満つる月の如し の商品レビュー
1000年も前に生きた人々の苦しみ、悲しみ、希望、宗教観、格差。そんなものが生き生きと胸に迫って来ました。こんな小説が大河ドラマ化されたら毎週見るな~。
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京都・平等院の本尊である阿弥陀如来像を彫った仏師・定朝の物語。 平等院はHPがとても良いので、ガイドブックさながらに阿弥陀如来像を拝すことができて◎、千年前の木造のものがこれだけ美しく残されていることはすごいことだなあ。 舞台は平安、仏師としての定朝の葛藤だけでなく、あの時代は高貴な生まれであっても庶民であっても狭く苦しい一生になるひとばかりで、読みながら心重くなってしまう。救われないけど学びはある。年末読んだアンソロジーで触れた澤田瞳子さんの作を読んでみたくなり手に取ったのだけれど、ちょっと難しかったなあ、時代も宗教も、読み手に素養が求められる背景の1冊かもしれない。人名の読み方すら何度も自信なくなり、あらゆることを調べながらじっくり読んだけれど、登場人物たちの思いに近づけなかった。隆範、その自発的冤罪には何より納得いかない。 ちょっと時代背景や和歌や仏教のことなど、鍛え直してからまた再読したいな。力不足(読み手の私が)を感じた一冊でした。
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(借.新宿区立図書館) 仏師定朝の平等院鳳凰堂阿弥陀像にいたる造像活動と皇女殺人事件を組み合わせて長編小説としたもの。殺人事件の犯人と名乗り出た僧を比叡山の学僧で朝廷でも重んじられたとして造形。ただその劉範の心理さらに定朝の心理の描き方がちょっと甘いように感じられた。最後の方の皇女殺人と犯人として名乗り出る部分の必然性に少々無理がある。そもそも尊容満月の如しと評された阿弥陀像が、小説で描かれた中務のはかなげな風情と合わないと思う。芥川の「地獄変」的な芸術至上主義を織り込んだりした部分も少々設定に無理がある。そして全体的に冗長(定朝だけになどとシャレを言っている場合ではないが)。悪い作品ではないと思うがいまいちピンとこないというのがこの作者の作品(特に直木賞作品を含む長篇)に共通する印象。
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若くしてその才を京都なり響かせた、仏師 定朝の話。定朝は、金がない寺や人からは、金もとらずに仏像を寄進し、自分の掘る仏像が人々の心を穏やかにさせるのならそれが一番幸せであり、自分のいきる価値があると思って生きた。しかし、定朝は、仏を彫る際にも、ほんとに仏がいるなら、今のような、人が人を傷つけ、誰も信じられないような世の中になることはないはずだと、悩み、苦しんでいた。しかし、真実の仏の姿は、どこかにあるのではなく、日との内側にあるものだ、誰の心にもあるものだと悟る。一切衆生悉有仏性(いっさいしゅじょう しつうぶっしょう。すべての生き物には等しく仏性が存在しており、悟りを開き、成仏する可能性を与えられている)その、誰の心にもある仏の姿、仏の心を呼び覚まし、目覚めさせることができたら素晴らしいと思い、仏像を彫るのであった。
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副題に定朝とあるけど、隆範とツートップってところ。 彰子サロンの小式部内侍・中務・小諾の女房ライフ、道長に対する彰子の葛藤、小一条院の荒れ様、中関白家の身の寄せ合い…と盛り沢山だけど、やっぱりクライマックスは、脩子内親王の出家から、今昔物語だか小右記だかにある「犬に食われた花山帝の皇女の話」に至る一連かしらん。 ネタに事欠かない登場人物が多いけど、道雅の密通とか敦明の延子・顕光サイドの話はナシ。この辺のバランス感覚が絶妙で読み易いのかも。 ところで。「藤原道雅が彰子の懐刀」と「小式部&敦明」ってのは…フィクションですよね??
