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「知」の欺瞞 の商品レビュー

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13件のお客様レビュー

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2024/05/19

私が『差異と反復』があまりにも読めない(これは哲学の前提知識がない、ポストモダンの文章に慣れていないなど多くの要因がある)ので、いっそもっとも批判的な立場にある書籍をよんでみたらなにかヒントがあるのではないかと思い、読んでみた。 本書では、ポストモダンと呼ばれるジャンルの作品に...

私が『差異と反復』があまりにも読めない(これは哲学の前提知識がない、ポストモダンの文章に慣れていないなど多くの要因がある)ので、いっそもっとも批判的な立場にある書籍をよんでみたらなにかヒントがあるのではないかと思い、読んでみた。 本書では、ポストモダンと呼ばれるジャンルの作品に(おそらく)メタファーとして用いられている数学的・物理的な単語が、メタファーとして成立するだけの最低限の理解を持って書かれているか文脈から推察する、といった試みがされる。 結論は誰もが想像するように、メタファーの体裁を保つだけの論理的な整合性はない。 本書は8人の哲学者に対して議論を展開していて、それぞれの考察に相当な分量の文章を割いている。(この詳しい解析は著者からすると真摯な態度を表しているのだろうが、各哲学者の愛読者にとっては果たして読む価値のあると感じるものなのだろうか。) これらの混乱に付随する実害として、政治的左翼の弱体化を挙げていて、おもしろい。 > 政治的左翼を自認するわれわれすべてに、ポストモダニズムは特定の負の帰結をもっている。... 知識人、特に左翼の知識人が、社会の発展のためにプラスになる貢献をしたければ、そのための最良の道は、世を風靡している考えを明瞭に分析し、支配的な言説から神秘的な匂いを取り払うことだ。自分で神秘を付け加えることではないのである。(なぜ問題なのか?) とはいえ、これもポストモダニズムへの根本的な反論にはならないような気がする。本書の活用方法として、本書で批判されている相対主義に陥らないように、両方の立場を考えて、自らの考え方の糧とするのがいいのだろうと思う。 冒頭付近では、哲学者が数学の教育を受けていないことによって批判をするのは間違いである、という問いかけに対して、われわれが気にしているのは資格ではなくて内容だけである、という主張がある。これの注釈としてチョムスキーの分野の違いによる文化の差についての逸話があり、象徴的な話だと感じた。 > 数理言語学の仕事をしましたが、数学の本職の資格があるわけじゃない。数学は完全に独学だし、それもちゃんとやったというほどでもありません。それでも、何度も大学の数理のセミナーやコロキウムに呼ばれて数理論理学について話してきました。だれも私がこのテーマについて話す資格があるかとか聞きませんでしたよ。数学者は気にもしてません。... あくまで話の内容が議論になるのであって、私がそれを議論する権利じゃない。 > ところが、社会問題や、米国の外交政策、たとえばヴェトナムや中東とかに関する議論になると、こういうことが相も変わらず問題にされるんです、それもかなりの毒を含んでですね。話す資格について何回も意義を唱えられ、こういったテーマについて話していいだけの特別な教育を受けたのかと訊かれたものです。(6 誰に批判する資格があるのか?)

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2023/05/01

めちゃくちゃ面白かった。 ただソーカルの告発だけでポストモダン思想家たちの主張を一方的に断罪することは避けたい。 ファッショナブルでナンセンスな言説がなぜ生まれ、大衆に広く流布したのか。 ラカンとその思想を学んだイリガライの章が特に激烈だった。 言葉を蔑ろにしないための戒めとし...

