資本主義が嫌いな人のための経済学 の商品レビュー
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どこかの紹介で頭の片隅にあったので、紀伊国屋で立ち読みしてみたが、再読には値しない本であった。著者は最初の章で合成の誤謬を例にとって市場の不完全性を説明していたが、このロジックは経済学をきちんと学ばない人によくある間違いのひとつである。経済学者もそのような合成の誤謬から生じる市場の失敗の存在を謙虚に認めるし、その上で市場の失敗の是正策を講じる。他にも経済学が想定する人はインセンティブをもって行動するという前提や情報の非対称性から生じるモラルハザードについても同様な反論が考えられる。 最も目を引いた箇所としては「次善」についてである。価格規制によって一つでも不完全競争があるのであるならば、さらなる規制を増やしてもっと不完全競争を増やした方がよいと述べている。その例として、自由貿易の世界のいて一つの商品の価格が2倍に吊り上げられていたら、ほかのすべての商品も2倍に吊り上げるべきといったたぐいのことが書かれていた。これについては、物価の捉え方の問題であり、本質的な批判にはなっていなかった。また同様に他の規制による政府の失敗の可能性を指摘しなければ健全な比較は行えないであろう。 それでもなおすべてを読み流したのには理由がある。それは経済学に対する批判に対しても批判を加えたからである。内容についてはやや抽象的だったので述べないが、これについては共感を覚えた。 最後の末部分で、「現実は複雑で、経済学はそれを解きほぐす論理のひとつを提供してくれる」というような記述があったが、間違った前提からみちびかれたことには奇妙な感を覚えつつも、当たり前だが本質的なことを指摘してくれたことに安堵するという何だか複雑な読後感であった。
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現在、途中まで読んだところだけど、オーソドックスな経済学入門という気がして積ん読中。 著者は経済学の専門家ではない。 タイトルから、そんな著者が独自の視点で経済学を説明する本だと思って購入したが、専門家である経済学者の理論を整理しているだけでちょっと方向性が違った。 具体的には 1章 資本主義は自然 →何でも市場=自然に任せれば良いわけではない。市場を有効に機能させるための制度を政府が設計する必要がある。 2章 インセンティブは重要だ →インセンティブはモデル化できるほど単純ではない。 (行動経済学が引き合いに) 3章 摩擦のない平面の誤謬 →モデルは常に正しい訳ではなく、市場均衡が常に最も良い状態とは限らない。(負の外部性) 4章 税は高すぎる →政府の機能は所得の再分配である 相当雑だがまとめるとこんな感じだと思う。 上記の内容が日常生活の例を交えて説明されていて、とてもわかりやすい。ただあくまで経済学食わず嫌いの人に向けた経済学書である。 入門書としては面白く、読みやすいが経済学をかじったことがある人には議論の再整理くらいの位置づけだと思う。 学部入門のマンキュー経済学を読んだときと感覚が似ている。 マンキュー経済学の方が初学者を意識してるけど。 タイトルで内容を勝手に勘違いして買ってはいけないことを再認識した。
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ひと通り読んでみて、経済学の方が道徳的な考え方してるんじゃないかと思い始めた。新しく生まれる経済的価値や経済的効率性を重視することで、最適な配分を考える、結果経済学的には一番満足できる方向に進んでいくのであるが、その際の「全体最適を考える」という視座の持ち方が道徳的なのではないか...
ひと通り読んでみて、経済学の方が道徳的な考え方してるんじゃないかと思い始めた。新しく生まれる経済的価値や経済的効率性を重視することで、最適な配分を考える、結果経済学的には一番満足できる方向に進んでいくのであるが、その際の「全体最適を考える」という視座の持ち方が道徳的なのではないかということ。モラルハザードなどまでも含めて議論できるのが経済的なのかなとか。 経済学をもう少し学んで見ようと思う。
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経済学を哲学者が一刀両断する本。右派には右派の左派には左派の考え方がある。しかしどちらも本質をついているといは言い難いという感じの内容でよろしいか? 経済を簡単にかたづけようとしたところで必ず行き詰まりを見ることだろう。結局そこにはいろいろな人間の行動パターンが埋め込まれる...
