グローバル時代のアジア地域統合 の商品レビュー
ブックレット(パンフレット)形式の小著ながら、主に政治経済面から表題の課題を整理した良書。 欧州(EU)統合の研究成果をベースにしつつ、アジアでの地域統合を分析、そしてわが国の対応について展望を示している。本書で使われている図表には古いものもあって、現状については出典を確認して最...
ブックレット(パンフレット)形式の小著ながら、主に政治経済面から表題の課題を整理した良書。 欧州(EU)統合の研究成果をベースにしつつ、アジアでの地域統合を分析、そしてわが国の対応について展望を示している。本書で使われている図表には古いものもあって、現状については出典を確認して最新資料で検証する必要もあろうが、「おわりに」もあるようにわが国はアジアの統合に対して、「EUに例えれば、スイスになるのではなく、せめてイギリスに、中に入った上で、少し客観的に地域統合に関与する国になればよい。」という意識をもって、10年から20年かけて関係深化を図っていく必要がある、という著者の主張には共感。
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羽場久美子著「グローバル時代のアジア地域統合」岩波ブックレット(2011) *地域統合の進展には、大きく分けて4つの要因があります。(1)グローバリゼーションによる国境を超えた人、モノ、サービス、情報の移動。(2)その結果国家単位を超える経済領域が形成され多国籍企業の進展に伴って...
羽場久美子著「グローバル時代のアジア地域統合」岩波ブックレット(2011) *地域統合の進展には、大きく分けて4つの要因があります。(1)グローバリゼーションによる国境を超えた人、モノ、サービス、情報の移動。(2)その結果国家単位を超える経済領域が形成され多国籍企業の進展に伴って、世界的な競争が始まる。(3)その競争に勝てないと考えたヨーロッパが統合の深化と拡大によって国家規模を超えた経済領域を形成し、その競争力確保を狙い大きな成功と成果をおさめたこと。(4)これらすべての背景にアジアの経済力の成長とそれへの対応があること。 *日本上場企業(890社)の営業利益を地域別に比較してみると、欧州、アメリカからの利益が縮小し、アジアからの利益が39.4%、ほぼ4割をアジアが占めている。アジアとともに成長することがいかに日本の企業戦略にとって重要かということがこのデータに示されている。 *筆者は地域統合を是とする立場から、広域地域経済圏には原則賛成である。その意味ではTPPも行うべきと考えている。しかしその際の原則は、(1)地域にとってもまた参加国にとってもウィンウィンの関係であること。(2)一国がヘゲモニーを取るのではなく、参加国の関係が対等であること。(3)例外なき関税撤廃と一挙の市場開放するのではなく、その国の国益や社会構造にかかわる問題については、例外品目を設定し、交渉だけでなく制度や法をもうけてそれを守り保証することの3点が保証されていなければならない。 *アメリアとの貿易が15%を減少し、中国とが20%、アジア全体の貿易が60%と圧倒的にアジアとの自由貿易のメリットが大きい。アメリカ以外にもアジアにも広げなければならない。 *TPPが是か非かではなく、世界をみるべきである。米/欧/アジアの三極構造の中で、現実に最も経済的に依存しているアジアの地域強力関係を軸として強化しつつ、アメリカとの協同、さらに欧州との協同を行う事が現実的である。
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