走れメロス の商品レビュー
短編集の中の、「走れメロス」と「トカトントン」を読んだ。 「走れメロス」 何故かずっと犬の話だと思っていた。 一つの信頼のために、結んだ約束のために、友情を守るために、自分が死ぬのをわかりながら全力で走る熱い物語だった。 死に行くために死ぬ気で走るメロス。 途中いろんな事に走る...
短編集の中の、「走れメロス」と「トカトントン」を読んだ。 「走れメロス」 何故かずっと犬の話だと思っていた。 一つの信頼のために、結んだ約束のために、友情を守るために、自分が死ぬのをわかりながら全力で走る熱い物語だった。 死に行くために死ぬ気で走るメロス。 途中いろんな事に走ることを妨げられるが、「俺が死ぬのはここじゃない、あそこで死ななければ意味がない」って感じた。 「トカトントン」 この音が聞こえたら、必死だったことや夢中になっていたものが、パタンとどうでもよくなってしまい無気力になってしまう物語。 一種のトラウマのようなもので、主人公は戦争の敗北宣言の際に聞こえたトカトントンという音から、何をやっていてもどうぜ敗北したんだという記憶が蘇り気力を無くしてしまう。 夢中になっている事はすごく大切な事だから、冷めやすい私だけど、今はトカトントンなんて聞こえたくない。
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手に取りやすい価格の一冊。 『懶惰の歌留多』『富嶽百景』『黄金風景』『走れメロス』『トカトントン』の5編。 トカトントンのラストにツッコミを入れたい。
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「駆込み訴え」 太宰治 著 「走れメロス」所収 新潮文庫 この太宰の短編は、キリストの弟子であるユダがまさしくキリストを裏切ろうとしているその心のうちを一気に吐露している様(駆け込み訴え)を書いたものです。 キリストだとかユダだとか、そんな説明が無ければ、以下の引用がキリストへ向けられたものだとは俄かに信じ難いのではないでしょうか。 『それよりも、その時、あの人の声に、また、あの人の瞳の色に、いままで嘗つて無かった程の異様なものが感じられ、私は瞬時戸惑いして、更にあの人の幽かに赤らんだ頬と、うすく涙に潤んでいる瞳とを、つくづく見直し、はッと思い当ることがありました。ああ、いまわしい、口に出すさえ無念至極のことであります。あの人は、こんな貧しい百姓女に恋、では無いが、まさか、そんな事は絶対に無いのですが、でも、危い、それに似たあやしい感情を抱いたのではないか? あの人ともあろうものが。あんな無智な百姓女ふぜいに、そよとでも特殊な愛を感じたとあれば、それは、なんという失態。取りかえしの出来ぬ大醜聞。私は、ひとの恥辱となるような感情を嗅ぎわけるのが、生れつき巧みな男であります。自分でもそれを下品な嗅覚だと思い、いやでありますが、ちらと一目見ただけで、人の弱点を、あやまたず見届けてしまう鋭敏の才能を持って居ります。』 あの聖職者をこれほどまでに肉感的に語る太宰の視点も素晴らしいし、自虐的なユダの自己分析の下世話加減が、太宰の自己投影なんていう分析を通り越して、その人間らしさに愛らしささえ感じてしまいました。 キリストへのコンプレックスの狭間でユダは揺れ続けます。その心情を書き連ねる太宰の筆は乗りに乗って、ユダの心の振り子を大きく片側に寄せ切った時、彼はスコンっと絶妙に「落とす」のです。 これまでみなさんも、恋愛のうえで(もしかしたら結婚生活でも…)「魔法が解けたような瞬間」を経験したことはありませんか? 「え、なんで今までこの人のこと、あんなに好きだなんて思ってたんだろう?」 あの瞬間です。 太宰は読者をぶんぶん揺さぶって、そして突然一歩引いた筆致で冷たく断じるのです。 『私は、それを思った時、はっきりあの人を諦めることが出来ました。そうして、あんな気取り屋の坊ちゃんを、これまで一途に愛して来た私自身の愚かさをも、容易に笑うことが出来ました。』 心理の層が「遷移した」瞬間。 ドラマチックでダイナミックな短編中に差し込まれた鋭利なナイフ。 いやぁ朝から良い心の運動になりました。
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先日、テレビで話題の林先生のオススメを聞き、冒頭の数行に興味を持ち、iBooksで読了。 これこそ、笑いあり、涙あり…この短い間に多くのことを気持ちよく、わかりやすく詰め込んだ最高の作品だと思いました。 とにかく、メロスの純朴さ…なんというか今テレビで再演するなら長瀬智也さんに演...