経済学を哲学者が一刀両断する本。右派には右派の左派には左派の考え方がある。しかしどちらも本質をついているといは言い難いという感じの内容でよろしいか? 経済を簡単にかたづけようとしたところで必ず行き詰まりを見ることだろう。結局そこにはいろいろな人間の行動パターンが埋め込まれるわけであり、それらすべてに都合の良い行為を与えることなどできないのだから。そこで人はどう対応するかそれにより経済の崩壊度が決まってくるのだろう。 作者が外国人ということもあり中に出てくる事例は外国のものばかりであるので少しわかりにくい。日本の事例で書かれたこのような本はないものだろうか?。
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カナダの哲学者が、経済的右派(リバタリアン)と左派(リベラル)の両方の陥りがちな間違いに対して言及し、右派は人の不勉強に漬け込むな、左派はもっと勉強しろ、と説得している(気がする)本。 経済学に興味がある人ならおそらくとても面白いので必読。 興味が無い人でも得るものは多いはず。...
カナダの哲学者が、経済的右派(リバタリアン)と左派(リベラル)の両方の陥りがちな間違いに対して言及し、右派は人の不勉強に漬け込むな、左派はもっと勉強しろ、と説得している(気がする)本。 経済学に興味がある人ならおそらくとても面白いので必読。 興味が無い人でも得るものは多いはず。 プロローグとエピローグをさらっとでも見て、興味が沸いたなら読んでもらいたい。 特にプロローグは、 ・「ブレードランナーが衝撃的だったのは、近未来に広告が大量にある背景を描写する事で、もしかしたら資本主義は無くなったりせずずっと残ってるんじゃないのか?」という示唆をした事 ・当時のSF作家が揃いも揃って予測し損ねたのは「情報技術の主役はロボットではなくITであった事と、市場が消滅せずに残っていたこと」 なんて話で始まっていて、とっつきやすい。 エッセンスとして、ここだけでも読む価値アリ。
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・生産性上昇の計算法は、経済成長率から明らかに説明できることを除外していくというもの。成長がいくらかでも労働者の増員や労働時間の増加によるなら、新しい設備や機械などの資本支出によるなら、それらを除外する。生産性はちょっとロールシャッハテストに似ている。ある人にとって、生産性の向上には教育と「技術革新」への莫大な政府支出が求められる。別の人にとって、産業の果敢な規制緩和とともに大幅減税が必要になる。 ・アメリカで自動車を生産するには二つの方法がある。一つはデトロイトで生産する方法、もう一つはアイオワで栽培する方法だ。アイオワで自動車を栽培するには、小麦をトヨタ車に変える特殊技術を活用する。小麦を船に乗せて、太平洋に送り出すのだ。しばらくすると船はトヨタ車を積んで戻ってくる。小麦を太平洋沖で自動車に変えるこの技術は「日本」と呼ばれているが、それはハワイの沖合に浮かぶ先進的なバイオ工場だといってもいいだろう。いずれにせよ、デトロイトの自動車メーカーの労働者が直接競争しているのはアイオワの農民なのである。 ・「フェアトレード運動が明らかに示したのは、良質の品を買いたいと言う消費者の意欲を損なわないで、生産者は今日の破壊的な安値の倍の報酬を得られるという事だ」。これはこれで結構なことだが、まったく的外れである。問題は、生産者がその産品の市場価格の二倍報酬を得られて、なおかつ生産を減らすことを納得させられるかどうかなのだ。2001年の全世界のコーヒー供給量1億1500万袋に対し、全需要量は1億500万袋前後だった。
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経済学と資本主義というものが同一視されることに対してきちんと説明をしている本。書いたのは政治哲学者で、資本主義に対して疑問を持っている人物であるところがポイント。元の立ち位置がネガティブだからこその丁寧な説明がそこにはある。 ただ、資本主義が嫌いな人がこれを読んだら「ミイラ取り...
