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バイオパンク の商品レビュー

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23件のお客様レビュー

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2012/05/03

<キッチンからバイオを! 「日曜大工」研究の裾野を広げよう!> タイトルも副題も余り親切ではないと思うのだが、つまりは、公的機関や企業などの大きな組織に属さないアウトサイダー科学者としてバイオ研究を実践している人々についてのレポートである。自由な発想で新しいバイオ研究を行ってい...

<キッチンからバイオを! 「日曜大工」研究の裾野を広げよう!> タイトルも副題も余り親切ではないと思うのだが、つまりは、公的機関や企業などの大きな組織に属さないアウトサイダー科学者としてバイオ研究を実践している人々についてのレポートである。自由な発想で新しいバイオ研究を行っている多くの「DIY」研究者を追う、なかなかエキサイティングな1冊である。 どの分野でもおそらくそうなのだろうが、組織に属して研究を行うということは、時に、さまざまなしがらみを背負い、承認やら申請やら予算やらといった諸々のことに縛られる一面を持つ。 コンピュータ業界に関していえば、ジョブズは元々ハッカー集団の一員だった。リナックスはオープンソースで無料だ。ならばバイオもそれに倣おう!というわけである。そのためには、どこでも誰でもできるように、それこそ「趣味」としても楽しめるようにしようというのが、「バイオハッカー」の狙いである。 ここでハッカーと言っているのは、システムに不正に侵入したりといったネガティブな意味ではなく、知恵に頼って自力で創造的に問題を解決することを指す。そのためには、多くの人がツールを使用し、知識を得ることができるようにしよう、ということである。 プログラミングや数学と比べて、組織に属さないアウトサイダー・バイオが一般的でないのは、1つはコストの問題があるからだろう。ドライと違ってとにかくウェットはカネが掛かる。装置は自作すればかなり低価格で作れたとしても、酵素や試薬といった消耗品のコストをどう下げていくのかが重要だろう。本書の中には核酸増幅に必要な酵素を自分で抽出したというツワモノも出てきてすごいのだが、まぁそれにしても抽出にもカネが掛かるしね・・・。 あとは、「バイオ」というと、どうも「アヤしい」「アブない」と思われがちなこともあるのだろう。「生物兵器」とか、「バイオテロ」とかとすぐ連想されがちな。 しかし、DIYバイオはまだそこまではいたっておらず、テロを実践するのであれば、既知の天然毒物(炭疽やリシン等)を使うほうがよほど現実的なのだとか。 バイオについては、研究者と一般市民の間の意識の乖離が特に大きいような気は確かにする。 鳥インフルエンザの感染性に関わる突然変異の論文を雑誌に載せる載せないでモメていたが、ようやく掲載されたようだ。 悪用を心配するよりも、知識を共有して、後の研究に役立てた方がよいということだろう。 インサイダー・アウトサイダーに関わりなく、知識を囲い込むのではなく、オープンにして皆で議論しようという姿勢は大切なものなのだろう。 DIYバイオを実践するには、現実面で乗り越えなければならない問題が多々あると思うが、大切なのは、「気概」だ。 個々の人物がなぜそれほどDIYでバイオをやりたいのか、個人的にはいまひとつ納得しきれなかったのだが、裾野が広げること自体は、すばらしいことだと思う。 日経サイエンス6月号に掲載された本書に関する書評(渡辺正隆氏)がアツかった。 私はそこまでアツくなれなかったけれど、おもしろい見方をくれる1冊である。 *PCRを手軽に行えるようにして、感染症が蔓延している地域で即時診断できるようにしよう、という話が一番印象に残った。これはすごいと思う。 *タイトルは「バイオバンク」じゃなく、「パンク」です。もうここからしてすでに象徴的だが、重要な概念となる原語をそのままカタカナ用語にしているものが目立ち(私も今、つられて「キー・コンセプト」と書きそうになった(^^;))、取っつきにくい感を与えていると思う。パンクとかギークとかハックとか、確かに日本語にしにくい言葉だと思うが、何とかならなかったものなのか。 著者が(多分)ITベースの人で、コンピュータ業界ではよく使う言葉なのもあるのではないかと思うのだが。でもそれを日本語としてそのまま持ってくるのはどうなんだ・・・? *うげげ、長くなってしまった・・・。読んでくれた方、ありがとうございます&すみません・・・。

Posted byブクログ

2012/04/28

全体の率直な感想としては、こんなに進んでいるのか!と驚く場面よりもまだまだ入り口にうろうろしているだけなんだな…、と感じる場面の方が多かった。 また、バイオパンクの思想の根底にはソフトウェアの分野で起こったオープン、シェアと同じことが遺伝子でも可能である、という考えがあるという指...

全体の率直な感想としては、こんなに進んでいるのか!と驚く場面よりもまだまだ入り口にうろうろしているだけなんだな…、と感じる場面の方が多かった。 また、バイオパンクの思想の根底にはソフトウェアの分野で起こったオープン、シェアと同じことが遺伝子でも可能である、という考えがあるという指摘が(良い意味で)頭に引っかかった。興味をもったのは他の分野での考え方をそのまま適用できるのではないか、と考えるに至った思考の過程とそれが広く受け入れられた理由は何か。

Posted byブクログ

2012/04/22

本書は分子生物学、遺伝子工学の最前線に関する本である。 分子生物学というと、大学の研究機関、政府機関、大手製薬会社などのいわゆる産官学での研究が主流で、何重にもセキュリティがかかったラボの中でひっそりと実験が行われていると考えるが、本書の主役であるDIY科学者は例えば終えのガレ...

本書は分子生物学、遺伝子工学の最前線に関する本である。 分子生物学というと、大学の研究機関、政府機関、大手製薬会社などのいわゆる産官学での研究が主流で、何重にもセキュリティがかかったラボの中でひっそりと実験が行われていると考えるが、本書の主役であるDIY科学者は例えば終えのガレージから生物学にイノベーションを起こそうとしている。かつて2人のスティーブがIT業界に対してそうしたように。 例えば自分の唾液を送るとDNA配列をメールで返してくれるサービスや、DNAの合成に必要なタンパク質の合成を行うサービスなどが現在すでにある。Googleのファウンダーであるサーゲイ・ブリンの妻アン・ウォジツキの運営する23andMeという企業は999ドルで個人のゲノムの解析を行うサービスをスタートさせている。 ただ、こうした活動がすべての人に歓迎されているわけではなく、中には反対する人もいる。遺伝子の情報を書き換えたり、テロリストの手にDNA情報がわたって細菌兵器を開発されるが恐れがあるから遺伝子に関する情報はオープンにしないほうがいいと考える人達である。 実際のところはタンパク質を合成して未知の細菌兵器を作り出すことは、現在存在する最高の技術を持ってしても不可能だし、そもそもテロリストは炭疽菌などすでにある最近を培養するだけで細菌兵器は作成できるのでDNAの情報をオープンにするかしないかは現状あまり人々の危険に影響を与えないというのが実情らしい。 もっとも、分子生物学に疑問の声を投げかける人々はそういった論理的な説明では納得しない。最近は目に見えないし、自身の身の安全に直結するので、無条件に不安視してしまうのだ。この点は今の日本で言う放射能と構造が同じだと感じた。

Posted byブクログ