罪悪 の商品レビュー
昔々金策で困っていた時、目の前に停まったBMのダッシュボードに無造作に置かれた立派な財布に心動かされた。たとえ焼け石に水の金額でも無いよりはいい。人待ち顔で駅前の舗道に立っていた中年男はそんなことを考えていた。 何事も起こらず現在に至っているけれど、 汝の隣人の犯罪者は汝自身なの...
昔々金策で困っていた時、目の前に停まったBMのダッシュボードに無造作に置かれた立派な財布に心動かされた。たとえ焼け石に水の金額でも無いよりはいい。人待ち顔で駅前の舗道に立っていた中年男はそんなことを考えていた。 何事も起こらず現在に至っているけれど、 汝の隣人の犯罪者は汝自身なのだ。
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ドイツの作家、シーラッハが、描いた何とも辛いお話ばかりの短編集。 人間が持つ弱さや、人間が持つ底深い不気味さが浮きたってくるようなお話ばかりでとても奇妙な読後感。 書かれている話が辛いのに、淡々とした文章が、無機質な簡潔さなのでなぜか読み終わりまで一気だった。 ドイツの話と...
ドイツの作家、シーラッハが、描いた何とも辛いお話ばかりの短編集。 人間が持つ弱さや、人間が持つ底深い不気味さが浮きたってくるようなお話ばかりでとても奇妙な読後感。 書かれている話が辛いのに、淡々とした文章が、無機質な簡潔さなのでなぜか読み終わりまで一気だった。 ドイツの話と言っても、日本でももしかしたらと思える話に思えてくる。 たぶん、国家や民族を超えての人間の本質的なところを、鋭い作家の目は逃さないのだろう。 なんといったらいいのだろう。 人に薦めたい本というのではないが、読んでみたい人がいてほしいと思える本
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好き嫌いで言えば「犯罪」の方が好み。ただ、こちらの方が本としての完成度が高い。所々に短い掌編をはさんで全体にリズムがあるし、最後にあっと思うひとひねりがあるし。しかし読後感が苦いものが多い…。「罪悪」とは、他者に指摘されるものではなく、自身で感じるもの。被害者だろうが、被疑者だろ...
好き嫌いで言えば「犯罪」の方が好み。ただ、こちらの方が本としての完成度が高い。所々に短い掌編をはさんで全体にリズムがあるし、最後にあっと思うひとひねりがあるし。しかし読後感が苦いものが多い…。「罪悪」とは、他者に指摘されるものではなく、自身で感じるもの。被害者だろうが、被疑者だろうが、第三者だろうが。それがヒトである証かもしれない。
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じつは「犯罪」は世間の評判ほどピンとこなかった。だから、それど期待していたわけではなかったが、この「罪悪」には何度も胸を衝かれた。作品そのものが進化したのか、たまたま相性がよかったのか、それとも読み手の自分の変化なのか……。 世間の評価はどうなんだろう。
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ごく普通の男たちの罪悪感もない犯罪「ふるさと祭り」、猟奇的な写真から様々想像させられる「アタッシュケース」、DV夫から妻を解放したのは?「清算」ほか。淡々と語られる、味わいの異なる犯罪にまつわる物語の数々。前作その名も「犯罪」よりざらざらと心に残った。
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たった212ページの本の中に 「ふるさと祭り」、「遺伝子」、「イルミナティ」、「子どもたち」、「解剖学」 「間男」、「アタッシュケース」、「欲求」、「雪」、「鍵」 「寂しさ」、「司法当局」、「清算」、「家族」、「秘密」 …の、15の短編が詰まっていて、 「超短編」、 …でも、...
