右利きのヘビ仮説 の商品レビュー
イワサキセダカヘビの下顎の歯の数が左より右が多いのは、右巻きのカタツムリを捕食しやすいように特化したという仮説を証明するために、著者は様々な行動、実験を行う。結構読んでいて面白い。著者の懸命な努力が分かるし、間に挟まれるコラムも結構興味を惹かれる。実験の結果、セダカヘビがカタツム...
イワサキセダカヘビの下顎の歯の数が左より右が多いのは、右巻きのカタツムリを捕食しやすいように特化したという仮説を証明するために、著者は様々な行動、実験を行う。結構読んでいて面白い。著者の懸命な努力が分かるし、間に挟まれるコラムも結構興味を惹かれる。実験の結果、セダカヘビがカタツムリを食べるとき首を右に曲げるという右利きということが分かる。その方が右巻きのカタツムリを捕まえやすいのだ。稀にいる左巻きのカタツムリだと上手く捕獲できずカタツムリを落としてしまう。この辺りの読んでいると、著者の熱がこちらに伝わってくる。右側の歯が多いこともカタツムリを殻から引きずり出すの都合がいい。セダカヘビが多くいる地域には、左巻きのカタツムリが他の地域より多いそうだ。セダカヘビの捕獲を避けるためにそんな風に進化したのか。 あとがきに、こんなことが書いてある。 生き物の持つ機能に対して存在理由を問うとき、「4つのなぜ」がある。例えば「赤信号で足を止めるのはなぜか」という問いに答えは4つあるのだ。「神経系からの命令を受けて足の筋肉が運動を止めるから」(至近要因)、「信号の赤い光線を視覚で認識するから」(発達要因)、「赤信号は停止の合図だとされているから」(系統進化要因)、「止まらなければ車に衝突されてしまうから」(究極要因)の4つである。前者の2点には、この本で取り上げられているイワサキセダカヘビについては、発達の過程で関わっている遺伝子が未知なので今のところ何も答えることができない。後者の2点には、セダカヘビは右巻きのカタツムリを効率よく食べるために非対称性を獲得したといえるのだ。 うーん、不思議なものだ。何らかの要因でそう進化したのか。それとも、具合のいい突然変異が生き残ったのか。いや、要因に合わせて突然変異が起こるのか。いろいろと考えてしまう。気持ちとしては、完全にすっきりしないが、学問とはこういうものなのだろう。
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8/13は左利きの日 人間と同じように、ヘビにも利き手があるのでは? 生き物の「右と左」に関する進化の物語。
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果たして左巻きのカタツムリが増えたのは、カタツムリを食べるヘビが右巻きのものを食べやすいように進化したからなのか。左右性に関する進化について記した文庫が出版されたとしたら、数ページだけさかれるような、限定的な研究内容。だがしかし、その確立のためには、ごく限られた地域に生息するイワ...
果たして左巻きのカタツムリが増えたのは、カタツムリを食べるヘビが右巻きのものを食べやすいように進化したからなのか。左右性に関する進化について記した文庫が出版されたとしたら、数ページだけさかれるような、限定的な研究内容。だがしかし、その確立のためには、ごく限られた地域に生息するイワサキセダカヘビを捕獲するために危険な石垣島の奥地を毎晩探索し、左巻きと右巻きが存在する貴重なオナジマイマイを手に入れ、飼育環境を整え、撮影方法を試行錯誤し、何日も待つ。それをまだ何の実績もない院生が成し遂げたというのだから、驚嘆の言葉しかない。多くの苦労と共に語られる研究過程に感じ入り、公聴会で評判になったときは嬉しくなり、論文投稿が何度もリジェクトされる姿には悔しくなる。そして読了後は自分の学生時代を思い出し、思わずため息をついてしまう。行動生態学の学生にかぎらず、研究室に配属される学生はすべからく読むべき一冊。
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若干、誤植が目立ちましたが、内容的には文句なしです。 学術書であるにもかかわらず、非常に読みやすい。 また、研究内容も、非常にわかりやすく、進化についての入門書としても最適。 さすがは細さん。 次の本も期待していますよ。
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読んでいて一行一行にこんなにもドキドキしたのは初めてである。 生物研究の世界から離れて数年。この本はフィールドワーク・研究の楽しさと辛さ、悦びを思い出させてくれた。会社では味わうことのできない自然の生物の話に胸のときめきを抑えられない。
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僕は左利きだ。 不便である。自動改札ではいつも左手から無理な姿勢でタッチする。片刃の包丁は左利き用がなかったり、あっても値段が高かったりする。これは正の頻度依存選択。多数派が有利ってこと。 野球では左利きの投手が重宝がられる。少ない左利きとはあたることが少ないので馴れない、だ...