めちゃくちゃ面白かった。 ただソーカルの告発だけでポストモダン思想家たちの主張を一方的に断罪することは避けたい。 ファッショナブルでナンセンスな言説がなぜ生まれ、大衆に広く流布したのか。 ラカンとその思想を学んだイリガライの章が特に激烈だった。 言葉を蔑ろにしないための戒めとして、何度も再読したい本だと思います。 リベラル的思想を基盤に広く人気を得たはずのポストモダン思想家たちの主張や行動が、逆説的にリベラルの首を絞めていくという、後半のポリティカルな分析にはやられた。

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2022/09/10

第5章で取り上げられる「イリガライ」の章が特に傑作だと思いました。 なにしろイリガライの著作の引用文が群を抜いて意味不明で、この本のエッセンスが凝縮されていると思いました。 大学の文系講義で難解なテクスト分析をやらされた経験のある人ならば、特に愉快に読める本だと思います。

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2022/06/12

ポストモダンという人文系の学問領域における一部の思想家によって繰り返し行われていた、著作内での自然科学の概念や用語の濫用を痛烈に批判した本。背伸びして読んだ。ソーカル事件が布石になっている。批判されている思想家の著作の長い引用(の日本語訳)が多くあるが、よくこんな意味の通らない文...

ポストモダンという人文系の学問領域における一部の思想家によって繰り返し行われていた、著作内での自然科学の概念や用語の濫用を痛烈に批判した本。背伸びして読んだ。ソーカル事件が布石になっている。批判されている思想家の著作の長い引用(の日本語訳)が多くあるが、よくこんな意味の通らない文を書けるなと思った。その思想家たちが何を思いながら論説を展開していたのか想像すると、映画パプリカの博士発狂シーンを思い出してしまい怖かった。逆にちゃんとした哲学や思想史もいつか学びたい。

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2018/10/23

ポモは、それが学問として妥当であるかどうかについて専門家の間でも意見が別れるんで、凡人は深入りしちゃいけないしできない、才能のある人向けのものだと思っている。ソーカルの議論は興味深いのだが、引用されているところは読んでもわけがわからないので結局読み飛ばしてしまう。また、ソーカル自...

ポモは、それが学問として妥当であるかどうかについて専門家の間でも意見が別れるんで、凡人は深入りしちゃいけないしできない、才能のある人向けのものだと思っている。ソーカルの議論は興味深いのだが、引用されているところは読んでもわけがわからないので結局読み飛ばしてしまう。また、ソーカル自身もこの本は包括的ではないと言っているのだが、科学用語の濫用以外の観点から書かれたものもほしいと思う。関心があるのはむしろ人文学の科学性なのだが、ポパーとかみたいな科学哲学は、基本的に自然科学の話しかしていないのだし。

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2014/11/21
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

[ 内容 ] 科学をめぐるポストモダンの「言説」の一部が「当世流行馬鹿噺」に過ぎないことを示し、欧米で激論をよんだ告発の書。 名立たる知識人の著述に見られる科学用語の明白な濫用の数々。 人文系と社会科学にとって本当の敵は誰なのか? 著者らが目指すのは“サイエンス・ウォーズ”ではなく、科学と人文の間の真の対話である。 [ 目次 ] 1 はじめに 2 ラカン 3 クリステヴァ 4 第一の間奏―科学哲学における認識的相対主義 5 イリガライ 6 ラトゥール 7 第二の間奏―カオスと「ポストモダン科学」 8 ボードリヤール 9 ドゥルーズとガタリ 10 ヴィリリオ 11 ゲーデルの定理と集合論―濫用のいくつかの例 12 エピローグ [ 問題提起 ] [ 結論 ] [ コメント ] [ 読了した日 ]

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2013/11/23

デタラメなパロディ論文がカルスタ雑誌に採用された事で、ポストモダン哲学に対する痛烈な批判となったソーカル事件。その反響を受け、現代思想の哲学者たちが科学用語をいかに誤用しているかを明らかにしたのが本作。間奏の認識論的相対主義に対する批判も含め、一貫しているのは知に対する誠実さなん...