たった212ページの本の中に 「ふるさと祭り」、「遺伝子」、「イルミナティ」、「子どもたち」、「解剖学」 「間男」、「アタッシュケース」、「欲求」、「雪」、「鍵」 「寂しさ」、「司法当局」、「清算」、「家族」、「秘密」 …の、15の短編が詰まっていて、 「超短編」、 …でも、それぞれに凝縮された お話が。 読んだ後、 冷たく、澄みきった(…でも、『透明感』とは違うような) 「キ~ン」と云うような、真冬の空気 …を感じるような・・・ 言葉の全く通じない未知の国、 善悪の価値観が、全然異なる土地、 そんな所に、独り置き去りにされたような 不安定な気持ちにさせられる・・・ 詳細は、⇒ http://tschuss12.jugem.jp/?eid=385
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弁護士の『私』が語る、15の罪についての短編集。 ふるさと祭り 遺伝子 イルミナティ 子どもたち 解剖学 間男 アタッシュケース 欲求 雪 鍵 寂しさ 司法当局 清算 家族 秘密 不思議なのは、罪名だけをあげればざわりと心が荒れるようなものが多いのに、登場人物の苛立ちや怒りが...
弁護士の『私』が語る、15の罪についての短編集。 ふるさと祭り 遺伝子 イルミナティ 子どもたち 解剖学 間男 アタッシュケース 欲求 雪 鍵 寂しさ 司法当局 清算 家族 秘密 不思議なのは、罪名だけをあげればざわりと心が荒れるようなものが多いのに、登場人物の苛立ちや怒りがほとんど排されていて、物事がすべて淡々として見えること。 被害の描写、犯行の描写はあくまで『私』が伝え聞いた風に俯瞰で語られ、残虐さはさらりと片付けられている。あまりにふつうの人々が、あるかないかのきっかけで罪に触れ、裁量されている。 おもしろい、と言っていいのか、という内容だが、『解剖学』が面白かった。実際起こった時…結果的に凶悪犯罪を食い止めた過失致死罪の一般人は、どういう立ち位置になるのだろう。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
図書館で表紙借りした本。 読む人によっては気分が悪くなるようなエゴで起こる犯罪は人間らしくどこか不気味だった。 淡々とした口調も不気味さを増長させている。 しかし読み進める手が止まることはなく一気に読むことができた。 ふるさと祭りは一番最初の話だがかなりインパクトのある内容だった。地域の犯罪と言う感じの内容は後味が悪く被害者の父の悲壮感がじっとりと染み付く。もしこの内容が気に入らず閉じることができるのならそっと閉じることをすすめる。 後の内容で心が晴れることはない。 解剖学はまた少し違った味で女に袖にされた男がその女を殺すために解剖用具などを沢山用意し、ついに殺そうとしたとき車にハネられて死ぬという短いながらも印象的な話になっていた。 前作の「犯罪」は読んだことがないがいつか読んでみたい。
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前作の続編。 最初のエピソードに一番ゾッとした。 フツーの人々の中に潜む異常性というか群集心理というか…。 法で裁ききれない/裁けない「罪悪」の存在が浮き彫りにされていて、人間ってオソロシイ生き物だなーと改めて憂鬱な気分になる。 「ナチの将校シーラッハの孫」という著者の肩書も、ま...
前作の続編。 最初のエピソードに一番ゾッとした。 フツーの人々の中に潜む異常性というか群集心理というか…。 法で裁ききれない/裁けない「罪悪」の存在が浮き彫りにされていて、人間ってオソロシイ生き物だなーと改めて憂鬱な気分になる。 「ナチの将校シーラッハの孫」という著者の肩書も、また本国ではセンセーショナルなんだろーなーと。 犯罪の質の猟奇性なども含めて、ヨーロッパ的だと思った。人間ってオソロシイ生き物です・・・。
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「犯罪」でいくつかの賞を受賞した、弁護士を営む著者の第二作目。15の短編が修められており、体裁は前作と同様で、淡々と語られる犯罪の顛末に終始する。前回より若干、ドラマティックな印象があるのは、司法の制度に関連する事柄が登場するからだろうか。制度は使いようで、被疑者に有利にも不利に...
「犯罪」でいくつかの賞を受賞した、弁護士を営む著者の第二作目。15の短編が修められており、体裁は前作と同様で、淡々と語られる犯罪の顛末に終始する。前回より若干、ドラマティックな印象があるのは、司法の制度に関連する事柄が登場するからだろうか。制度は使いようで、被疑者に有利にも不利にも働く。裁判官との駆け引きや、弁護士ならではの法の操り方というのがもちろんあり、それは国によっても違いがある。前作に比べれば少し、救われる結末になる編が多い。 最終編の最後の最後で、小さなどんでん返しがあり、思わず笑ってしまった。
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