経済学と資本主義というものが同一視されることに対してきちんと説明をしている本。書いたのは政治哲学者で、資本主義に対して疑問を持っている人物であるところがポイント。元の立ち位置がネガティブだからこその丁寧な説明がそこにはある。 ただ、資本主義が嫌いな人がこれを読んだら「ミイラ取りがミイラになった」と思うかもしれない。それは間違いで、感情を排した結果だということをわかってもらいたいし、仕組み上はそうだけれども現実は異なるということもわかってもらいたいと思う次第。
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著者はカナダの哲学者。「世界に不正や苦難があるのは、利己的なやつが自分の利害にかなうよう仕組んだせいなのだ(P346)」と若かりし頃は思っていた人物。 経済学の正式な教育も受けてないが、本を読んで得た知見をカナダの身近な例(住宅政策やガス料金、保険と年金、先住民地区のことなど)...
著者はカナダの哲学者。「世界に不正や苦難があるのは、利己的なやつが自分の利害にかなうよう仕組んだせいなのだ(P346)」と若かりし頃は思っていた人物。 経済学の正式な教育も受けてないが、本を読んで得た知見をカナダの身近な例(住宅政策やガス料金、保険と年金、先住民地区のことなど)とともに共有してくれる。 「右派(保守、リバタリアン)の謬見」をまとめた前半第1~6章と「左派(革新、リベラル)の誤信」の後半第7~12章。 特に左派向けに書かれた部分は「資本主義」や「市場経済」や「営利企業」が嫌いな人(いわゆるマルクス経済しか認めない経済オンチ)は読んでおくべきと思う(私もそうだった)。 「貧乏人の経済学」とも通じる。 「私たちの問題はたいがい問題を直す意志に欠けることではなく、直す方法を知らないことである。(P347)」 <対右派> 第1章 資本主義は自然――なぜ市場は実際には政府に依存しているか 第2章 インセンティブは重要だ……そうでないとき以外は 第3章 摩擦のない平面の誤謬――なぜ競争が激しいほどよいとは限らないのか? 第4章 税は高すぎる――消費者としての政府という神話 第5章 すべてにおいて競争力がない――なぜ国際競争力は重要ではないのか 第6章 自己責任――右派はどのようにモラルハザードを誤解しているか <対左派> 第7章 公正価格という誤謬――価格操作の誘惑と、なぜその誘惑に抗うべきか 第8章 「サイコパス的」利潤追求――なぜ金儲けはそう悪くないことなのか 第9章 資本主義は消えゆく運命――なぜ「体制」は崩壊しなさそうなのか(しそうに見えるのに) 第10章 同一賃金――なぜあらゆる面で残念な仕事がなくてはいけないのか 第11章 富の共有――なぜ資本主義はごく少数の資本家しか生みださないか 第12章 レベリング・ダウン――平等の誤った促進法
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マクロ的視点で見ると、 青信号が増えるということは、同時に赤信号が増えることでもある。 消費を減らすことは同時に収入を減らすことでもある。 一生の内に稼いだ金は、ほとんど全てを使いきる。つまりどんなに節税に苦心しても一生の内に払う消費税額は同じで、高い買い物を避けても、それは消費...
マクロ的視点で見ると、 青信号が増えるということは、同時に赤信号が増えることでもある。 消費を減らすことは同時に収入を減らすことでもある。 一生の内に稼いだ金は、ほとんど全てを使いきる。つまりどんなに節税に苦心しても一生の内に払う消費税額は同じで、高い買い物を避けても、それは消費税支払いの猶予でしかない。 人はインセンティブに反応する。 アザラシは魚に対する食欲があるから訓練しやすい。
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正直、入門書ではないけど、読み応えあり。因みに筆者のジョゼフ・ヒースさんはトロント大学の哲学の教員。 http://www.nttpub.co.jp/search/books/detail/100002183 資本主義が嫌いな人こそ経済学を学ぼう!というのが本書の主題。資本主義批判者は不勉強、その怠慢につけ込む保守派の議論をメッタ切り。情緒や義憤でも欺瞞でもない。資本主義をよりよいものに変えていくことが課題と示唆。
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