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寺山修司 の商品レビュー

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2024/01/07

#寺山修司  多くの歌人が憧れていると挙げることの多い、寺山修司さん。見開きで三十九首を歌の内容の解説と詠まれた背景も合わせて詳しく説明。闘病中ビデオレターのやりとりあったという、谷川俊太郎さんと女優で妻の九條今日子さんによるエッセイが添えられている。年譜にて幼少期の父の戦死と母...

#寺山修司  多くの歌人が憧れていると挙げることの多い、寺山修司さん。見開きで三十九首を歌の内容の解説と詠まれた背景も合わせて詳しく説明。闘病中ビデオレターのやりとりあったという、谷川俊太郎さんと女優で妻の九條今日子さんによるエッセイが添えられている。年譜にて幼少期の父の戦死と母との分離や闘病、句集、歌集、演劇などの事跡、享年47歳だったと知る。解説では、生に対する未練と自分に向き合い歌うことについての考察がなされている。戦後の激動の時代に駆け抜けた様子が今も新鮮な感動を呼ぶ。 <海を知らぬ少女の前に麦藁帽のわれは両手をひろげていたり> 純朴な地方性を残しながら映画のワンシーンのよう。短歌研究や短歌等雑誌編集を担った中井英夫は、応募作品だけでなく本人の確認のため呼び出したらしい。目鼻立ちあざやかな長身の少年にたちまち魅了されたという。「いかにも北の国育ちの少年らしい孤独と人恋しさとはやはり美しい」と評している。 <ふるさとの訛りなくせし友といてモカ珈琲はかくまでにがし> 寺山は青森訛りを直さなかったという。モカ珈琲を東京と見立てて憧れの想いと苦さに感情を乗せ、友と対峙している様子。この歌は穂村さんもスタバ本で紹介されていた。 <駆けてきてふいにとまればわれをこえてゆく風たちの時を呼ぶこえ> 葬儀委員長は谷川俊太郎、参列者に配られたごあいさつ状にはこの短歌が添えられてあったという。振り返る仲間と人生の時を止めた寺山との実験劇のようだと。 <群衆のなかに故郷を捨ててきしわれを夕陽のさす壁が待つ> 捨ててきたはずの古郷と母から一生逃れられないことを表象しているという解釈。 映画『田園に死す』を見てみたい。 <生命線ひそかに変へむためにわが抽出しにある 一本の釘> 机の抽出しは秘密の世界。生命線を変えようとしているが、最後尾の寿命なのか、それとも始まりの出生なのか。一本の釘はタイムマシンのように未来にも過去にも行けるのでは。 <寿命来て消ゆる電球わがための「過去は一つの母国」なるべし> 宮沢賢治が「わたくしといふ現象」を「電球」に見立てていたことを思い出せば、消えながら「過去」を残すのは「わたくし」 <人生はただ一問の質問にすぎぬと書けば二月のかもめ> 「私とは、在るか」そんな自問をする一羽のかもめが二月の寂しくとも自由な空を、今飛んでいく。 読書案内では寺山修司に関する著書が数多くある。 寺山の歌に剽窃、模倣問題だと指摘する流れに対する反論の様子は心が痛い。本歌取りとの区別を勉強したい。

Posted byブクログ