、偶然「赤ちゃん、お預かりします」の貼り紙を見つけて…。 梨木さんの新作でとても楽しみにしていました。 私は彼女の、優しい異界ものが好きなのですけど(そして、「僕は、そして...

珊瑚、21歳。20歳で結婚したものの1年で離婚。ゼロ歳の女の子・雪を抱えて保育所探しの日々だったのを、偶然「赤ちゃん、お預かりします」の貼り紙を見つけて…。 梨木さんの新作でとても楽しみにしていました。 私は彼女の、優しい異界ものが好きなのですけど(そして、「僕は、そして僕たちはどう生きるか」もまた凄くよかった!!)、今回は“普通の”小説で、でも最後までしっかり(*^_^*)読むことができました。 珊瑚は若い若いシングルマザーなのですが、母性を持たない母親に育てられた生い立ち&現実感のない若い男の子(としか言えない)との結婚・離婚を背景にした、今を生きていかなければならない、という現在が、梨木さんの構成と文章の巧さでとてもリーズナブルに始まったことが嬉しかったです。 (シングルマザーものの中には、あまりにも無鉄砲というか考えなしの主人公を周りの人たちが振り回されたながらもフォローする、という話もあって、その甘えたタッチには苛々させられたものだから…。) で、雪を預かってくれることになったのは、退職^_^;した修道女の くららさん。一軒家で静かに暮らす彼女は、とても魅力的な人で、彼女の言うこと、眼差し、また彼女の作る温かい野菜料理にはほっとさせられて、そこがこの物語の中で一番好きだったところのように思います。 話の展開としては、珊瑚がくららさんに触発されて惣菜カフェを開き、切り盛りしていく、という起業もの、というか、珊瑚&雪の成長物語なのだけど、そこは面白く読みながらも、客商売というものに関しても、育児に関しても、その他あれこれ全て、そんなに簡単なものではないでしょう!という違和感が。 ただ、珊瑚の多角的に自分を見つめることができる人となり、珊瑚と関わる人たちのそれぞれかなり説得力のある人の良さ、また、野菜そのものの味の描写や料理としての優しさに支えられて、実は昨日の夜遅くに読み始めたのに、今日は仕事が休みとはいえ、もう読み終わってしまった、ということからも、ぐいぐいと力を持って読ませてしまう作品だったと思います。(*^_^*) くららさんの持っている宗教観、珊瑚が感じる人から助けられることに対するあれこれ、また、言ってしまえば登場人物たちの全てがちゃんと言いつくされていない、というもどかしさは、梨木さんの確信犯的持って行き方だったんでしょうね・・・。 日常生活で、この人のことをすべて理解できた!なんてことはあるわけがないのであって、そんな日々にちょっとお邪魔して読ませてもらった、と思えば、うん、こんな物語もいいよね、と。 話は終わってないから、これから珊瑚や雪、また、お店はどうなっていくのか、それは誰にもわからない、私のこれからが自分でもわからないように、と素直に思えたこともよかった気がします。

Posted byブクログ