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平等院鳳凰堂の仏像を手がけた名仏師・定朝の半生を題材とした歴史小説。彫刻家を題材にした小説は珍しいが、かなり資料を渉猟した力作。 定朝と学僧の隆範との交流を軸として、当時にきな臭い政争が絡み合う。藤原氏内部のいざこざや、不遇だが横暴な親王、女房との恋路などは退屈であったのだが、こうした傍役たちのストーリーが、凄絶な結果をもたらす。いくつかの場面で涙を誘われること必定。 女房のくだりは創作かと思っていたが、史実だったみたい。 かの有名な平等院鳳凰堂の阿弥陀如来のモデルが誰なのか、という謎解きでもあるのだが。 青年らしい青臭さがあると思っていた定朝の、芸術家としての業の深さ、貴族社会への痛烈な批判と、落ちぶれていく人びとの哀れ。 大河ドラマの平清盛の世界観を文字に起こしたような感じだったが、描写が丁寧で、平安朝に迷いこんだ錯覚を覚える。 ラストの余韻がなんともまた。兵どもが夢のあと、という一句が似合いそうな。
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平等院鳳凰堂の阿弥陀如来の作者定朝と彼をめぐる人々の物語。貴族達の関係性(誰と誰が従兄弟でとか)が頭に入って来なくてそこは読みづらかったけど、おもしろかった! 奈良京都に行きたくなったー。
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若き仏師、定朝と彼の作品に魅せられた比叡山の僧侶、隆範(りゅうはん)の二人を中心に、道長の娘・彰子に仕える女御、中務と小式部、不遇の敦良親王、藤原道雅・・彼ら彼女らの苦悩と、その思わぬ決断に胸つかれて何度か泣いてしまった。藤原時代の貴族、比叡山、仏師、庶民の生活を描きわけつつ、脇...
若き仏師、定朝と彼の作品に魅せられた比叡山の僧侶、隆範(りゅうはん)の二人を中心に、道長の娘・彰子に仕える女御、中務と小式部、不遇の敦良親王、藤原道雅・・彼ら彼女らの苦悩と、その思わぬ決断に胸つかれて何度か泣いてしまった。藤原時代の貴族、比叡山、仏師、庶民の生活を描きわけつつ、脇に至るまで個々の登場人物が魅力的。 「円熟」と先入観を持っていてそれほど魅かれていなかった定朝の仏像を改めてじっくり拝観したいと思った。若き定朝の仏像があった法成寺が現在残っていないのがとても残念。
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平安時代・平等院阿弥陀仏像を造ったことで著名な定朝。阿弥陀如来の穏やかな平安に満ちたモデルを求めて出会った女性は・・・。少し冗長に感じるかもしれませんが・・・、定朝と中務の出会いからは一挙に物語が佳境に入ります。藤原道長と頼道・彰子たちの兄弟姉妹、そして三条天皇の御子で廃皇太子と...
平安時代・平等院阿弥陀仏像を造ったことで著名な定朝。阿弥陀如来の穏やかな平安に満ちたモデルを求めて出会った女性は・・・。少し冗長に感じるかもしれませんが・・・、定朝と中務の出会いからは一挙に物語が佳境に入ります。藤原道長と頼道・彰子たちの兄弟姉妹、そして三条天皇の御子で廃皇太子とされ不幸な・敦明親王、和泉式部の娘・小式部内侍など、親しみやすい人物も多く登場し、ドラマチックな展開でもあります。著者の該博な日本史の知識に基づき、また美しい表情に関する文章表現など日本史が好きな人にはお薦めです。
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一気読み。 時代的には実は苦手(似ている名前多いのと、関係性が複雑なのでw)なのですが、そんなことはほとんど障壁にならず、するすると読めてしまいました。 平安というと、おどろおどろしいイメージがあったのですが、清涼で、かなしい、開きはじめた睡蓮のような本です。
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