らくだこぶ書房21世紀古書目録 の商品レビュー

クラフト・エヴィング商會【著】,坂本真典【写真】

2012/07/11

元々は単行本だったもの。既に絶版になったそれを、文庫に編集しなおしてとじこめた本。
その経緯すら、「不器用なそぶりの前フリ」にしてしまう。このあたりから、既にクラフト・エヴィングっぽい、丁寧な嘘のつきかたがはじまっている。

今回のテーマは「未来からやってきた古書目録」。
砂の便り、SAND MAILで注文すると、月にいちど、時空を超えて「未来の古書」が届く、というしかけ。
未来から届いた本を1冊ずつ紹介します、というのがこの本のメインコンテンツになっている。

面白そうだなと思ったのは、「羊羹トイウ名ノ闇」　「A」　「その話は、もう3回きいた」
他にも、老アルゴス師の本も、七三分けの本も、屋上登攀記も、大丸先生の傑作黒板集も読んでみたい。
それから、「月天承知之介」！キャラクターがかわいい。「連続無冒険不活劇」っていうのもかわいい。

一冊一冊を撮った写真も、相変わらず控え目に静かで、品があって、美しい。
この人たちが作る、罪のない、細部まで丁寧でここちよい嘘の世界が好きだと改めて思った。

2012/07/05

クラフトエヴィングだー。と気軽に手に取ってレジに行ったら文庫なのに1000円超えててびっくりした。

タイトルのセンス◎。

2020/03/13

はて、一体どういうことなんでしょう？
頁を捲りながら、店主と一緒に首を傾げてしまった。
素敵な不思議が詰まった本。
既に絶版になっているとのことだけれど、単行本版も是非入手したい。勿論、神保町あたりの古書店で。

2012/06/11

ヘンな本である。もとの単行本は、20世紀が暮れなんとする2000年12月に出ている。20世紀の終わりには、同居人が足がイタイと整形外科へ行ってみたら腫瘍がみつかって、安静にという正月を迎えようとしていた。21世紀は病人と共に明けたなアと思いだす。

そんな頃に出た単行本が、11年現役を張って、絶版となった。まもなく文庫にという話があったというが、さていったいどう文庫化できるのかと考え込み、一度は文庫化を断念したと「まえがき」に綴られているのは、この本がヘンなためである。

そもそもこの本は、20世紀の終わりに近いころ、クラフト･エヴィング商會の職場に、砂にまみれて「21世紀の古書目録」が届いた、という話から始まる。

ときは20世紀である。そこへ、21世紀の半ば頃という時空間から、どうしたわけか、「古書目録」がやってくるのである。古書、というのは、つまり21世紀になってから出た本、しかしその目録が編まれたときには「古書」となっていた本がリストされているのだ。

「未来のモノだが、古いモノ」という、まじめに考えると頭がぐちゃぐちゃするようなモノが、砂にまみれて届く。しかも、その目録の古書を取り寄せられるという話だから、ますますややこしい。

しかも、その話を20世紀の終わりに出た単行本というかたちで読むのではなく、21世紀も10年あまり経った今、別の版で読むのだから、いま自分がどこで何を読んでいるのか、頭がうろうろしてくる。

そうして「21世紀の未来から取り寄せた古本」の話が、あれやこれやと綴られる。ほんまかウソかわからんような本の話の合間にコラムがあって、たとえばこんなことが書いてある。

▼本というものは「読む」前にまず「書く」ものであるということ。21世紀において、このことが強調されているのは見落とせません。

　これはあくまでも推察ですが、今から半世紀の後には、もしかすると「手書き」という行為が衰退してしまうのかもしれません。すべてはコンピューターが書き、人はみな、手で「書く」という感覚を忘れていくのです。「書く」のは手ではなく頭であると、ごくあたりまえのように認識されてゆくのでしょう。

　ですから21世紀においては「写本」などというものは大変に稀少なものになるわけです。「書いた」ものが、そのまま「本」になるはど、おそらく、もう誰も考えません。ましてや「本」を手で書き写すなんて、想像を絶する労苦だと思うはずです。手で「書く」行為はただの徒労となり、異端視されて当然ということになるのです。…（p.132）

ほんとにふしぎなヘンな本である。

（6/10了）

2012/05/30

物語の一部を切り取ったものを目にした時に
湧き上がる想像上の全体像は
想像力の強い人間ほど魅力的に感じることができる。

この装丁作家による作品たちは
読み手の想像力を利用して楽しませる仕掛けのものが多く、
今回もたくさんの作品を想像させてもらった。

ただし本作はただの短編集にとどまらず、
結末はジョジョの奇妙な冒険のそれのような
時空の不思議テーマを投げかけてきており…

これ以上は読んでのお楽しみか想像してのお楽しみ。

2012/05/27

文庫です。ちくまです。1000円です。160余頁と、「宙に浮いているような」頁で構成されています。古書の紹介は余すところなくカラー。で、著者がクラフトエヴィング商會。妥当な値段でしょう。買いました。
個人的には羊羹の本が読みたいです。世界なんて、まだ…は、刊行まであと36年。そのころにはもう定年しています。果たして覚えているのでしょうか。なんとか覚えてて、手にしてみたい本です。
年号だけ追えばもう刊行されている本もあるようなので、ぼーっと時間のある日に書店を巡ってみたいものですね。見つけてみたいような、怖いような…。

2012/05/20

未来から送られてきた古書目録。

ひと月に一冊まで、SAND MAIL と書かれたシールを貼って送ると、注文した本が送られてくる仕組み。
どの本も装丁が凝っていて、
目で楽しむコレクター向きのものばかり。
7/3横わけの修辞学
卓球台の上で書かれた5つの詩片
大丸先生傑作黒板集成.第1板
は、パラパラとめくってみたい。

なんにせよ、文庫で1000円もするのだから、お金のかかった作りになっています。
如何せん、雰囲気重視の本（中身が伴っていないもの）は苦手なので、低めの星でごめんなさい。
未来の本の内容が希薄でなければもっと楽しめたかも。

2012/05/01

茶柱というものを忘れる。
鞄の中にはいつでも闇がある。
そもそも人の体内は、これすべて闇である。
未来とは何なのでしょうか。

2012/04/24

やっぱり、だいすき。クラフトエヴィングワールド。
世界の入り口の小さなドアを開けてくれるような、中を少しだけ見せてくれるような、そんな感覚。
20世紀末に、21世紀も半ば過ぎた時代から「らくだこぶ書房21世紀古書目録」なるものが、送られてくる、、、というお話。

未来から送られてくる本は、一風変わって、しかし今にも通ずる？不思議なものばかり。私は「羊羹という名の闇」が読みたいかな。

2012/04/18

単行本と文庫版は、書誌的にも「違う本」なのだけど。
……これには、やられました、想像以上に。
単行本の文庫化、ではありますが、見事に「違う本」になっています。

以前、2000年に発行された単行本を、そのまま文庫本のなかに押し込んでしまうーーの術、が使われています。
からくりは……、申しますまい。
各自、ご確認ください。
21世紀から、20世紀（の終わり）に送られてきた古書目録（前の単行本、現在は絶版）が、21世紀も一昔以上過ぎようとしている今、また……。
これ以上は、やはり申しますまい。
幸いにして単行本もお持ちのかた、並べて愉しんでください。
文庫で初めて手にした方も大丈夫、幾重にも工夫された謎をお愉しみください。

お見事です。
参りました！！