先日、テレビで話題の林先生のオススメを聞き、冒頭の数行に興味を持ち、iBooksで読了。 これこそ、笑いあり、涙あり…この短い間に多くのことを気持ちよく、わかりやすく詰め込んだ最高の作品だと思いました。 とにかく、メロスの純朴さ…なんというか今テレビで再演するなら長瀬智也さんに演じてほしい、そんな感じ…短いのに人の強さと弱さをとても、うまく描かれていて、さらに当時はわからないですが、現代であれば多分笑いを誘うような描写。 30分くらいで読みましたが、本当に泣き笑い! 冒頭しか知らなかった私は、本当にハラハラドキドキ…しながら一気に読了。 大好きな作品の一つになりました!
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280円文庫で読み直しました。この本もいいなあと、中高生に読んでくれという熱いエールを感じました。太宰の魅力も味わえ、藤谷治さんのあとがきも若者たちに読んでほしいって思いました。
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kindleにて。 ″私は、今宵、殺される。 殺される為に走るのだ。 身代わりの友を救う為に走るのだ。 王の奸佞邪智を打ち破る為に走るのだ。 走らなければならぬ。″ 考えてみれば、死刑でも寿命による死でもなんでも、死は向こうから迫ってくるものだ。 けれど、メロスは自分から死に...
kindleにて。 ″私は、今宵、殺される。 殺される為に走るのだ。 身代わりの友を救う為に走るのだ。 王の奸佞邪智を打ち破る為に走るのだ。 走らなければならぬ。″ 考えてみれば、死刑でも寿命による死でもなんでも、死は向こうから迫ってくるものだ。 けれど、メロスは自分から死に向かって走る。 自殺とも違う。自殺は望んですることだけれど、メロスは死を望んでいるわけではない。 なのに走る。走らなければならない。 このような特異な事態に置かれたからこそ、正義感滾り一点の濁りもない心臓を持つメロスのような誠直な男でさえ、これほどの『走る理由付け』をしなければならなかった。 という解釈をしてみた。
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私の本読みの原点。様々な誘惑や自分に負けそうにながらも走ることを諦めなかったメロス。そして最後のセリヌンティウスと抱擁し、笑うところはとても微笑ましいです。強いんだか、弱いんだかわからないメロスが何だか好きだなぁ。小学生のころから好きな作品です。
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※このレビューにはネタバレを含みます
子供の頃に読んでいた本の一つ。 だというのに、中身の内容は意外に忘れていました。 昔ながらも、心理描写と葛藤が理解できるところは評価に値します。 いろんな表現方法を学び取りたいですね。
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太宰治の5つの短編集。 『走れメロス』が読みたくて購入。 実はちゃんと太宰治作品に触れるのは初めて。 感想は"意外"の一言。 太宰治の素直な、ひねくれているけどやっぱり正直な、そんな一面を存分に感じた。 『嬾惰の歌留多』 いろはに...... と、...
太宰治の5つの短編集。 『走れメロス』が読みたくて購入。 実はちゃんと太宰治作品に触れるのは初めて。 感想は"意外"の一言。 太宰治の素直な、ひねくれているけどやっぱり正直な、そんな一面を存分に感じた。 『嬾惰の歌留多』 いろはに...... と、頭文字で文章を作っていく。 怠惰がたたって、締め切りに間に合わないから...と。 面白い。 言葉選びが流石。 こんな軽快な話も描けるんだな、と、その幅の広さに驚いた。 1作目から太宰治に触れた気がした。 すごく好きな作品。 『富嶽百景』 美しい。 まぁひねくれているが。 『黄金風景』 何か許されたい、後ろめたいことがあるのだろうか。 すごく分かりやすい話。 『走れメロス』 学校の教科書以来。 改めて読むと、他の作品に感じる"太宰らしさ"があまり感じられない。 言い訳がましい、子供のような、あの感じ。 何となく、メロスのような人になりたかったのだろうか、と思ったり。 まぁ、誰でもなりたい。理想。 太宰治の夢の中の話と思ったらしっくりくる気がする。 いい話だ。 『トカトントン』 太宰ワールド。 太宰って何だ?と思ってトカトントン。 太宰治ってどんな人だ?トカトントン。 何か楽しくなった。 5つとも読みやすいし、また繰り返し読みたい。 そして、藤谷治さんの解説がすごく面白い。 死人にまで気を使って誉める解説書かなくていいでしょって。 自由な解説がすごく楽しい。 より太宰治作品を読みたくなった。 先にこっちを読んでも良かったな、と。 手にとってよかった一冊。
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280円シリーズ。ラインナップがいい! 「懶惰の歌留多」「富嶽百景」「黄金時代」「走れメロス」「トカトントン」。「トカトントン」は特に好きな作品で、「懶惰の歌留多」も久々に読みたいと思い購入。 280円シリーズは以前岡本かの子のも読んだけど編纂がなかなか私好みです。
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