デタラメなパロディ論文がカルスタ雑誌に採用された事で、ポストモダン哲学に対する痛烈な批判となったソーカル事件。その反響を受け、現代思想の哲学者たちが科学用語をいかに誤用しているかを明らかにしたのが本作。間奏の認識論的相対主義に対する批判も含め、一貫しているのは知に対する誠実さなんだと思う。インパクトの強さもあり同書は読まれる事無く語られる事も多いのだが、やはりそれはソーカルの趣旨に反する行為なのだろう。しかし60年代フランスって何であんなに小難しいんだろうね。後半ソーカルさんも投げやり気味なのが笑える。

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2013/05/30

線形とか虚数とかカオスとか連続性とか、ポストモダンの人たち数学とか量子力学とかわかってねーの、だっせー。 とかいうのがこの本の主旨ではなくて。 ・自分でもよくわかってないような言葉や概念を使って、より難しくして説明したいことって何?何の中身もない、スカスカの当たり前なことしか...

線形とか虚数とかカオスとか連続性とか、ポストモダンの人たち数学とか量子力学とかわかってねーの、だっせー。 とかいうのがこの本の主旨ではなくて。 ・自分でもよくわかってないような言葉や概念を使って、より難しくして説明したいことって何?何の中身もない、スカスカの当たり前なことしか言ってないじゃないか。専門用語と日常の用法で混乱してるだけでしょ。難しくて曖昧にすればかっこいいとかやめなよ。 ・科学は批評対象のテクストじゃないよ。科学の理論は世界を解き明かすけど、それが世界を作り上げたわけじゃないし(理論ができる前から世界はあるんだし)、経験を積み上げて生き残ったり修正したりして「正しい」としてきたものなんだよ。何かを客観的に「正しい」としてるからって攻撃するなよ。そういうテクストとしての批評では科学の理論が変わることはないんだから意味ないよ。 ・自然科学の理論や方法論の現実的、経験的な部分を無視して、枠組みだけ持ってきて社会科学を当てはめて客観的にしようとしても科学的とは言えないよ。それでうまくいかなかったからって自然科学を叩くのやめなよ。 ・科学に軍事主義とか性差別主義とかあるにしても、科学そのものを批判することはないよ。 ・「真実」と違うことを信じている人がいるからといって、なんでもかんでも正しいことにしてたら、性差別も人種差別も極端な民族主義や経済学の流派も「正しい」ことになるよ。左派の知識人なら支配的な言説から神秘を剥ぎ取れよ。自分で神秘を付け加えるなよ。 5点目はまさに、先日の橋下さんの慰安婦発言と東さんの反応のことだと思うし、在特会が言う在日特権の偏見やアフリカの女性器切除への貞操の幻想に対抗するのも、歴史と国際関係や宗教と医学への合理的で科学的なやり方だと思う。

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2013/01/02

本書で展開される批判に同意するとともに、そうした自身の感想というものの幾分かは、やはり哲学や社会科学の門外から、必要十分な訓練を経ない状態/良くも悪くもコオプタシオンを経ない状態で安易に足をつっこんで、その界に固有の歴史が成したところの概念の使用に(至当にも)困惑させられ挫折させ...

本書で展開される批判に同意するとともに、そうした自身の感想というものの幾分かは、やはり哲学や社会科学の門外から、必要十分な訓練を経ない状態/良くも悪くもコオプタシオンを経ない状態で安易に足をつっこんで、その界に固有の歴史が成したところの概念の使用に(至当にも)困惑させられ挫折させられた、そういう経験から出ているのではないか、とも感じる。 またP.ブルデューやJ.ブーヴレスが彼らの著作のなかで「ソーカル事件」について触れているものを読むと、この「事件」の社会科学界での意義についてより多くを知りたいと感じる。

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2012/08/22

古典的名著。難解窮まる衒学的な文章が実際に意味不明でした!と解き明かしていくのいかにも小気味が良い。  ただ攻撃する著者をあれこれ変えてはいるが、基本的にやっていることは同じなので次第に飽きる。あとはポストモダニズムや真理相対主義の最悪の一面をことさらにあげつらっているのではない...

古典的名著。難解窮まる衒学的な文章が実際に意味不明でした!と解き明かしていくのいかにも小気味が良い。  ただ攻撃する著者をあれこれ変えてはいるが、基本的にやっていることは同じなので次第に飽きる。あとはポストモダニズムや真理相対主義の最悪の一面をことさらにあげつらっているのではないか、という疑念が。

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