僕は左利きだ。 不便である。自動改札ではいつも左手から無理な姿勢でタッチする。片刃の包丁は左利き用がなかったり、あっても値段が高かったりする。これは正の頻度依存選択。多数派が有利ってこと。 野球では左利きの投手が重宝がられる。少ない左利きとはあたることが少ないので馴れない、だから投手が有利。負の頻度依存選択…だけど俺野球しないから。 結局のところ、左利きがなんで存在し、かつ小数なのかはわからない、らしい。右利きが少数派にならないこともわかっていない。 さて自然に目を向けてみると、やはり右利き、左利きの生物がいる。魚の口の開き方が違うという、よく気づいたなそれ、というものが紹介される。だがそれは序章だ。 やっぱり、生き物本は一粒で二度おいしい。やはり本書の著者も偏執的である。カタツムリと、そしてヘビに。 カタツムリにも左利き、というか左巻きのやつがいる。 そして、カタツムリばかりを食べるヘビがいる。そのヘビはカタツムリを食べやすいように左右の歯の本数が違っている、ということに気づく。みんな気づいていなかったっぽい。なんかすごい! 実験のために標本や生きたヘビを捕えるためにもまた七転八倒である。 そしてヘビとカタツムリによる捕食実験。右巻きカタツムリは食べられ、左巻きカタツムリは生き残る。おお、やはり右利きヘビは、カタツムリを食べるために歯並びを悪くしたのだ。 と簡単に流してきたが、偏執的な研究と、論文がリジェクトされながらもチャレンジを繰り返し、やがてつかむ栄光。と、まあ素晴らしいサクセスストーリーでもある。 ところで僕はなぜ左利きなのだろうか。右利きの人間を食う巨人とかがどこかにいるとか、左側の人からスリや痴漢をするためでもあるまい。 このわかっていないことを解き明かす楽しみも、誰かがいずれ記すのだろうか。 かくも研究は面白い。
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若手研究者本。若さゆえの行動力で突進する、世界の誰も知らない新発見をしたワクワク、フィールドワークの実際など、が生き生きと書かれている。研究者本なので、若干の専門知識を必要とするが、生物系の研究者を目指そうとしている若者(誰だ?)は必読。
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分裂して増えるゾウリムシって寿命があるんだろうか? もしかしたらゾウリムシは不老不死なんじゃないだろうか? という疑問をずっと持っていて、同僚に力説したら、そうかもしれないけれど世の中にはもっと大切なものがたくさんある、と諭されたことがある。全く至極ごもっとも。同じようにヘビが右...
分裂して増えるゾウリムシって寿命があるんだろうか? もしかしたらゾウリムシは不老不死なんじゃないだろうか? という疑問をずっと持っていて、同僚に力説したら、そうかもしれないけれど世の中にはもっと大切なものがたくさんある、と諭されたことがある。全く至極ごもっとも。同じようにヘビが右利きでも左利きでもどうでもよい。だいたいイワサキセダカヘビなんて見たことも聞いたこともない。 この著者ならぼくの話を聞いてくれるかもしれないな、と思った。
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以前「なまけっと」で講演を拝聴して大変面白かったのだが、本も劣らず面白かったです。 地道な研究過程は勿論、右利き左利きなどのコラムも、刺激的でした。
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「フィールドの生物学」シリーズの1冊。研究するとはどういうことなのか、研究者の生活の様子を含めて知ることができます。
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